太田雄貴が新しいアスリート支援「Sports3」設立!アスリート×サポーター×アーティスト共創時代へ
太田雄貴氏がweb3で切り拓いた新しいスポーツ応援の仕組みとは?
「オリンピックのメダリストでさえ、家族の援助や、寄付金に頼って活動を続けているケースがめずらしくない」
そんなスポーツ業界の抱える課題の解決に乗り出したのは、日本初のフェンシング銀メダリストとなった太田雄貴氏(37)。彼は今、アスリートや経営者としてだけではなく「スポーツ×Web3」の分野に新たな可能性を見い出し、新しい挑戦を始めている。
そのブロジェクトの名前は『Sports3』
太田氏が始動したこのプロジェクト、現役および第一線を離れたアスリートのサポート体制の構築と寄付に頼らないスポーツコミュニティの創造を目指し、持続可能なスポーツ業界を築くことを目的とした実験的なものである。
特徴の一つはアスリート、サポーター、アーティストに交流の場を提供し、その交流を「Sports3 Pass」という参加アスリートに限定的に配布しているNFTと、「Sports3 Collection」というアーティストがデザインを手掛けた誰でも入手可能なNFTによって繋ぐという点がある。これらのNFTを持つと、アスリートは自身の人脈やキャリアの可能性を広げる機会を得ることが可能となり、サポータはアスリートを応援する限定的な機会を得ることが可能になる。
さらに『Sports3』に参加しているアスリートが国際大会に出場し、国境や性別、世代を超えてコミュニティ全体が一喜一憂できる姿を目指したいと太田氏は語る。なぜ、Sports3を始めるに至ったのか。今後のビジョンは。スポーツ界でもビジネス界でも人気の高い太田氏、彼の描くスポーツとwebの未来を聞いた。
◯Sports3/メディアリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000085.000080650.html
*本記事では太田雄貴氏のマネジメント会社、株式会社ドリコム、各競技団体に大変お世話になりました。あらためて謝意を表したいです。また、太田氏の画像提供はTakanori Tsukiji様、竹見脩吾様です。なお、本記事ではアスリートの「引退」という表現を使わず、第一線を離れたなどとします。
Sports3で目指すのは「人生の応援団の環境づくり」
ーこの度、スポーツ業界をよりサスティナブルにする仕組みづくりを目的とした実験的プロジェクト『Sports3(スポーツスリー)』を始動された経緯について、教えてください。
太田 僕自身、2017年頃には周りが仮想通貨やクリプトを持っていたのを聞いて、Web3領域に大変興味を持ちました。ただ、まだブロックチェーンというテクノロジーの素晴らしさや発展性についてはよくわかっていなかったのです。
しかし、昨今web3領域のさらなる盛り上がりを受けて、僕もスポーツ×Web3の可能性を考えていて、NBAの運営するブロックチェーンゲーム「Top Shot」などに興味を持って調べていたのです。
そんな時です、ソーシャルゲームなどを扱うドリコムの代表である内藤さんと出会って、さきのNBA Top Shotの話で盛り上がったんですね。内藤さんには「日本では、NBA Top Shotのようなゲームは難しい」と話をしたところ、彼から「スポーツという共感性の高いものはNFTとの相性がいい」と、逆にヒントをもらったのです。
ー内藤さんとは株式会社ドリコムの創業者で代表取締役。ゲームやNFT開発などエンターテイメント業界で活躍されていて、この国のweb3推進者の一人です。
太田 NFTには売買ができるという特徴があります。例えばあるスポーツチームを応援するためのNFTを1万円で購入して、それを7000円で売ったとします。購入者にとっては3000円の差額が出てしまいますが、逆に言えば3000円で1万円分の応援ができるようになるわけです。
