日本や中国に勝っても「韓国代表を応援しない!!」との声も。韓国野球は支持を取り戻せるか
アジア大会の野球スーパーラウンドで日本に5-1、中国に10-1の勝利を飾って決勝に進出した韓国野球。3大会連続5回目の金メダルに王手をかけた状態で盛り上がってもおかしくはないはずだが、どうやら今回は勝手が異なる。
それは試合結果を伝える各メディアの報道からも見て取れる。
例えば、5-1で勝利した日本戦直後の報道だ。「野球韓日戦、勝って当然の試合を勝つ…喜ぶべきか」(『MKスポーツ』)、「韓日戦に勝利した韓国、13残塁は玉にきず」(『News1』)といった具合で、どこか冷ややかな空気が漂っていた。
10-1の大勝を飾った昨日の中国戦もしかり。「1回に前進守備? 恐れる中国に苦戦したソン・ドンヨル号」(『SPOTV NEWS』)、「今回も9回まで…中国相手にコールドゲームを期待するのは贅沢だったのか」(『マイデイリー』)など、大勝を飾っても手放しで評価されることはなかった。
今回、韓国は登録メンバー全員がプロ選手というチーム構成でアジア大会に臨んでいる。それどころかパク・キリャン、アン・ジヒョンなど、各球団の人気チアドルたちもジャカルタに派遣。過去に4回も優勝に輝いている韓国だけに、自然と優勝への期待が高まり、盛り上がることを見越してのことだったのだろうが、それさえも今は「度が過ぎた」と一部ファンから指摘されているほどだ。
(参考記事:【写真11枚】激かわ「キス顔」も!! アジア大会の“韓国代表チアリーダー”が美女すぎる!!)
もっとも、今回のチームは先日も紹介した通り、一部の選手がアジア大会優勝による「兵役免除」の恩恵を明らかに狙った行動で物議を醸すなど、大会前から何かと波紋を呼んでいた。
「アジア大会が兵役免除の手段として悪用されている」と憤慨した一部の野球ファンたちは「韓国代表を応援しない」と宣言。ネット上には「優勝はいらない。ぜひ“銀メダル”にとどまってくれ」という皮肉めいたコメントも噴出するなど、大会前からどこか白けた空気が漂っていた。
そんな中で迎えた初戦の台湾戦で、韓国はまさかの敗北。選手のほとんどが社会人野球チームに所属する台湾に、プロ選手たちが苦戦したという事実にショックを隠せず、メディアも「ジャカルタ惨事」と命名したほどだった。
それゆえに失った信頼も大きく、続くインドネシア、香港戦で勝利を収めても、「コールド勝ち失敗… 韓国、香港に恥ずかしい勝利」(『OSEN』)と、メディアの論調は厳しかった。
アジア大会で解説者デビューしたイ・スンヨプも「これ以上失うものはない。死に物狂いで戦うべきだ」と語るほど。イ・スンヨプと言えば、現役時代から堅実な言動で有名だが、そのイ・スンヨプが公の場で後輩たちに発破をかけるほどなのだから、韓国野球代表に向けられる苛立ちがどれほどのものかがわかるだろう。
(参考記事:「日本時代は最悪だった」イ・スンヨプは今、どこで何をしているのか【独占インタビュー】)
そして、そんな中で迎えた日韓戦でも勝利を収めたとはいえ、今大会に臨んでいる日本代表も台湾同様、社会人選手で構成されていたわけだから、手放しで喜べないのだろう。
普段なら日韓戦になると“日韓プロ野球年俸比較”や日本の主力選手たちの分析記事などが多くなるメディア報道も今回はほとんど見られない。前向きなものであっても、「ようやく動き出したソン・ドンヨル号… 怒ったファン心を取り戻せるか」(『Dailian』)といった具合なのだ。
それどころか「初心に帰って戦うべき」「優越感に浸っているとまた敗北の可能性が高い」と、念押しする記事やコラムが多く見受けられたし、一部の野球ファンたちが「勝っても嬉しくない試合だった」と冷め切った反応を寄せているほどなのだ。
かつて韓国プロ球界でも活躍した門倉健氏をインタビュー取材したとき、「韓国の人々は日本野球をリスペクトしている」として、日本に勝つことで喜びを爆発させる韓国の野球ファンたちの心理を説明してくれたが、アジア大会を戦う韓国野球代表は支持も信頼も失ってしまっている状態だ。
(参考記事:海峡を渡った長身右腕・門倉健が語る「韓国プロ野球の真実」その2)
その冷めた視線は「ソン・フンミンの兵役免除」がかかったサッカー決勝・日韓戦に向けられる熱さとは対照的でもある。このムードが続けば韓国プロ野球(KBO)の人気にも悪影響を与えそうだが、はたして。
韓国は本日、日本とふたたび対決する。金メダルはもちろん、失った支持を取り戻すためにも落とせない決勝戦となるに違いない。