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完売必至「UNIQLO : C」9/15発売 世界的なデザイナーがユニクロと組みたがる理由とは

宮田理江ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター
着こなしポイントを解説するクレア・ワイト・ケラー氏(筆者撮影)

発売前から完売を予想する声が相次ぐ、ユニクロの新コレクション「UNIQLO : C(ユニクロ:シー)」。ユニクロの歴史を書き換えるとまでいわれるプロジェクトかもしれません。外部のデザイナーと組んだ企画はこれまでにもいろいろあったのに、今回はどこが違うのか。2023年9月15日(金)の発売を前に、「UNIQLO : C」の魅力に迫ります。

最大の注目ポイントはデザイナーにあります。英国生まれのクレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)氏は、「次に組むブランド」が常にモード界の関心を集めてきました。この逸材を迎えられたことは大きなことです。2020年に「ジバンシィ(GIVENCHY)」を退任して以来、彼女の落ち着き先はずっとモード界の話題でした。

「UNIQLO : C」トークセッションにてクレア・ワイト・ケラー氏と勝田幸宏氏(筆者撮影)
「UNIQLO : C」トークセッションにてクレア・ワイト・ケラー氏と勝田幸宏氏(筆者撮影)

発売前には、デザイナーのクレアが来日。ファーストリテイリング グループ上席執行役員の勝田幸宏氏とのトークショーが開催されました。勝田氏はクレアを起用した理由に、ウィメンズだけでなく、メンズの基礎をきちんと勉強してきたからこそ、ユニクロのLifeWearのコンセプトを分かち合えると実感したとのこと。クレアは「カジュアル」「シック」「シティ」「クラリティ(明快さ)」「コネクション」「カプセル」「コネクティビティ(つながり)」「クリエイティビティ」、そして自分の名前という、「C」に込めた思いを語ってくれました。

素材やパターン、色の出し方に関してとてもこだわりを持って、何度も試作や厳しい試験を繰り返したそうです。さらに、今回のコレクションの着こなしのポイントも解説してくれました。たとえば、シーズンレスで着こなせるワンピースはおそろいのスカーフを首に巻いて温度調整したり。クレアの一番お気に入りのトレンチコートはオールシーズンで着られるようなファブリックを意識したといいます。レイヤードを楽しんでほしいと述べて、自由な着こなしを提案してくれました。

「エフォートレス(気負わない)」ファッションの立役者

プロジェクトへの思いを語るクレア・ワイト・ケラー氏(筆者撮影)
プロジェクトへの思いを語るクレア・ワイト・ケラー氏(筆者撮影)

クレアはニットで有名な「プリングルオブスコットランド(Pringle of Scotland)」や、フランスの「クロエ(Chloé)」などでクリエイティブディレクターを務めてきました。18年には英国の「ウィメンズウェア・デザイナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しています。要するにとても実力の高いデザイナー。もちろん、知名度で言えば、もっと有名な人もいます。では、なぜ彼女が特別なのでしょう。

彼女のキャリアで注目すべきなのは「クロエ」時代です。11年にクリエイティブディレクターとなり、17年まで務めました。19年に『タイム』誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたことでも分かる通り、この時期のクレアの仕事ぶりは目を見張るものでした。「クロエ」に絶頂期をもたらしたと言えるでしょう。

全体にやさしげでありつつ、芯の強さも感じさせる、クレア流のデザイン哲学は、フェミニンとハンサムの中間ゾーンに望まれていた「居場所」を用意しました。一般的には「エフォートレス(気負わない)」という言葉で形容されるテイストです。着る側が何となく求めていたのに、うまく提案されてこなかった服を、クレアが形にしたとき、多くの人が「それが欲しかった」と気づきました。以後、すべてのコレクションが話題を集める存在になったのです。そのクレアがユニクロと組んだのですから、期待しないわけにはいかないでしょう。

ワントーンコーデを小物で引き締め

UNIQLO : C (画像協力:ユニクロ)
UNIQLO : C (画像協力:ユニクロ)