NBA Top Shotのような高額の取引は難しくても、数千円や数万円単位の金額であれば一般人から中小企業まで幅広い層の人々がスポーツの応援ができます。
金銭面だけでなく、アスリートのセカンドキャリアの問題や選手同士の繋がりの分断などの課題を解決でき、ファンはより応援しやすく、選手たちにとっては学びの場になる組織がつくれるのではないかと考えて、「Sports3」を考案したのです。
ー今回のプロジェクトは「アスリート」「サポーター」「アーティスト」という新しいコミュニティの形が注目されていますね。
太田 そうですね。アスリートだけでなく、NFTを作るアーティストも新規のファンを獲得できる場にしていきたいのです。
選手やサポーターも自分のNFTを書いてくれたアーティストのリアルな作品を買ってみたいと考えるきっかけにもなります。NFTを通じてだけでなく現実社会でも応援することが可能となるので、副次的な作用が起こりえるという点を考えてスタートしたプロジェクトと考えています。
NFTコミュニティでサスティナブルなアスリート支援を実現
ーコミュニティメンバー向けに発行される「Sports3 Pass NFT」「Sports3 Collection NFT」について、さらにくわしく教えてください。
太田 パス型のNFTに関しては、パス(チケット)をイメージしていただくとわかりやすいと思います。複数購入するものではなく1人1つ所有するというもので、持っていることで価値が上がったり、特典がもらえるなどのメリットがあるのです。デザインには「AST(アスト)くん」というキャラクターを採用しています。
最初のNFTは、今年3月頃にプロジェクトに参加してくれているアスリートにのみ配布をしました。選手の中でもNFTを受け取ったことのある人はまだまだ少ないと思うので、今後初めてNFTを購入されたり、コミュニティに入ったりする方にもなるべく取り扱いしやすいように工夫していきます。
また、Discord(ボイスチャットサービス。 音声/テキストの両方によるユーザー間のコミュニケーションが可能)で運営しているコミュニティはすでに600人(6月7日時点)を超えており、今後はそのコミュニティをさらに醸成していけるよう注力していく予定です。
ー今回のプロジェクトには、どんな想いが込められているのでしょうか?
太田 まず、プロジェクト自体でスポーツ選手の支援を行いたいという想いが強くあります。将来的には大きな金額ではなくとも奨学金のような形で選手支援や大会の協賛などが実現できればいいと考えています。
これまでも企業の方々がスポーツに対して、何かしらの支援をしたいと思ってくださっていたケースが多かったと思います。しかし、スポンサーといえば大企業に限られてしまっているのが現状です。世の中にある会社の99.7%が中小企業にもかかわらず、中小企業の方々がスポーツを応援したいと思っていても、今までは窓口がなかったのです。
例えばですが、NFTに1万5000円という価格が付いていたとしたら、一般の方や中小企業の方でも購入することができます。そのお金は運営資金となり、遠回りになるかもしれませんが選手への支援につながるんです。そんな今までにない支援の流れを皆さんと一緒につくっていきたい。
今後コレクション以外のIPに関しても、購入者に対してどんな面白いことが提供できるかについて現在検討中なんです。ユーティリティについてはアスリートとサポーターでアイディア出しを行いながら検討中であり継続的に詳細を詰めていく予定です。
太田雄貴の考える「スポーツ×web3」の可能性と未来
ースポーツ×Web3の可能性について、どうお考えですか?
