音楽離れの実態は…年齢階層別の「音楽との付き合い方」の中身をさぐる(2022年公開版)
「音楽離れ」らしきものの動き
昨今の音楽業界、特にCD市場の不調要因として、メディア環境の変化・競合の登場以外に、視聴者の音楽離れが進んでいるとの意見がある。そこで今回は日本レコード協会が2022年4月に発表した「音楽メディアユーザー実態調査」(※)の最新版となる2021年度版などから、「主に音楽と対価との関係から見た、年齢階層・経年における音楽への姿勢、考え方の相違」について確認を行う。音楽の入手ルートも多様化し、無料で楽しめる手段も増える中、音楽への思いにはどのような動きがあり、それは年齢階層で違いがあるのだろうか。
音楽に対する興味関心のある無し、その気持ちをきっかけにどのような行動に移すかについては人それぞれ。また、同じ気持ちを持っていても、表現手段も多様に及ぶ。今件では音楽との付き合い方に関して、新曲への関心の度合いや対価の支払いの面から、大きく次の4つに区分を設定。回答者には自分の音楽への姿勢として、もっとも当てはまる選択肢を選んでもらっている。
・有料聴取層:
「音楽を聞くためにCDや有料音楽音源など音楽商品を購入したり、お金を支払ったりしたことがある」(定額制音楽配信や有料のコンサートへの参加も含む。通信料金や聴取機器の購入は除く)
・無料聴取層:
「音楽にお金を支払っていないが、無料動画サイトやテレビなどで新たに知った楽曲を聴いた経験がある」
・無関心層(既知楽曲のみ):
「音楽にお金を支払っておらず、以前から知っていた楽曲しか聴かず、新曲は(テレビなどでも)聴かない」
・無関心層:
「音楽にお金を支払わない。特に自分で音楽を聴かない(音楽には特段積極的な好意、関心を持たない。音楽への本当の意味での無関心派)」
全体的な経年動向としては少しずつだが「音楽へ対価を支払う層」が減り、「既知の曲のみを聴きまわす」「音楽そのものに無関心」の人が増えている。2014年は未調査のために1年分が空いているが、それを考慮しても2015年には大きな「有料音楽離れ」だけで無く「音楽離れ」が進んだ。しかし2017年では漸減していた「有料聴取層」が初めて前年比で増加し、大きな懸念が持たれていた「音楽に対価を見出せない雰囲気の浸透」が和らいだ。
直近の2021年では「有料聴取層」「無料聴取層」が大きく減り、その分「無関心層」が増えたように見える。「無関心層(既知楽曲のみ)」はいくぶん増えた程度。「無関心層(既知楽曲のみ)」「無関心層」が減って「無料聴取層」が増えたのであれば、新型コロナウイルス流行による巣ごもり現象が、無料動画サイトやテレビへの接触機会を増やした結果と分析でき、音楽ビジネスの観点では将来につながる明るい動きと解釈できるのだが。
むしろ現実は逆の動きを示す形となった。一番有益なお客さんとなる「有料聴取層」が「無関心層」にシフトしたように見える動きは、好ましいものとは言い難い。
若年層で進んでいた「音楽離れ」だが
これを年齢階層別に区分した上でグラフ化したのが次の図。直近となる2021年分のみを別途抽出したものも併記する。
音楽業界にとって一番のお得意様は学生(直近2021年分では各学校種類別の詳細値が出ているが、経年変化を見るために加重平均を行い独自に算出している)。その学生でも少しずつだが「有料聴取層」が減り、「無料聴取層」ですらも減少し、「無関心層」などが増加していた。2021年では大きく「有料聴取層」が減ってしまったのが印象的。
20代(社会人)から30代も似たような動きだが、音楽に関心を持たない「無関心層」がが大きく増えているのはよい傾向とはいえない。特に30代では「無関心層」が44.4%と、年齢階層別では最大値を示してしまっている。
40代以降においては2015年の急落以外は「有料聴取層」にさほど変化がなく、2016年以降は前年比で増加する年すら見受けられる。2015年の急落もよく見直すと、「無関心層」の急増は30代以降だが、「有料聴取層」の急減は40代以降で生じており、音楽に対する姿勢が30代から40代で大きな変化を見せていた感はある。ただし2021年では「有料聴取層」は前年比で減ってしまっている。特に40代の減り方が著しい。
音楽業界にとっては直接の売上に貢献するのは「有料聴取層」に他ならないことから、この層が多い方が好ましい状況となる。一番避けたいのは「無関心層」の増加(何しろ音楽そのものへの関心が薄れてしまっている層なのだから)。しかしそれとはまったく逆の動きを示しているのが実情で、特にお得意さまとなる若年層に強い動きが生じている。直近の2021年ではその動きが顕著なものとなっている。音楽業界全体として、どのような形で状況を改善していくのか、今後の動向が気になるところだ。
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※音楽メディアユーザー実態調査
直近分は2021年12月に12歳から69歳の男女に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は6110人。男女別・年齢階層・地域別(都市部とそれ以外でさらに等分)でほぼ均等割り当ての上、2020年度の国勢調査結果をベースにウェイトバックを実施している。また設問の多くは過去半年間を対象に答えてもらっているため、2021年7月から12月時の動向が反映されていることになる。過去の年の調査もほぼ同じ条件で実施されている。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。