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台湾出身の張育成がSNSに投稿したメッセージの内容から垣間見られる米国社会の病巣

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
SNSにアジア人蔑視を批判するメッセージを投稿した張育成選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【台湾出身の張選手がTwitterにメッセージを投稿】

 クリーブランドに所属する台湾出身の張育成(米国ではユー・チャン)選手が現地時間の4月13日朝方にTwitter上に投稿したメッセージが、注目を集めている。

 メッセージの内容は、以下の通りだ。

 「正しいやり方で言論の自由を遂行して欲しい。自分はポジティブ、ネガティブ関係なくあらゆるコメントを受け入れるつもりです。だが人種差別関連は絶対に受け入れられません。

 すべての人に感謝します。そして皆さんを愛しています」

 この投稿には画像が添付されており、そこには張選手の元に届いた辛辣なメッセージの内容が記されている。その中には明確な人種差別的内容も含まれている。

 そしてメッセージの最後に、「StopAsianHate」と言う言葉がハッシュタグ付けされている。

【張選手の悪送球でチームがサヨナラ負け】

 張選手の元にこのような悪質なメッセージが届いたのには、ある理由があった。

 前日に行われたホワイトソックス戦のことだった。3対3の同点で迎えた9回裏、ホワイトソックスは9回1死一、二塁と、1打サヨナラ勝ちの好機を迎えていた。

 ここでニック・ウィリアムス選手が放ったゴロは、一塁を守る張選手の元へ飛んでいき、しっかり捕球したまではよかった。

 併殺を狙った張選手は迷わず、二塁ベースで待ち構える遊撃手に送球したのだが、不幸にもそのボールが、二塁へ向かう走者ヤスマニ・グランダル選手の頭部に当たってしまったのだ。

 ボールが三遊間方向に転がっている間に、二塁走者のニック・マドリガル選手はホームに生還し、クリーブランドはサヨナラ負けしてしまった。

 公式記録は、一塁悪送球。張選手が戦犯扱いになってしまったため、それを責める人たちから悪質なメッセージが送られてきたというわけだ。

【ドジャースはアジア系住民蔑視撲滅を呼びかけ】

 今回張選手が人々に向けメッセージを投稿した背景にあるのは、昨年から米国内で拡大し始めているアジア系住民に対する差別傾向だ。

 新型コロナウイルスの感染が拡大していく中、当時のトランプ政権が感染ルートは中国だと一方的に断定するなどして、米国内で的外れなアジア系住民への攻撃が広がっていった。

 こうした状況を受け、日本人の母を持つことで知られる、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督がスプリングトレーニング期間中に声を上げ、アジア系住民の蔑視を危惧するともに、アジア系住民への支持を表明していた。

 さらにアジア系選手を積極的にリクルートしてきたドジャースも、アジア系住民への蔑視、攻撃に反対する声明を発表している。

【今後も不振のアジア系選手が標的になる可能性も】

 もちろんすべての米国人がアジア系住民を敵視しているわけではない。またMLBに在籍しているすべてのアジア系選手たちが、常に攻撃を受けているわけでもない。

 ただ今回の張選手のように、ふとしたきっかけで人種差別的な攻撃を受ける可能性が、現在の米国にはあるということだ。

 ファンの期待に応えられないアジア系選手たちが、今後もこうした攻撃の対象になる可能性を否定できない。

 1日も早く彼らが不安なくプレーできる環境になって欲しいと願うばかりだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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