太田 現在は自走できるトップアスリートと、アマチュア競技など自走が難しいアスリートの格差がかなりあるのが現状です。
例えば十種競技の元日本チャンピオンの武井壮さんは、第一線を退いた後も非常に活躍している。それは、彼が自分で考えたり動いたりするスキルがあったからこそ。それ自体は素晴らしいことですが、誰もが自分の競技で培った能力を他の場所で転用できたり、新しい仕事につくきっかけが得られるとは限りません。
そんななか、マイナー競技であっても10や20の競技が集まって横の繋がりを持ちながら戦えるようになること、これが「スポーツ×Web3」の可能性です。スポーツの可能性を広げる、これはWeb3やブロックチェーンを使ってできるようになるはずと考えています。
ーそのために、今回はNFTが使われるということですね。
太田 そうです。ただ、僕はスポーツとWeb3の関わりはもっとカジュアルになってほしいとも思ってます。
以前、浦和レッズの試合を見に行った時ですが、サポーターの方々の応援の熱量に感動したことがあります。話を聞いてみると、運営サイドが「こう応援してほしい」と指示しているわけではなく、サポーターが自発的にやっているのです。
その状況を見て、ファンが何かできる「余白」があるからこそ、自分たちなりの方法で応援して盛り上げることができるのだと強く感じました。今回のSports3において、NFTはいわば、その余白となる「動機づけ」なのです。NFTがあることをきっかけに、選手たちを本気で応援してくれるようなファンを創出すること、これこそが目指すべき状態です。
先輩アスリートに支えられてきた感謝を次世代へ繋ぐ
ーSports3の今後の展開はどのようになっていきますか。
太田 まず、これからやっていきたいことの1つに、あくまで実験的なプロジェクトなので観戦体験にニーズがあるのかどうかを検証することがあります。
個人的な意見ですが、スポーツ観戦の初心者にとって最初にぶつかる壁は、そもそもスタジアムなどの会場に行ったときに「どこに座ったらいいかわからない」「どう応援していいのかわからない」といったスポーツを楽しむ人にとっては当たり前になってしまっているような初歩的なことばかりなのです。
だからこそ観戦会場に僕たちが一緒に行って、最初からすべて説明してくれるような人がいたら、スポーツ観戦に気軽に訪れることができます。新しく触れるスポーツに興味を持つきっかけにもなります。実際にSports3アスリートの槍投げの北口選手の試合をサポーターとSports3に参加する他のアスリートと観戦をしました。NFTの保有とかは関係なく、まずはリアルイベントやろうというノリでやってみたものです。
2つ目にやりたいことは、企業さんとのコラボレーションです。スポーツはそれそのものがイメージがあるので、NFTで利益を出すだけではなく企業さんとコラボして、グッズ販売など可能性の幅を広げていきたいのです。そういった企業とのコラボによってコミュニティの連帯感を強めていけるのではないかと思います。。
ーすでに動いているプロジェクトもあるのでしょうか?
太田 体験という点でいえば、オフ会のようなイベントにアスリートが参加してくれる予定なのです。アスリートと直接会うことができる、そのためにコミュニティやイベントを楽しんでもらう。そういった取り組みを進めていきます。
オフラインのイベントは私たちが得意とする分野ですから、今までの知見を活かしていきたいところですね。コミュニティの数が増えることで、競技団体の視点から見ても「Sports3に依頼すれば集客してくれる」というポジションを確立できます。
コミュニティにスポーツ観戦に興味を持っている人々を包括的に巻き込むことができれば、例えばフェンシングなどの試合でも、コミュニティをきっかけに行きたいと思ってくれる人が増えるかもしれません。
そうやってファンや選手だけでなく、競技団体や大会運営者にとっても非常に重要で良い存在となりうると考えています。さらにグローバル展開を考えると、早期に多言語対応を行って、海外の選手たちも利用できるプラットフォームにしていきたいです。
ーすでに様々な構想が進んでいるのですね。
太田 はい。短いスパンから長いスパンまで様々な構想を持っていますが、まず短期的に達成したいのは2024年のパリオリンピックです。日本人が日本人以外の選手を応援するような機会をつくることを考えています。