では、実際にファーストコレクションの主なルックとアイテムをみていきます。こちらはライトダウンジャケットにダブルフェイスラップコートを羽織ったレイヤード。カシミヤクルーネックショートセーター(ノースリーブ)にカシミヤクルーネックショートカーディガン(長袖)を重ねています。クレアらしいやさしさを帯びた重ね着。大ヒットしたラウンドバッグはレザータッチにアップグレードしています。

裾のバイカラーが着こなしのアクセントになったプリーツカラーブロックスカートがひとさじのフェミニンをプラス。足元にはレースアップのショートブーツを迎えました。上質感のあるキャップにも注目です。ウール100%素材にやわらかい起毛感を出す加工を施し、本革のアジャスター付きです。全体をイエロー系のワントーンで上品に仕上げて、キャップ、バッグ、シューズの小物で引き締めるテクニックです。

エフォートレスはゆったり×やさしげ色がポイント

UNIQLO : C (画像協力:ユニクロ)
UNIQLO : C (画像協力:ユニクロ)

クレアの強みは母国・英国の装いに理解が深いところにもあります。だから、トレンチコートは特別なこだわりを持つアイテム。今回のコレクションでも正統派のトレンチが用意されています。先に述べたように、クレアの今回の一番のお気に入りアイテムでもあります。1年を通して着られるギャバジンツイル素材を採用。もともと武骨な軍服に由来するトレンチを、ウィメンズ向けに柔和な表情に仕立て直すのが近年の流れでしたが、マニッシュなシルエットで本来のトレンチらしさをきちんと表現。省かれるケースが多かったガンパッチ(肩当て)までよみがえらせています。

リラックスなアイテムで合わせると、抜け感が漂います。カシミヤのショートセーターに引き合わせたのは、コーデュロイ仕立てのワイドパンツ。ゆったりとしたジェンダーレスな雰囲気を宿しつつ、淡いピンクがやさしげ。絶妙なエフォートレスルックです。

英国ムードに機能性をプラスしたレイヤード

UNIQLO : C (画像協力:ユニクロ)
UNIQLO : C (画像協力:ユニクロ)

ブリティッシュトラッドの伝統を受け継ぎながら、肩の力が抜けた雰囲気に着崩していくのは、クレアが得意とするスタイリングです。こちらはチェック柄の中綿入りパフテックオーバーサイズコート。小雨程度の水をはじく撥水加工が施されています。コーデュロイのワイドパンツを合わせたジェンダーレスなコーディネート。ウエストアウトしたシャツにハーフジップセーターをオン。こちらでもウールキャップがアクセントに。足元は楽な履き心地のローファーを選んで、英国ムードを添えました。

自分好みの自在アレンジに誘う ジェンダーレスな着こなしも

UNIQLO : C (画像協力:ユニクロ)
UNIQLO : C (画像協力:ユニクロ)

今回のコレクションはウィメンズ向けですが、メンズとして着ても違和感のなさそうなたたずまいのアイテムが多いのが特徴です。左のモデルがまとったオーバーサイズアウターは上記で紹介したパフテックオーバーサイズコートの色・柄違いです。右のモデルはシャギー感のある起毛素材が印象的なチェック柄のオーバーサイズジャケットを着用。プリーツカラーブロックスカートはプリーツがきちんと感やエレガンスを際立たせていて、様々なシーンで着用できそう。このあたりの節度を保ちつつ、リラクシングに見せるさじ加減がクレアは実に巧みです。

マニッシュとフェミニンが交差したハイブリッド

UNIQLO : C (画像協力:ユニクロ)
UNIQLO : C (画像協力:ユニクロ)

最後のルックもクレアらしいバランス感が冴えています。中綿入りの暖かいパフテックブルゾンに、シフォン素材の総柄プリーツスカートをマッチング。マニッシュとフェミニンが交差したハイブリッドな出で立ちは素材も上下で厚薄ハイブリッドです。脇に抱えたレザータッチラウンドバッグがショートブーツと響き合って、フェティッシュでクールなムードを添えました。今回のコレクションではバッグと靴の充実ぶりも見逃せません。小物を含めたフルラインの品ぞろえにユニクロの本気感がうかがえます。

