将棋人口は500万人、囲碁人口は150万人に減少――ファンを増やす「妙手」はあるのか
10月31日に発行された「レジャー白書2022」(日本生産性本部・編集発行)によると2021年の将棋人口は前年の530万人から500万人、囲碁人口も前年の180万人から150万人と減少した。
2020年に始まったコロナ禍の影響で将棋も囲碁もアマチュアが参加する大会やイベントが相当数中止となり、実際に盤をはさんで対局するファンの数が減っている傾向は変わっていない。
将棋界は「観る将」が増加か
コロナ禍に対応して将棋も囲碁も無料で視聴できるオンライン動画コンテンツが多数提供されたり、昨年あたりから対面イベントが徐々に復活したりと明るい材料はあっても統計のデータを見る限り、参加人口の減少幅を上回るほどの効果はなかったといっていいだろう。
時間の許す範囲で対局場やイベントに足を運び、インターネット中継はほぼ毎日視聴している筆者の印象では、将棋は指すことを中心とする実戦重視のファンから、エンターテインメント性の強い「AbemaTV将棋チャンネル」を好んで視聴するような「観る将」と呼ばれる、将棋をほとんど指さずに対局中継や棋士の動向に注目し楽しむファン層が増えてきたように感じる。
レジャー白書は実際にその遊戯をプレイした人を統計の根拠とするため、こうしたファン層はあまりカウントされていないはずだ。
弱冠20歳で将棋界の頂点に君臨する藤井聡太五冠(竜王・王位・叡王・王将・棋聖)のメディアへの露出頻度やスポンサーの増加などを考えると、将棋界の将来は決して暗くないと思われる。
若いファン増加が必須の囲碁界
対照的に厳しいのは囲碁界だ。同白書によれば2012年の400万人と比べて遊戯人口は半分以下となり、さらに性・年代別構成比は男性70代の占める割合がトップで31.3%(2番目は男性20代の16.7%)と高齢化が著しい。日本人の平均寿命は80歳代で世界に誇る長寿国とはいえ、若年層への普及が進まないとあと数年で囲碁ファンが100万人を下回る可能性がある。
プロ棋士の数も将棋と比べ囲碁は2倍以上と多く、新聞社やテレビ局など主たるスポンサーの契約金総額(金額は非公表)が将棋と囲碁で大きな差のない現状、公式戦の対局料だけで生活できる「トーナメントプロ」は年々減っていくはずだ。
現状打破に意欲的な囲碁棋士はユーチューブなどの動画サイトで講座を開いたり、普及の拠点である碁会所に積極的に足を運んで指導碁を打ったりファン層の拡大に熱心だがその数は限定的で、抜本的な改革を行わないと10年もしないうちに日本の囲碁プロ制度自体が立ち行かなくなる危険性があると筆者は心配している。