日本人が日本人を応援することは愛国心の観点から見れば自然なことですが、ただ自国の選手を応援するだけでは競技のファンは定着しません。オリンピックの集客はうまくいっても、他の大会の集客がうまくいかないというケースは、競技にファンがついていないことが原因の一つだと考えられます。
だからこそ、まずは競技のファンになってもらうことで、競技自体の応援や選手の応援を国籍を超えてできるような状況を作っていきたいです。
例えば、そこでNFTを買ってもらえれば同じNFTホルダーという仲間意識も生まれるため、競技を応援するコミュニティも醸成されていきます。
ー最後にSports3へ新たに参加する方々に向けて、メッセージをお願いできますか。
太田 私自身も若い頃や現役の頃に経験豊富な先輩アスリートや先進的な人々から学ぶ機会があったら、どれだけ素晴らしいことだろうと思っていました。
幸運にも22歳の時にメダルを獲得、北島さんや野村さん、皆川さん、為末さん、井上康生さんなど本当に素晴らしい先輩方に囲まれて競技を超えたつながりを築くことができました。私が大きな道を誤ることもなく生きてこられたのは、周囲の方々に支えられてきたおかげなのです。
一方で、そのような出会いがなかった場合、元アスリートたちが本来得るべき収入や機会を失って、望ましくない生活環境に陥ってしまうケースも一定数存在しています。そこで私たちはスポーツを好きになった人々を社会的な意味で支えていく「Sports3」を実現していきたいのです。
もし今回の私たちの取り組みがスポーツの分野で成功すれば、この手法を他の業界にも応用することが可能です。だからこそ、まずは私たちが結果を出せる可能性が最も高いスポーツの領域でこのアイデアを具現化していきたいと思っています。
女子野球選手・ベースボール5の選手である六角彩子。Sports3で実現したい「アスリートの一番の幸せ」
ー続いて、このSports3の取り組みをさらに深堀りしていくため、実際に展開している二人のアスリート、六角彩子さんと渡辺啓太さんにインタビューします。まず、女子野球やベースボール5選手で大活躍されている六角彩子さんの登場です。最初に野球を始められたきっかけを教えてください。
六角 兄が野球をやっていて、9歳の頃に私自身も野球をやり始めたことがきっかけなんです。小学校から中学校までは野球部で男子のなかで1人だけ女子という形でプレーしていました。
その後、高校では女子野球部に入りたいと思いつつも、自宅の近くには女子野球部のある高校がなく、埼玉栄高等学校に入学して、寮生活を送りながら高校3年間は女子野球部で活動していました。高校卒業後は女子プロ野球にもお声掛けいただいていたのですが、自分のキャリアを考えて大学進学を決意し、大学では理学療法士の勉強をしています。
大学在学中は、平日は大学の野球部で練習させてもらい、休日はクラブチームで試合に出させてもらいながら活動していました。そんななか大学1年生の時です、に初めて日本代表に選ばれ、大学卒業後はトレーナーとして働きながらそのままクラブチームで野球を続けていました。
2020年でした。埼玉西武ライオンズが発足され、私もライオンズに移りました。現在は西武ライオンズレディースの本拠地である埼玉県加須市で、アスリート雇用をしている企業で働きながら、大好きな野球を続けています。
ーその後、ベースボール5に取り組まれたきっかけは何でしたか?
六角 ベースボール5はキューバ発祥のスポーツで、日本には2019年にやってきたのですが、たまたまベースボール5に関する講習会に呼んでいただいたことがきっかけです。
実際にキューバの講師の方に来ていただき、ベースボール5のプレーの仕方や歴史について教えていただいたのですが、試合のスピード感や道具のいらない手軽さがすごく面白いと感じたんです。
講習会で私もプレーしたのですが、講師の方にも「女性でこれだけプレーできる人は珍しい」と興味を持っていただきました。その後、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)でベースボール5を世界に広めるために、各大陸で3人ずつ、合計15人の公認インストラクターを作ろうという話になり、講師の方の推薦でアジア大陸の公認インストラクターになることが決まったんです。
ーその後、どのような経緯でSports3に関わるようになったのでしょうか?
