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【コラム】岸田「反日」政権は防衛費倍増ならクラファンしろ、他国のために敵基地攻撃能力を保有するな

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
防衛費倍増、敵基地攻撃能力の保有に反対する市民のデモ 筆者撮影

 なぜ、今、敵基地攻撃能力の保有及び、防衛費の倍増なのか。その根拠は、主に力を増している中国に米国と共に対抗するためであり、特に安倍晋三元首相が主張してきた「台湾有事は日本有事であり、日米安保の有事」という理屈にある。つまり、岸田首相の党内基盤の補強のためという面も大きいのだ。また、それは非常にざっくりとした言い方をするならば、「台湾のためなら、税の負担増も、日本が戦争に巻き込まれても仕方ないよね?」ということでもある。こうした本質を岸田首相も、その腰ぎんちゃくの番記者達も、包み隠さず、明らかにすべきだろう。敵基地攻撃能力の保有や、防衛費の大幅増額は、いずれも日本国憲法に抵触する他、安全保障という観点でも、大きな問題をもたらしかねない。そもそも、これらの政策は米国に忖度した動きであり、本当に日本のために必要なことかどうかも怪しいのだ。

〇日本が攻撃されていなくても、中国にミサイル

 敵基地攻撃能力とは、日本及びその周辺に対する攻撃が行われる兆候があった際に、未然に攻撃を防ぐため、「敵国」のミサイル拠点などに、先制攻撃を行う装備・能力のこと。主に巡航ミサイルや中距離ミサイルを使用するとされ、米国産ミサイル「トマホーク」を500発導入することを岸田政権は検討しているという。ただ、これらが純粋に「日本の防衛」のために使われるかと言うと、むしろ、台湾有事の際の対応ではないかとの疑いもある。岸田政権は、国会で野党の質問に対し、安全保障関連法(政府の呼称は平和安全法制)での「武力行使の新三要件」で敵基地攻撃能力を使うと幾度も答弁している。つまり、日本が攻撃されていなくても、米軍が攻撃を受ければ、日本も共に反撃するという、集団的自衛権に基づいて、敵基地攻撃能力を使用するということだ。台湾有事に当てはめれば、中国側が米軍を攻撃する場合、日本が中国本土の軍事拠点等にミサイルを撃ち込むということである。だが、日本を直接攻撃対象としていないのに、日本側が米軍のために中国にミサイル攻撃を行えば、「先制攻撃」「国連憲章違反」と見なされる恐れがある。中国側が日本に対し、ミサイル攻撃等の反撃をしてくるリスクも高い。そもそも、集団的自衛権が違憲であるし、敵基地攻撃能力も専守防衛の範囲を超え、違憲だ。つまり、「違憲のダブルセット」で、日本を米中の戦争に巻き込むということなのだ。無論、台湾の人々の命や人権は大事であるし、米中も全面的な戦争は望んでいないだろう。だからこそ、戦争を回避するための働きかけを日本はするべきだし、日本が直接攻撃されていないのに、参戦するような愚行は絶対に避けるべきだ。

今月9日に行われた官邸前での軍拡反対のアピール 写真右は筆者
今月9日に行われた官邸前での軍拡反対のアピール 写真右は筆者

〇国会を通さないならクラファンしろ

 防衛費の倍増も、数字ありきで、国会で十分な審議が行われ、岸田首相が説明を尽くしたとは言い難い。しかも、防衛費を倍増するために、1兆円の税を増やすという。呆れたものだ。日本国内での格差拡大・貧困の深刻化が叫ばれるようになり久しいが、福祉や教育、貧困等への対策は「財源が無い」というくせに、軍事となると、湯水のごとく公的資金を使うとは、まるで、近隣の軍事独裁国家のようである。また元内閣官房副長官補の柳澤協二氏らが懸念しているように、「安全保障のジレンマ」を引き起こす可能性がある。つまり、日本の軍拡が中国の軍拡を招き、際限の無い軍拡競争で国家が破綻する懸念があるのだ。せめて、国会での審議をきちんと重ねるべきであるが、岸田政権は、年末までに閣議決定だけで決める姿勢だ。これは、国家が財政活動(支出や課税)を行う際は、国民の代表で構成される国会での議決が必要であるとの、財政民主主義に反する。日本国憲法第83条に基づく財政民主主義に反し、国会での十分な審議もなく、閣議決定だけで決めるのならば、自民党関係者及びその支持者達でクラウドファンディングで防衛費増額の資金を集めたらどうか

〇ウクライナ危機に便乗するな

 なお、防衛費倍増についは、ウクライナ危機を受け、NATO加盟国に米国が、軍事費の引き上げを求めたことも、その理由の一つとされているが、日本はNATO加盟国ではない。日本が防衛費を倍増したところで、ウクライナの平和のためには、ほとんど何の意味もないのである。今年4月、ウクライナでの戦争被害を取材した筆者の立場からすれば、ウクライナの人々の苦難を利用し、火事場泥棒的に防衛費を倍増することは唾棄すべき詭弁だ。本当にウクライナの平和を望むのであれば、有望な洋上風力発電や、農地と共存する太陽光発電(ソーラーシェアリング)の国内での普及を進め、ロシアからの天然ガスや石油等の化石燃料を輸入するのを止めるべきだ。筆者がウクライナ東部のハルキウで取材していた時、砲弾やロケット弾が文字通り、雨あられで無差別に市内に降り注いで、病院や保育園、住宅地も被害を受けていた。

 こうした戦争犯罪を繰り返しているロシアの、最大の外貨収入源は何か?それは天然ガスや石油だ。今もロシアから日本が天然ガスや石油を買い続けていることは恥ずべきことだ。日本がロシアと一緒になって、ウクライナの人々を殺しているのと同義だと言える。いずれにせよ、日本としても温暖化防止のための脱炭素化を進めなくてはならず、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を行わなくてはならない。そうした対策も行わず、ロシアのウクライナ侵攻で、日本の人々もショックを受けているのに付け込み、お金を巻き上げようとするとは、まるで、「先祖の霊が…」と脅して献金を迫る、自民党との関係が深いカルト宗教団体のようである

〇日本のための政治をしろ

 ウクライナ危機に絡めて言えば、むしろ、戦争を禁じた日本国憲法第9条の重要性は増していると言える。「戦争の否定」という点で、9条は、国連憲章との共通性がある。国連憲章違反の戦争をやめろ、と9条を持つ日本こそが、強く、ウクライナ侵攻に反対するべきだ。絶対に侵略戦争はダメだと国際社会が一丸となって結束することが、台湾有事を含め今後の世界の戦争を未然に防ぐのだ。岸田政権は、憲法や国民の安全や生活を蔑ろにすることを止め、本当の意味で日本のための政治を行うべきだろう。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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