ユニクロ歴代コラボ、なぜ大ヒット呼ぶ? 「ユニクロ×マルニ」ここが狙い目
ユニクロはイタリアブランド「MARNI(マルニ)」とコラボレーションした「UNIQLO and MARNI(ユニクロ アンド マルニ)」を2021年5月20日に発売します。「マルニ」ならではの鮮やかな色彩にハッピームードが漂うコレクションは、気持ちを前向きにさせたい今のおしゃれマインドになじみます。
人々が求める平和やハッピーに通じるようなコレクション。今のような時代だからこそ、明るい服を自分好みにまとって気持ちを盛り上げたいという気持ちに寄り添うかのようです。
今回はこのコレクションをご紹介しつつ、その時代ごとのムードを映し出してきた、これまでのユニクロコラボの歴史を振り返って、魅力を掘り下げます。
おしゃれはもっと自由に ポジティブ気分が反映されたコレクション
「マルニ」は1994年にイタリアで誕生したラグジュアリーブランドです。形式にとらわれない自由な発想で知られ、大胆な色使い、独特のプリント柄を持ち味としています。今回のコラボコレクションでも、ギンガムチェックやストライプ、手描きの花柄や格子柄が装いを彩っています。
「タイムレスな日常着に遊び心を」というメッセージが示す通り、ファッションをもっと自由に解き放つようなコレクションです。花柄もメンズとウィメンズの両方にあしらわれていて、ジェンダーレスに着こなしやすくなっています。気持ちが盛り上がりそうな服がいっぱい。リラックスして着られる、身体を締め付けないシルエットも多く、ようやく伸びやかさが日常に戻ってきそうな期待感を帯びる今の気分が感じ取れます。
「マルニ」のクリエイティブ・ディレクターのフランチェスコ・リッソ氏は少しノスタルジックな花柄やシグネチャーであるギンガムチェックにひねりを加えたそうです。グランジ風のストライプTシャツやパジャマライクな上下など、ゆったりとしたテーラリングがポイントになっています。
柱になっている3つのテーマは「バルーン」「スーツ」「パジャマ」。ルーズシルエットやバルーンボリュームが楽観的な雰囲気を寄り添わせています。とりわけ、パジャマを思わせるオーバーサイズのシャツやパンツ・セットアップはくつろぎ感の高いアイテムです。
楽ちんなのに華やか 機能性とリラックスも
筆者がショールームで実際に試着して感じたのは、どのアイテムもゆったりリラックスしたシルエットなので、ストレスフリーで楽ちんだという点です。コロナ禍でルームウエアに着慣れていましたが、やっと外に出られるようになった今、いきなり締め付けられる服やカッチリした服は窮屈感を覚えがち。だから、リラックスしたシルエットで華やかな気分になれる色や柄のアイテムなら外歩きが楽しくなります。
パジャマ風パンツとシャツのセットアップは、伸びやかな気持ちで着やすいのに、おしゃれ見えの叶うところが「マルニ」ならではの強み。パジャマをおうちだけでなく、外でもまとう提案も気持ちを弾ませてくれそう。ルームウエアとお出掛けルックを相互乗り入れするシーンフリーの着こなしです。
ほかにもメリットをたくさん感じ取ることができました。シルエットがゆったりしているので、性別に関係なく、ウィメンズがメンズ物を選んだり、メンズがウィメンズ物を着こなしたりと、自由に選べるものいいところです。
手描き(ハンドペイント)による花柄や格子柄がのどかな表情を醸し出すから、装い全体に気負わない自然体テイストが漂います。「花柄×チェック柄」といったおしゃれ上級者で人気の「柄on柄」ミックスのコーディネートも選択肢に加えたいところ。あえて色や柄を上下でずらすコンビネーションがこなれ感を呼び込んでくれます。「ボーダー柄×花柄」のほか、「ボーダー柄×格子柄×花柄」のトリプルミックスも可能。カラフルなソックスは装いのアクセントになってくれます。
ジャケットもカッチリ着るのではなく、ノンシャランと羽織るのが今の気分。特に夏に向かっては、暑さを遠ざけやすい、サラリとした着こなしがおすすめ。テーマのひとつである「バルーン」シルエットもスカートやコートに反映されています。穏やかで優しげなのにモード感が演出できるのです。
今回のコレクションには軽快でさわやかなスタイリングに役立つアイテムが多くそろっています。ブロックテックコートやポケッタブルパーカなど、機能性が発揮されているのもユニクロならではのよさ。スイムショーツとしても日常使いでもOKなショーツも用意されています。これからの梅雨シーズンや、キャンプ、夏フェス、リゾートなどにも活躍してくれそうです。
【ユニクロコラボの歴史】 リアルクローズからハイエンドまで=ファッションの民主化
「マルニ」に至るコラボの歴史は長く、およそ2006年頃から始まっています。そのヒストリーを振り返ってみると、15年余りの取り組みを重ねる間に、コラボのありようが変化してきたことがわかります。
本格的なコラボシリーズの幕開けとなったのは、06年の「デザイナーズ・インビテーション・プロジェクト」です。この第1弾で筆頭に挙げられたのは、「LACOSTE(ラコステ)」の人気を押し上げたFelipe Oliveira Baptista(フェリープ・オリベイラ・バティスタ)氏でした。この時は合計7組と多彩な顔ぶれ。半数以上の4組を「mintdesigns (ミントデザインズ)」や「THEATRE PRODUCTS (シアタープロダクツ)」などの国内勢が占めていたのも目を引きます。