六角 もともとIOCをきっかけに太田さんと関わりがあり、太田さんがNFTに関わるプロジェクトをやっているとお話を伺っていたんです。私自身、以前からNFTには興味があったので、Sports3にもぜひ参加したいと思い、現在アスリートの1人として関わらせてもらっています。
Sports3ではすでに私のNFTを出していただいたのですが、リリースされたときは本当に心躍りましたね。NFTについて調べたり見たりしたことはありましたが、実際に持つというのは全然違うものですね。
ー今後、Sports3でやっていきたいことはありますか?
六角 他の競技の応援や競技同士の繋がりを作っていきたいという気持ちがあります。
今まで他競技のアスリートの方と出会う機会がなかったので、Sports3を通じ、実際に少しずつアスリートの方と交流させていただいて、いろいろな競技に興味を持つようになりました。
他にも私個人としては、NFTと選手をかけあわせたグッズやメタバース上で競技場を作るなど、NFTを使って競技をもっと面白くできるような活動をしてみたいですね。
ー最後に、ご自身の展望について教えてください。
六角 まずは女子野球やベースボール5も広めていきたいです!女子野球やベースボール5の試合にもっとたくさんのお客さんに集まってもらうこと、これが目標です。
私自身、女子野球で2010年のベネズエラを訪れた際、超満員のスタジアムでプレーしてきましたし、ベースボール5でも2022年のメキシコのワールドカップでは毎試合に3000人以上の観客が入るぐらいの会場で、本当にたくさんの人たちに見守ってもらいながらプレーができました。
これまでの経験を通じて、アスリートにとって、たくさんの人に見てもらいながらプレーできることが一番幸せなことだと感じたので、次は日本でもそんな環境を作りたいと真剣に考えています。
ショートトラックスピードスケート選手 渡邊啓太がSports3を通じて叶えたい夢とは
ー 次にショートトラックスピードスケート選手の渡邊啓太さんとお話を伺います。ショートトラックスピードスケートを始められたきっかけを教えてください。
渡邊 両親が香川県出身で僕が4〜5歳くらいの時に家族で香川に里帰りした際、初めてスケートに出会いました。
その後、小学2年生くらいの頃に埼玉県の川越市駅にあるスケートリンクに通っていたところ、開催されていたスケートクラブの監督の方に勧誘されたのが、本格的にショートトラックスピードスケートをやるきっかけになりました。
ーショートトラックスピードスケートの魅力はなんでしょうか?
渡邊 陸上では出せないスピードを氷の上で出せることですね。40〜50キロのスピードを出しながら、選手同士の戦略や駆け引きがあるのが選手にとっても観客にとっても面白い部分だと感じています。
ーそんな渡邊さんがSports3に関わるようになった経緯を教えてください。
渡邊 太田さんのSNSでNFTの勉強会をするという告知を見て、申し込んだのがきっかけです。
ちょうどNFTという言葉をインターネット上でよく目にするタイミングで、僕自身デジタル技術への関心が強かったので、ぜひ参加したいと考えたんです。そうしたら勉強会に参加させてもらったあとに、「このあと、Sports3のミーティングがあるので参加しませんか?」とお誘いを受けました。
ー実際にSports3に参加していかがでしたか?
渡邊 自分のNFTができたときは驚きましたし、素直に嬉しかったですね。太田さんとリアルに会った際にNFTをいただけたことに大変楽しさを感じました。
自分のNFTはまだ準備段階ですが、Sports3を通じてたくさんのアスリートの方と出会うことができたのが、大きな衝撃です。僕がやっているショートトラックスピードスケートはニッチで狭い業界ではあるので、すでに大きな功績を持つアスリートの方や、これからのスポーツ業界を変えていくような可能性を持ったアスリートの方と出会い、考えや展望を聞いて自分の競技者としてのモチベーションが上がったと感じています。
また、今度Sports3で槍投げの試合に参加するリアルイベントがあるのですが、今まで触れられなかったニッチな競技に触れたり、応援できたりするのもすごく面白いと感じています。日々、自分とはまったく違う競技のアスリートの方と関わることで、競技者としての目標が明確になり、意識も上がっています。
ー今後、Sports3を通じて、ご自身の競技をどのように盛り上げていきたいとお考えですか?
