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米国小売り大手Target、アンネ・フランクのコスチューム販売でネット炎上し商品削除

佐藤仁学術研究員・著述家
(Targetのサイトより)

 アメリカの小売り大手TargetがECサイトでアンネ・フランクのコスチュームを販売していた。第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。アンネ・フランクはユダヤ人だったために、ナチスからの迫害を逃れてオランダのアムステルダムの隠れ家で約2年間、身を潜めて生活していたが、密告されて1945年にベルゲン・ベルゼン強制収容所で病気で死亡した。アンネが隠れ家生活で思いを綴った日記を戦後、ホロコーストから生き延びた父オットー・フランクが「アンネの日記」として出版し、現在でも世界中で多くの人に読まれている。アンネ・フランクはホロコーストを象徴するような人物で、欧米やイスラエルではホロコースト教育が行われることが多く、小学生の必読書にもなっている。

アンネ・フランク(アンネ・フランクハウス提供)
アンネ・フランク(アンネ・フランクハウス提供)
販売されていたアンネ・フランクのコスチューム(Targetより)
販売されていたアンネ・フランクのコスチューム(Targetより)

「あなたのお子さんは第二次世界大戦のホロコーストの勉強をしますか?」

 そのアンネ・フランクのコスチュームと称した衣装を小学生向けに販売していた。そしてサイトには「あなたのお子さんは第二次世界大戦のホロコーストの勉強をしますか?この衣装なら、1940年代に戻れます。当時の衣装を着ることは学習にとっても重要です。第二次世界大戦時の少女の衣装を子供たちが着ることは勉強にもなります」と書かれていた。真面目な理由でアンネ・フランクの衣装を販売していたようだが、アンネ・フランクのコスチュームということで「ホロコーストの犠牲者に対して失礼である」とネットでは大炎上し、現在ではサイトから削除された。同社スポークスマンが「もう現時点ではサイトにありません」と語っていた。

 ホロコーストやナチスドイツに関するファッションや商品は販売されると必ず炎上する。ユダヤ人が収容所で着ていた囚人服に似ていたり、ユダヤ人が差別されるために着用を義務付けられた黄色のダビデの星をつけた服など露骨なファッションもある。そのようなファッションは「ホロコーストの犠牲者に対する敬意がない」「生存者や家族が見たら、どのような思いをするのか考えよう」と毎回炎上する。また囚人服やダビデの星など露骨な反ユダヤ的なファッションについては世界中のユダヤ団体やホロコースト博物館、著名人らも反対や商品の撤収をSNSで呼びかけることから、いっそう話題になる。だが、それでも懲りずにこのようなアンネ・フランクの衣装のようなものが登場する。毎回「ホロコースト関連のファッションを販売する」→「ネットで炎上し、拡散される」→「商品を撤収したり、謝罪する」の繰り返しで、もう欧米では過去に何回もあった。

 ナチスドイツ関連のコスチュームは欧州の国によっては違法である。だがホロコーストをテーマにしたファッションは、必ず炎上するので、それによって拡散し、話題になるので知名度を高めたり、サイト内の他の商品を見てもらおうとマーケティング目的でやろうとしているものもある。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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