国家公務員総合職採用は焦っているのか
今日(2015年4月3日)の日本経済新聞朝刊に「就活 官民で争奪」と題する記事が掲載されました。
就活時期の後ろ倒しで、企業の選考時期と国家公務員総合職の官庁訪問(面接)が重複するため、「争奪戦」になるとのこと。
以下、一部を引用します。
「民間との併願はきつい」。東京大学教養学部の男子学生(22)は浮かない顔だ。5月の国家公務員試験に向けて勉強しながら、商社や金融など10社ほどに絞って就職活動を進めている。東大キャリアサポート課には学生から「官公庁訪問と企業の面接の日程が重なる。どうしたらいいか」といった相談が相次ぐ。
(中略)
これまで官民を併願する学生は企業から内定を得たうえで公務員試験に挑むことができた。しかし16年卒は面接中心の官庁訪問の日程が企業の選考と重なる。14年度の国家公務員の受験者数は約2万1千人と10年前の6割程度。人事院の中嶋範子参事官補佐は「企業にどれだけ流れるか読めない」と話す。
民間企業の選考時期開始は8月1日、国家公務員総合職の官庁訪問(実質的な面接)開始は8月5日です。
この点から重複して、争奪戦になるとのことです。
多くの賢明なる読者・学生はご存じと思いますが、的外れ記事の典型例です。
民間企業の選考開始は日本経団連の取決めで、8月1日となっています。
が、それを守るかどうかは別問題です。
リクルートキャリア調査では、3月時点で、合計55.2%の企業が「7月以前に内定を出す」と回答しています。
7月?
8月1日選考開始なのに、それより前に内定出しを始める企業が半数以上あるのです。
私が取材した実感では、経団連加盟企業も含め、8~9割の企業は7月以前に実質的には選考を終了させているでしょう。
経団連加盟企業だと、あり得るのは次のパターン。
1:7月末までに実質的な選考を終了させ、8月1日に最終選考
2:7月末までに実質的な選考を終了させ、8月1日~3日に最終選考(とその前の選考)
3:7月末までに実質的な選考を終了させ、8月1日から1週間程度かけてさらに選考実施。ただし、8月の選考ではほぼ落ちない。
4:7月末までに実質的な選考を終了させ、8月1日から2週間程度かけてさらに選考実施。ただし、8月の選考ではほぼ落ちない。
どうも、人事院側も、この日程パターンを考えているとしか思えません。その理由が、採用日程と官庁訪問の開始日です。
●2014年度
申込受付期間:4月1日~4月8日
第1次試験日:4月27日
第1次試験合格者発表日:5月9日
第2次試験日(筆記):5月25日
第2次試験日(政策課題討議・人物):
・院卒者試験6月4日~6月13日
・大卒程度試験5月27日~6月13日
最終合格者発表日:6月23日
官庁訪問開始:6月25日
●2015年度
申込受付期間:4月1日~4月8日
第1次試験日:5月24日
第1次試験合格者発表日:6月9日
第2次試験日(筆記):6月28日
第2次試験日(政策課題討議・人物):7月2日~7月17日
最終合格者発表日:7月31日
官庁訪問開始:8月5日
申込期間は同じですが、就活後ろ倒しを理由に1次試験以降は1か月ずれています。他、2次試験(政策課題討議・人物)が2014年度までは院卒者と大卒者は別でしたが今年は同じになりました。
1か月ずれた、との説明ですが、細かく見ていくと、2014年度とは変わっている部分があります。
まず、2次試験の筆記と政策課題討議・人物ですが、2014年度は中1日ですぐ実施しています。しかし、2015年度は中3日となりました。
さらに2次試験が終了してから、最終合格者発表は、2014年度は10日後。平日だけみると6日しかありませんでした。
しかし、2015年度は14日後。平日だけみると8日とこちらも増えています。
もし、2014年度と同じく、「2次試験の筆記と政策課題討議・人物」が中2日、2次試験から最終合格者発表までが10日後だとすると、7月27日には最終合格者発表ができたはずです。
さらに疑問となるのは、官庁訪問の開始日。当初、この日程は発表されず、あとになって公表されました。
2014年度と同じ中1日であれば、8月2日開始となります。
しかし、8月2日は日曜、となると、官庁訪問開始は月曜の8月3日となりそうですが、実際には8月5日です。
そもそも、2014年度の日程から単純に1か月ずらすだけで間隔が昨年と同じなら、官庁訪問開始は7月29日ないしその前後に当たっているはずです。
なぜ、今年になって、微調整をして、1か月ずらすのではなく、8月5日という中途半端な日程になったのでしょうか。
考えられる理由は1つしかありません。
経団連加盟企業の選考が長くても8月4日まで終わると読んで、官庁訪問開始を8月5日にすれば、そう大きくバッティングしない。
ま、4か月後、どうなるか、楽しみです。
しかし、別に誤報とまでは言いませんが、
「争奪戦のあおりを受ける中小企業では来春の採用を断念する動きも出ている」
これ、初めて聞きました。基本的にはどの企業も採用意欲が強く、断念するなんて話、ほぼ聞かないのですが…。
まあ、この辺も別の機会にでも。