渡邊 まず、ショートトラックスピードスケートの認知拡大を目指したいです。まだまだご存知の方が少ない競技ではあるので、コミュニティを通じてショートトラックスピードスケートを知ってもらいたい。
また、競技は解説があるとよりわかりやすく面白くなると思うので、プロが解説をするリアルイベントも開催してみたいです。ショートトラックスピードスケートは日本ではマイナーな競技とされていますが、韓国やカナダ、オランダでは数千人の観客席がすぐに埋まってしまうくらい人気のあるスポーツです。
海外の事例を見ると、日本でも可能性を感じるので、いずれは日本の世界選手権の席を満員にすることが夢ですね。スポーツの魅力は、観客の熱狂や会場に溢れるエネルギーが爆発するような感覚です。ショートトラックスピードスケートでそんな熱狂を作り出したいと考えています。
ー最後に、ご自身の今後の展望を教えてください。
渡邊 Sports3や太田さんとの出会いを通じて、大きなモチベーションをいただきました。今まで世界大会などに出させていただk
きましたが、実際にメダルを取ったアスリートの方と話して、やっぱり自分もミラノでメダルがほしいという強い想いが湧き出てきました。
現在31歳で、これがラストチャンスだと考えているので最後にミラノでメダルを取ることが一番の目標です。
その先の目標としては、子どもたちがもっとショートトラックスピードスケートをできるようにする環境づくりをしていきたいと考えています。この競技はまだ基盤が固まっていないため、例えば東京の子どもたちがショートトラックスピードスケートをやろうとしても、週に1回しか練習できない状況なんです。
滑りたくても滑れないという環境を改善することで、競技人口を増やし、世界選手権の誘致や全日本大会の満席を目指していきたいと考えています。
そんな未来を実現するために、Web3やNFTの力を借りられたら理想的ですね。
取材を終えて
太田雄貴氏の発想と行動力にはいつも驚かされる。昨年のニューヨークで開催されたNFTのイベントでは筆者も同じサイドイベントでご一緒させていただいたが、その頃の一連のインプットが結実したのが、今回のSports3の取り組みだろう。
二人のアスリートに続き、続々とSports3での挑戦を始めるアスリートや選手も多くなってきた。そこにはパリでのオリパラの挑戦者もいる。筆者は今後もSports3に注目していく。
□インタビューイー/Profile
太田雄貴
国際オリンピック委員会 アスリート委員/国際フェンシング連盟 理事 太田雄貴
北京2008オリンピック競技大会男子フルーレ個人で銀メダルを獲得し、日本フェンシング界初のオリンピックメダリストとなる。
ロンドン2012オリンピック競技大会のフルーレ団体で銀メダルを獲得。
現役引退後の2017年、異例の若さで日本フェンシング協会会長に就任。近年では、国際オリンピック委員会 アスリート委員や公益財団法人 日本オリンピック委員会理事に就任する。
六角彩子
茨城県日立市出身。
2010年から2016年まで女子野球日本代表。4度の世界一を経験。2010年の女子野球W杯ではMVPや首位打者、ベストナイン賞を受賞。2012年のW杯では最優秀守備選手賞を受賞。
また2022年の第1回ベースボール5W杯に監督兼任選手として出場し準優勝。女子野球MVP、最優秀監督賞、ベストファイブ賞を受賞。
女子野球、ベースボール5の現役プレイヤーとして活動しつつ、国内外問わず両競技の普及活動も行っている。
渡辺啓太
ショートトラックスピードスケート選手。阪南大学(嘱託職員)所属。日本スケート連盟アスリート委員。2018平昌オリンピック5000mリレー7位入賞。世界選手権を含む国際大会で数々のメダルを獲得し、2026ミラノオリンピック金メダル獲得に向け現役を続行している。
(了)