上質なモード服をお値打ちプライスで提供

「UNIQLO : C」ローンチパーティ(筆者撮影)
「UNIQLO : C」ローンチパーティ(筆者撮影)

「UNIQLO : C」ローンチパーティ(筆者撮影)
「UNIQLO : C」ローンチパーティ(筆者撮影)

「UNIQLO : C」ローンチパーティ(筆者撮影)
「UNIQLO : C」ローンチパーティ(筆者撮影)

個別アイテムの魅力を語り始めるときりがないほど。上質な素材が選ばれているのに加え、細部にまで工夫が凝らされています。しかし、ショッピングメリットを考えた場合、プライス面のお得感に触れないわけにはいきません。最も高額なアイテムは1万2900円のトレンチコート。ギャバジンツイル素材で仕立てた、通年で着られるコートがこの価格というのは、ちょっと驚きです。プリーツカラーブロックスカートは5990円、ボートネックニットワンピース(長袖)も5990円です。レザータッチラウンドバッグが2990円、コンフィールタッチサイドゴアショートブーツが4990円といった小物類の値ごろ感も格別です。

「UNIQLO : C」という名前を見て、「Uniqlo U」を思い出す人もいるでしょう。アーティスティック・ディレクターのクリストフ・ルメール氏が手がける「Uniqlo U」コレクションはシーズンを重ねて、今やユニクロの柱に育ちました。グローバルな才能を呼び込むうえで、「ラコステ」や「エルメス」のデザインを担ったルメール氏の存在は大きな意味を持ちます。

クレアが新たに加わったことにより、トップクラスのデザイナーを引き寄せるプラットフォームとしてのユニクロの評価は一段と高まったはず。今回のプレスリリースでは、一過性のイメージが強い「コラボレーション」という言葉が使われていません。今後の計画は発表されていませんが、勝田氏によると「Uniqlo U」のような長期にわたるプロジェクトに発展するような話に期待が膨らみます。

来日会見でクレアは今後、メンズにも取り組みたいという意欲を示し、ユニクロとの相思相愛の関係を感じさせました。メンズもウィメンズも幅広く手がけ、開発・生産能力が高いユニクロは、クレアにとってのメンズのような新たなチャレンジをサポートしてくれるパートナーとして頼もしく映るはず。過去のアーカイブやブランドのイメージにしばられにくい点でも、ユニクロは実力派デザイナーが「新天地」として組みたがる存在と言えるでしょう。

優秀なデザイナーが才能を発揮しやすい舞台=ユニクロ

「UNIQLO : C」(筆者撮影)
「UNIQLO : C」(筆者撮影)

モードの世界では近年、有力ブランドの間でデザイナーが割と短期間で交代するケースが相次いでいます。自ら退任を選ぶデザイナーも珍しくありません。ブランド側の事情もあって、得意の表現を生かし切れない場合もあるようです。その点、外部デザイナーと組んだ経験が豊富で、懐が深いのに加え、素材開発に強みを持つユニクロはデザイナーが才能を発揮しやすい舞台と言えます。モードの枠組みに束縛されにくいのもユニクロと組むメリット。今後は「ネクスト・クレア」の登場も期待されます。

クレアの実力を感じるうえで、今回のコレクションは絶好のチャンス。息の長いシリーズにつながることを願って、まずは今回のコレクションに店頭で触れてみてはいかがでしょう。

(関連サイト)

「UNIQLO : C」特集ページ

https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/collaboration/uniqlo-c/23fw/

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ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター

多彩なメディアでコレクショントレンド情報をはじめ、着こなし解説、スタイリング指南などを幅広く発信。複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスも経験。自らのテレビ通販ブランドもプロデュース。2014年から「毎日ファッション大賞」推薦委員を経て、22年から同選考委員に。著書に『おしゃれの近道』(学研パブリッシング)ほか。野菜好きが高じて野菜ソムリエ資格を取得。

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