STOP!「コロナ離婚」~夫婦の危機を乗り切る「3つ」の義務
東京など7都府県を対象に「緊急事態宣言」が行われたことを受け、宣言の内容を記載した官報が7日夜、東京・港区の国立印刷局の掲示板に張り出され、宣言が発効しました。
この宣言によって、多くの人が外出自粛やテレワークを強いられることが予想されます。そのことで、夫婦が一緒に過ごす時間が長くなり、しかも先行き不安も重なって(しかも、子どもも学校に行けない)、「コロナ離婚」という言葉が出るなど、夫婦げんかなどのトラブルが増えているようです。
そこで、今回は、そもそも「結婚」とは何であるかを、民法の観点から見てみたいと思います。
結婚をすると「義務」が生じる
結婚をすると付き合っていた時とガラッと状況が変わり、いくつか法的「義務」が生じます。その中でも、重要なのは、「同居」「協力」そして「扶助」の3つの義務です(民法752条)。
民法752条(同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居し、お互いに協力し扶助しなければならない。
「同居」は義務
同居義務は、結婚の成立、つまり役所に婚姻届を届出た時から発生し、結婚の解消まで存続します。この同居とは、夫婦としての同居であって、単なる場所的な意味ではありません。同じ屋根の下でも、たとえば障壁を設けて生活を別にするのは同居ではありません。
したがって、緊急事態宣言によって、夫や妻と過ごす時間が増えても、不満を言ってはいけません。なぜなら同居は「義務」だからです。もし、パートナーに不満があっても、「同居は法的義務だ」と自分に言い聞かせてグッとこらえましょう。
「協力」するのも義務
同じく、夫婦は協力し合わなくてはなりません。夫婦の協力義務は、同居義務と同じく、夫婦生活を営むための本質的義務です。今は、新型コロナウイルスの蔓延によって緊急事態宣言が行われるといった非常時です。そんな時こそ、この協力義務を思い出てみましょう。協力できることは、山ほどあるはずです。
「扶助」するのも義務
「扶助義務」とは、相互的な経済援助を意味します。夫婦は同居して共同生活をするため、パートナーが要扶養状態に陥った場合には、パートナーの生活を自分の生活水準と同じように保持(キープ)する義務があります。このことを「生活保持義務」と言います。
この「生活保持義務」の提唱者である現代家族法の創始者である中川善之助博士(1897-1975)は、生活保持義務を、「最後の一片の肉、一粒の米までをも分け食らうべき義務」であると表現しています。夫婦が緊密な関係であることを想定しているのを端的に表している言葉です。同居、協力義務に負けず劣らず、この非常時にグッとくる義務です。
お互いが選んで結婚した
このように、結婚すると3つの義務が生じます。今となっては「面倒なことを背負い込んだ」とお嘆きの方もいるかもしれません。しかし、パートナーを選んだのは、他の誰でもありません。あなた自身です。そして、あなたのパートナーもあなたを星の数ほどあるパートナーの中から、あなたを選びました。そして、お互いが合意して結婚したのです。そうです、結婚は、お互いの合意のみで成立するのです(憲法24条1項)。
憲法24条1項
婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
縁あって出会い、そして、お互いの合意で結婚し、気づかぬうちに同居、協力、扶助の義務を課せられたふたり。確かに、長い時間、一緒にいて、しかも、この難局下です、ストレスがたまるのは当たり前でしょう。そんな時に、ぜひ、今日ご紹介した「同居」「協力」そして「扶助」の3つの義務を思い出してみてください。グッとこらえる力になるかもしれません。
この厳しい状況も、「夫婦の思い出」のひとつとして懐かしむときがきっとくるはずです。その時を一日でも早く迎えることができるように、夫婦が協力して新型コロナウイルスに正しく立ち向かっていきましょう。