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【値下げ合戦!?】インターコン5千円にヒルトン8千円-帝国ホテルに端を発した長期ステイ価格破壊の連鎖

瀧澤信秋ホテル評論家
ヒルトン東京お台場(港区)では1泊換算で8千円~のプランが(筆者撮影)

高級ホテルの長期滞在プランが続出

コロナ禍で苦境に喘ぐホテルの実情について改めてここでは触れないが、少しでも稼働率を上げるべく現場では努力が重ねられており、事実、ホテルの様々なアイディアが話題になってきた。中でも印象的だったのは帝国ホテルの1ヶ月36万円~サービスアパートメントのニュースである。帝国ホテル/36万円/ホテル暮らしというワードも相まって大きく情報拡散した。36万円ということは1泊換算で1万2千円となり付帯サービスの豊富さからもそのお得感の高さが注目された(※)。

※タイトル・本文にある他ホテルの価格も1泊あたり換算の表記も含むことを断っておく

帝国ホテル「30泊36万円」は高いかお得か?(瀧澤信秋/Yahoo!ニュース個人)

帝国ホテルのサービスアパートメントは即日完売になったというが(かくいう筆者も何度も電話したが撃沈)、その話題性の高さから他の高級ホテルからも帝国ホテルに追随するかのように長期滞在プランの発表が続出した。実際、即日完売する例、高い需要に支えられているケースなど、ホテルから「このような世相にあって助かっている」という声も聞こえてくる。

コロナ禍以前のサービスアパートメント

ホテルの長期滞在といえば“ホテル暮らし”とも表せるが、コロナ禍前におけるホテルの長期滞在について、インバウンド活況に沸いた頃のホテルが日々需給に応じてフレキシブルに料金を変動できる中で(需要が逼迫すると価格が釣り上がる)、価格が一定期間・一定に決まってしまう長期滞在は決して歓迎できないというホテルの声もあったことも触れておく。

他方、コロナ禍の影響で稼働が低迷する中にあって、長期利用に資するという点で着目された「サービスアパートメント」や「レジデンスホテル」であるが、コロナ禍以前から都市部を中心に散見した。身軽に入居できるという点では、市中でみられる短期契約マンションも彷彿とさせるものの、客室清掃や朝食の提供、フロント・コンシェルジュサービスなどホテルライクなサービス提供があるかどうかという点が異なるといえる。

近年は、外資系の「オークウッド」や「フレイザー」といった高級サービスアパートメントを展開するブランドが国内で存在感を示してきた。一般のホテルでも外資系=高級感をイメージするが、“サービスアパートメント”というワードのイメージからも洗練されたサービスや高級感をイメージする。また、人気ビジネスホテルブランドでもレジデンスタイプの出店がみられた。

帝国価格が基準に? ビジホブランドレジデンス35万円→20万円

各種レジデンスホテルについては、筆者個人としてもコロナ禍以前に何度か体験したこともあるが、高級タイプはもちろんのこと、ビジネスホテルブランドが手がける施設でも、客室面積や備品など、さすが長期滞在を前提としているだけのことはあった。ところで、当時筆者が取材したビジネスホテルブランドのタイプで月額35万円前後という設定だったが、それだけに帝国ホテルの36万円が業界に与えた衝撃の大きさは想像に難くない。

帝国ホテルが36万円なのにビジホブランドが35万円-事実くだんのビジホブランドレジデンスは月額20万円(定価35万円/朝食別途)の値下げキャンペーンを実施中であるが、その後、続々と登場した高級ホテルの長期滞在プラン価格設定は、まさに“帝国価格”が基準になっていると評せるだろう。

横浜・みなとみらい地区のシンボリックなホテルとして知られる「ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル」の「マンスリーステイプラン」は衝撃的だった。タイトルには切りよく“5千円”と書いたが、31連泊15万円なので1泊にすると5千円以下(27平方mのスタンダードクイーン)~になる破格プラン。無論、即完売(7~8月分利用分)したという(9月以降利用分は6月1日からの予約受付とのこと)。

都心に目を向けてみよう。西新宿の老舗シティホテルとして知られる「京王プラザホテル」の「“暮らす”@theHOTEL」プランは、2月22日から5月15日までの期間で30連泊21万円~と1泊あたり7千円の朝食付き長期滞在プランを打ち出した。こちらも高コストパフォーマンスということで話題となり即完売したという。

その他、こうした高級ホテル長期滞在プランは枚挙にいとまが無い。朝食、ラウンジ、駐車場などホテルにより特典も様々であるが、コロナ禍とホテルの情況を鑑みてもこうしたプランは引き続き注目されるだろう。ところで、完売や現時点で予約不可なホテル・プランを例示してきたが、まだ予約できそうな高級ホテルはないものかと探してみた。

いま予約できるお得プランは?

都市部の利便性を享受しつつリゾート感を満喫できるホテルとして人気の「ヒルトン東京お台場」月額24万円(1泊あたり約8千円)~なる価格を見つけ早速問い合わせてみた。「マンスリーレジデンス ODAIBA」というプランといい、朝食は付かないものの、駐車場無料、レストラン、温水プールやサウナ各種、屋外ジェットバスの利用は30パーセント引きとのこと。

屋外ジェットバス(筆者撮影)
屋外ジェットバス(筆者撮影)

最低価格の24万円とはいえ、対象客室は“ヒルトンルーム”で33平方mとかなり余裕がある(※)。高級ホテルといえば高層ビル上層階で窓の開閉もできないイメージであるが、確かこちらのホテルは都心ベイエリアにして全室バルコニーがあるはず。長期滞在にとってバルコニーがあるのは気分転換の際にかなり効用がありそうだ。

まだ積極的な情報拡散はしていないというが、外出が憚られる緊急事態宣言の中、まさに自宅代わりに、ホームオフィス代わりに利用する人々など利用者が増加しているとのこと。ホテルとしては初めてのプラン設定ということで、ゲストの声をフィードバックしつつさらにブラッシュアップしていくという。

※ワンランク上の“スーペリアデラックスルーム(40平方m/冒頭写真)”は33万円、通常泊まると1泊8万円という“テラススイート(66平方m)”は1ヶ月78万円の設定

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コロナ禍という状況が続く中、ホテルを取り巻く環境も激変している。ワクチン接種の進捗がもたらす変化に期待したいというホテルも多い。一方で、生活様式の変化は観光のスタイルも変えることだろう。いずれにせよ、どのようなカタチであれ観光は必ず復活する。当然にホテルの需要が高まれば一定価格で売り続けることはリスクになる。あの頃はこんな料金で体験できた、というのも昔話になるのだろうか。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

ホテル評論家の辛口取材裏現場

税込330円/月初月無料投稿頻度:月1回程度(不定期)

忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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