続く07年の第2弾でも計8組を起用。ニューヨークブランドの「3.1 phillip lim(3.1フィリップ リム)」が加わりました。ここでも「G.V.G.V.」をはじめとする国内ブランドが半分を占めています。翌08年は計4組と半分に減らし、ニューヨークブランドの「Alexander Wang(アレキサンダーワン)」を初参加させました。次の09年も4組でニューヨークのセレクトショップ「Opening Ceremony(オープニングセレモニー)」が登場。この段階ではニューヨークのデザイナーが相次いで起用されていて、プレスリリースでも「ニューヨークのリアルクローズを、全世界へ発信します」とうたっていました。
この09年は今に至る変化が表れた年です。ファッションデザイナーのJil Sander(ジル・サンダー)氏個人がデザインするコレクションのユニクロ「+J(プラスジェイ)」がスタートしました。ブランドとのコラボではなく、デザイナー個人が手がけた点でも新しいアプローチです。ミニマルを得意とするサンダー氏との相性は抜群で、ユニクロコラボとしては記録的な大ヒットになりました。「ユニクロコラボ=人気商品」を導いた最初のケースとも言えそうです。
「+J」は09年秋冬に続き、10年春夏、10年秋冬、11年春夏、さらにその後も登場し、そのたびに売り切れが相次ぎました。20年に復活して大きな関心を集めたのは、まだ記憶に新しいところです。この「+J」での成功体験はユニクロコラボの流れに変化をもたらしたとみえます。この時期以降、コラボ相手にそれまで以上に普遍性やグローバル感、オリジナリティー、人気度などの面で際立ったブランドやデザイナーを選ぶケースが多くなっていきます。
その一例と言えそうなのが12年の「UNDERCOVER(アンダーカバー)」の初登場です。早くからパリコレクションに参加し、国際的な評価の高い日本ブランドです。新コレクション「UU」はベビー、キッズ、ウイメンズ、メンズのフルラインアップを用意した点でも、それまでのコラボとは別格。発売と同時に行列ができるほどの話題を集めました。
14年から15年にかけては、現在も続いている、有力な創り手とのつながりが深まった時期にあたります。ファッションモデルでミューズのイネス・ド・ラ・フレサンジュ(INES DE LA FRESSANGE)氏とのコラボレーションラインが誕生したのもこの頃です。イネス氏のラインは現在も人気のシリーズとして継続しています。それまでは著名デザイナーとコラボしてきましたが、イネス氏は「着る側」の立場。優美でパリ風の「イネス流着こなし」のエッセンスがデザインに生かされています。
15年には「LEMAIRE(ルメール)」とのコラボもスタート。こちらは以前に「エルメス」のアーティスティックディレクターを務めていたクリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)氏のブランドです。ルメール氏も第1弾のバティスタ氏と同じく、「エルメス」の前に「ラコステ」のデザインを任されていた経験を持っています。ルメール氏はその後、「究極のデイリーウエア」と位置付ける、ユニクロの主軸コレクション「Uniqlo U」を任されています。短期的なコラボから継続的な協業へ発展したケースとも言えるでしょう。
ユニクロのコラボに一段と勢いが加わったのは17年あたりからです。17年には英国ブランド「JW ANDERSON(ジェイ ダブリュー アンダーソン)」とのコラボが実現。英国の伝統的な装いが再評価される中、気鋭のデザイナーが起用されました。ロンドンのショップで盛大なお披露目イベントが開かれ、筆者も参加しました。アンダーソン氏はコラボの意義を「ファッションを民主化するということです」と語っていて、ユニクロとのコラボが広く価値を認められてきたことをうかがわせます。
翌18年には「Bottega Beneta(ボッテガ・ヴェネタ)」のクリエイティブ・ディレクターとして評価が高かったトーマス・マイヤー(Tomas Maier)氏が手がける「tomas maier(トーマス・マイヤー)」ブランドとのコラボもスタート。ユニクロ初の本格的なリゾートウエアコレクションとして提案されました。18年のコラボ相手を見ると、欧米に拠点を構えるブランドやデザイナーが目立ち、グローバル化が進んだことを感じさせます。
21年には「Mame Kurogouchi(マメ クロゴウチ)」とコラボして、アンダーウエアの新ラインを誕生させました。コラボでのアンダーウエアは初めての試み。大ヒットにつながり、コラボプロジェクトにまだ拡張や深掘りの余地が残っていることを証明しました。
生活者のニーズから生まれるトレンド 日常に彩りと笑顔を
こうした歴史を振り返ると、ユニクロのコラボはそれぞれの時代にふさわしい、生活者のニーズやモードのトレンドに目配りして企画されていることがわかります。今回の「マルニ」も、明るく華やかな色やモチーフがもたらすポジティブな気分は、今の生活者に寄り添う提案と映ります。
22年春夏は気持ちが弾むような色や柄を取り入れるのが世界的なトレンド。手持ちのワードローブに「UNIQLO and MARNI」のアイテムを迎え入れるだけで、ハッピー感を上乗せできて、着こなしの雰囲気も変わります。コーディネートを自由に組み立てやすいから、楽観的なムードのおしゃれで日常に彩りと笑顔を取り入れてみてはいかがでしょう。
(関連サイト)
https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/collaboration/marni/22ss/
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