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男子3000m障害、三浦龍司。実は直前に調子を落としていたが…日本記録で49年ぶり決勝進出の快挙

和田悟志フリーランスライター
世界選手権銀メダリストのギルマ と競り合う三浦(左)(写真:ロイター/アフロ)

日本記録で決勝進出を決める

 7月30日は東京オリンピック陸上競技の初日。モーニングセッションに行われた男子3000m障害予選で、三浦龍司(順大)が8分9秒92の日本新記録をマークして、1組2着に入り決勝進出を決めた。 

 この種目で日本人が決勝に進出するのは1972年ミュンヘン五輪で9位だった小山隆治さん以来49年ぶりとなる。2004年アテネ五輪で岩水嘉孝さんがマークした五輪での日本人最高タイムも塗り替えた。

(ちなみに、小山さんも岩水さんも、三浦の順大の先輩に当たる)

「自分のレースも、記録もものにできたので、すごく良い試合だったと思います」

三浦も納得の走りで快挙を成し遂げた。

 今季、三浦が日本記録を更新するのはこれが3度目。6月の日本選手権で日本記録を樹立した際は、最初の1000mが2分49秒だったが、この予選はそれよりも5秒以上速い2分43秒2とかなりのハイペースだった。ただ、日本選手権後には「最初の1000mがもう少しペースが上がっても対応できると思う」とも話していただけに、ハイペースだろうと、まだまだ余裕があった。

 また、レース序盤は、2019年ドーハ世界選手権2位のラメチャ・ギルマ(エチオピア)、同6位のベンジャミン・キゲン(ケニア)が後方に位置どっていたが、三浦は、実力者の彼らをマークするのではなく、積極的に前方でレースを進めた。

「とにかくリズムを崩しちゃいけないので、“集団の中に入らないように”ということと“リズムを崩さないように走りなさい”っていう指示はしていました」とは、三浦を指導する長門俊介監督。

 仮にギルマらの後ろだったら、ペースの上げ下げに余計な体力を使っていた可能性もあっただけに、積極的なレース運びも功を奏しただろう。

 2000mの通過は5分30秒9と、この時点でも日本記録を約5秒上回っていた。今季のレースはラスト1000mを2分40秒〜41秒とペースアップし、終盤にも強さを発揮してきたが、この日も、ラスト1000mで見事な走りを見せた。

「ラストの切れ味は、外国人選手に比べれば、もうちょっとかなと思う」と三浦は課題を口にしていたものの、終盤にケニアのキゲンを振り切り、ギルマに次いで2着でフィニッシュした。

 決勝進出の条件は、予選各組の上位3着までか、4着以下のうち記録上位6人に入ることだったが、三浦はきっちりと着順で予選を通過した。

2着で決勝進出を決めた
2着で決勝進出を決めた写真:ロイター/アフロ

本番を前に疲労感があったが…決勝を見据えてきた

 三浦は五輪出場を決めた日本選手権の後も、7月14日のホクレン・ディスタンスチャレンジ2021第4戦北見大会では、5000mでU20日本歴代2位、日本人学生歴代8位の13分26秒78の好タイムをマークするなど順調だった。だが、実はその後に調子を落としていたという。

「いつもと同じ流れの(試合前の)練習を組んでいたのですが、そんなに良くなかったんです。キレが悪かったり、タイムも思ったより伸びなかったり……」

 好記録を連発してきただけに、長門監督には疲労感が表出してきたように見えていた。

 しかし、三浦と長門監督が見据えていたのは、五輪の予選のレースではなく、決勝の舞台。

 予選前日の刺激では「力まずに、すーっと走れていた。これはかなり状態が良くなっているなと感じました」(長門監督)と、本番の直前になって、しっかりと調子を上げてきた。

 決勝は8月2日の21時15分。

「決勝は予選以上の記録、走りの強さを見せていかないといけない。どんな展開だろうと、タフについていって、ラスト勝負しにいくレースをしたいと思います」

 三浦には、男子3000m障害で日本人初の入賞はおろか、メダルにも期待がかかる。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

フリーランスライター

1980年生まれ、福島県出身。 大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。 その後、出版社勤務を経てフリーランスに。 陸上競技(主に大学駅伝やマラソン)やDOスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆。大学駅伝の監督の書籍や『青トレ』などトレーニング本の構成も担当している。

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