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子どもの乾癬治療、年齢に応じた対応が鍵!豪の専門家が提言

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【小児乾癬の特徴と診断】

大人の尋常性乾癬と比べ、小児の乾癬は臨床症状や発症のきっかけが異なることがあります。乳児では「おむつかぶれ」のように股間の皮膚に境界明瞭な紅斑が現れることが多く、幼い子どもでは頭皮、顔面、間擦部に薄くて小さな鱗屑を伴う紅斑が見られます。一方、思春期の子どもでは成人と同様に境界明瞭な紅色の丘疹や局面に銀白色の鱗屑を伴うのが特徴です。

小児乾癬の診断には、年齢に応じたこうした臨床症状の違いを考慮することが大切です。ただし、大人の乾癬の重症度評価に使われるPASI(乾癬の重症度と範囲の指数)やBSA(体表面積)は、小児、特に10歳未満の子どもには適さない可能性があります。将来的には小児特有の評価尺度の開発が望まれます。

【小児乾癬治療の目標】

オーストラリアの専門家パネルは、小児乾癬の治療目標を議論し、新たなコンセンサスを発表しました。それによると、小児乾癬の治療目標は大人の場合と概ね一致するものの、年齢に応じた微妙な違いを考慮する必要があるとのことです。

例えば幼い子どもの場合は症状の緩和に重点が置かれますが、年長の子どもでは見た目の改善がより重視されるかもしれません。また、ある部位の乾癬がQOL(生活の質)に与える影響は、本人の身体の意識レベルによっても変わります。専門家らは、小児乾癬の治療目標には重症度だけでなく、本人と家族への心理社会的な影響を含めるべきだと提言しています。

【小児乾癬の治療戦略】

小児乾癬の治療では、年齢、QOL、重症度、乾癬の部位とタイプ、忍容性、安全性、本人の好みなど、さまざまな要因を考慮する必要があります。オーストラリアの専門家パネルは、重症の小児乾癬には初めから生物学的製剤を使うべきだとの見解で一致しました。早期に乾癬の免疫学的プロセスに介入することで、長期的な病状の負担を減らせる可能性があるためです。

ただし、小児乾癬の生物学的製剤の使用経験はまだ限られているのが現状です。小児乾癬患者では乾癬性関節炎、メタボリックシンドローム、メンタルヘルスの問題など、併存疾患のリスクが高いことも知られています。専門家らは、併存疾患のある小児乾癬患者には多職種チームによるアプローチが必要だと指摘しています。

以上、オーストラリアの専門家が小児乾癬の特徴と最新の治療指針について論じた内容をお伝えしました。乾癬は皮膚の慢性炎症性疾患ですが、小児の場合は年齢によって症状や治療の優先順位が異なります。乾癬の子どもの診療に携わる医療者には、成長段階に応じたきめ細やかな対応が求められると言えるでしょう。

参考文献:

Foley P et al. Australian consensus: Treatment goals for moderate to severe psoriasis in the era of targeted therapies – Considerations for paediatric patients. Australas J Dermatol. 2024. https://doi.org/10.1111/ajd.14303

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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