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【統一地方選前半戦】維新の勝利に公明党があっさりと白旗を挙げたワケ

安積明子政治ジャーナリスト
これから4年間も大阪を治めるのはこの2人(写真:Motoo Naka/アフロ)

自民党が振るわなかったその理由

 統一地方選の前半戦で焦点となった大阪府知事選と大阪市長選では、ともに大阪維新の会の勝利となった。知名度では大きく差が付いていた大阪府知事選はさておき、市長選では当初は自民党は優勢が伝えられていた。

 大阪維新の会が府知事選と市長選の両方で勝たなくてはならなかったのに対し、非維新勢力はそのひとつを得れば勝ちだった。当初はやや楽観ムードも漂ったが、現実はそう甘くなかった。

 2015年の市長選では、大阪維新の会の吉村洋文氏の59万6045票に対し、自民党が推薦し、民主党や共産党が支援した柳本顕氏は40万6595票。今回は大阪維新の会の松井一郎氏の66万819票に対し、自民党と公明党が推薦し、立憲民主党や国民民主党、そして共産党が支援した柳本氏が47万6351票と、その差はほぼ変わらない。

 ただし前回は自主投票だった公明党が今回は柳本氏側に付いた割には、柳本氏の票は伸びていない。しかも今回のダブルクロス選のきっかけは、大阪都構想の住民投票の“密約”を巡る公明党と維新の党の決裂だった。

 敗因のひとつは自民党支持者の共産党アレルギーだ。NHKの出口調査によると、自民党支持層の30%台半ばが松井氏に投票。柳本氏への支持は60%余りにとどまった。さらに松井氏は無党派層の過半数も制していた。知名度の差の結果だろうが、これでは勝てる見込みはない。

 「常勝関西」の公明党も苦戦した。大阪市議選の東成区では維新の新人候補に4票差で則清ナヲミ氏が落選。京都市議選では下京区で西山信昌氏が共産党の新人候補に6票差で及ばずに落選している。

公明党は参議院選の後を見ている

 なぜ公明党がふるわなかったのか。ダブルクロス選が決まった時、「公明党の選挙区に維新が候補を立て、吉村知事と松井市長が手をつないで応援に入る」との話が流され、これに公明党大阪本部は大いに奮起したのではなかったか。

 ふるわない理由は支持団体の高齢化など様々だが、とりわけ参議院選後の政局が影響しているのではないかと思われる。

「次期参議院選の後は、自公で3分の2を維持できないだろう。そうなれば日本維新の会から協力を仰ぐしかない」

 選挙戦中に東京在住のある公明党の関係者はこう述べている。確かに今回の「大阪の闘い」については、東京は冷めていた印象が否めない。公明党大阪本部でもすでに「諦め」の雰囲気になり、「方向転換」を図っていたのではないか。大阪維新の会は大阪府議会で11議席増の55議席を獲得し、過半数を制した。大阪市議会では過半数に及ばなかったものの、5議席増の40議席を獲得した。こうした状況をいち早く察知したのだろう、佐藤茂樹代表は午後10時には記者団に対して「大阪都構想の扱いを検討したい」と述べて維新に“全面降伏”した。

 もっとも次期衆議院選を懸念したためというよりも、国政でも地方でも与党でいることが公明党のレゾンデートルゆえだ。大阪維新の会も、大阪都構想を受け入れられさえすれば、わだかまりはないだろう。

衆議院選補選にも影響が

 割を喰ったのは自民党大阪府連ということになるが、その敗北が21日に予定される衆議院大阪12区補選に影響しそうだ。実際に自民党の弔い合戦であるにも関わらず、自民党と大阪維新の会が接戦だという数字も出ている。もともとかなり苦しい戦いと言われてきた衆議院沖縄3区補選とともに自民党候補が負けるとなれば、次期参議院選への影響も必至だろう。2019年はもっとも激しい「政変の亥年」になるかもしれない。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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