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永瀬九段と菅井八段、羽生九段の3人が挑戦権争い――第73期ALSOK杯王将戦リーグ最終日展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
挑戦権争いでわずかにリードの永瀬拓矢九段(筆者撮影)

 藤井聡太王将(21)=竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・棋聖への挑戦権を争う第73期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社・毎日新聞社主催)は11月22日、東京都渋谷区「将棋会館」で挑戦者決定リーグ最終戦が一斉に行われる。

 王将戦リーグは定員7人、ここまでトップを走るのが4勝1敗の永瀬拓矢九段(31)と菅井竜也八段(31)、この2人に加えリーグ全日程を終えている羽生善治九段(53)が4勝2敗で続いている。

 永瀬九段(順位2位)は佐々木勇気八段と、菅井八段(順位5位)は近藤誠也七段とそれぞれ対局する。

 王将戦リーグは同星の場合順位上位2人によるプレーオフと定められているので、永瀬九段と菅井八段がともに勝てば両者によるプレーオフ。どちらも敗れた場合のみ、昨年の挑戦者で順位1位の羽生九段と永瀬九段のプレーオフが行われる。

 最終戦の勝敗と展開を、データを基に予想してみた。

上位2人充実でプレーオフ濃厚か

<永瀬九段の最近10局>(対戦相手の肩書きは対局当時 未放映のテレビ対局を除く)

10月2日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対伊藤匠七段 ○

10月6日 ALSOK杯王将戦リーグ

対菅井八段 ○

10月11日 王座戦五番勝負第4局

対藤井聡太竜王・名人 ●

10月17日 順位戦A級

対豊島将之九段 ●

10月21日

将棋日本シリーズ

対藤井八冠 ●

10月24日

ALSOK杯王将戦リーグ

対渡辺明九段 ○

10月27日

ALSOK杯王将戦リーグ

対豊島九段 ○

11月3日

ALSOK杯王将戦リーグ

対近藤誠也七段 ○

11月8日

順位戦A級

対広瀬章人八段 ○

11月14日

ALSOK杯王将戦リーグ

対羽生九段 ●

<佐々木勇気八段の最近10局>(対戦相手の肩書きは対局当時)

9月11日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対糸谷哲郎八段 ●

9月22日 順位戦A級

対広瀬章人八段 ○

9月29日 ALSOK杯王将戦リーグ

対豊島将之九段 ●

10月4日 ALSOK杯王将戦リーグ

対渡辺明九段 ○

10月10日 ALSOK杯王将戦リーグ

対羽生九段 ●

10月19日 順位戦A級

対中村太地八段 ●

10月27日 ALSOK杯王将戦リーグ

対近藤誠也七段 ●

11月1日 竜王戦2組昇級者決定戦

対斎藤慎太郎八段 ●

11月10日 ALSOK杯王将戦リーグ

対菅井八段 ●

11月16日 順位戦A級

対菅井八段 ●

 直近10局を比較すると永瀬九段は6勝4敗、佐々木八段は2勝8敗と明らかに調子の差があり、直接対決も永瀬九段が5勝1敗とリード。今年秋の王座戦五番勝負で挑戦者の藤井竜王・名人(当時)を大いに苦しめた永瀬九段は充実しており挑戦権に最も近いと見る。

<菅井竜也八段の最近10局>(対戦相手の肩書きは対局当時)

10月2日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対本田奎六段 ●

10月6日 ALSOK杯王将戦リーグ

対永瀬王座 ●

10月12日 順位戦A級

対広瀬章人八段 ○

10月18日 竜王戦2組昇級者決定戦

対糸谷哲郎八段 ○

10月26日 ALSOK杯王将戦リーグ

対羽生九段 ○

10月30日 ヒューリック杯棋聖戦2次予選

対大石直嗣七段 ●

11月3日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対畠山鎮八段 ○

11月7日 ALSOK杯王将戦リーグ

対豊島将之九段 ○

11月10日 ALSOK杯王将戦リーグ

対佐々木勇気八段 ○

11月16日 順位戦A級

対佐々木八段 ○

<近藤誠也七段の最近10局>(対戦相手の肩書きは対局当時)

9月28日 順位戦B級1組

対佐藤康光九段 ○

10月4日 竜王戦3組昇級者決定戦

対大橋貴洸七段 ○

10月11日 ALSOK杯王将戦リーグ

対豊島将之九段 ○

10月16日 ヒューリック杯棋聖戦2次予選

対高崎一生七段 ●

10月19日 順位戦B級1組

対増田康宏七段 ●

10月27日 ALSOK杯王将戦リーグ

対佐々木勇気八段 ○

11月1日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対佐藤秀司八段 ●(千日手指直し)

11月3日 ALSOK杯王将戦リーグ

対永瀬九段 ●

11月9日 順位戦B級1組

対羽生九段 ●

11月16日 ALSOK杯王将戦リーグ

対渡辺明九段 ○

 直近10局の比較では菅井八段7勝3敗、近藤七段5勝5敗と差があり、直接対決は菅井八段の3勝0敗。永瀬九段とともに菅井八段が1敗を守って挑戦権争いがプレーオフに持ち込まれる可能性は高いと思われる。

角換わりと振り飛車の出現可能性大

 王将リーグは抽選時に先後が決定しており、それぞれ永瀬九段(先)-佐々木八段、菅井八段(先)-近藤七段となっている。

  現代将棋では圧倒的に先手番が戦法の選択権を握ることが多いが、最近の採用率から先手番二人のうち永瀬九段は角換わりに誘導すると思われ(相居飛車のとき8局連続で採用)、菅井八段は三間飛車あるいは中飛車で臨む可能性が高そうだ。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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