『七夕』はなぜ『たなばた』と読む? “衣を織る人・棚機津女”とは?
今日、7月7日は七夕(たなばた)ですね。短冊に願い事を書いたり、夜空を見上げたり、風情を感じる時間を過ごせる時期です。筆者の住む関東エリアは晴れているので、子どもたちと夜に「織姫星(ベガ/こと座)と彦星(アルタイル/わし座)が見えるといいなぁ」と思っています(はくちょう座のデネブと合わせて夏の大三角ですね!)。
さて、この「七夕」という言葉、なぜ「たなばた」と読むのでしょう。「七」も「夕」も、どちらも「たな」「ばた」とは読まないのに、なぜ、「七夕」と書いて「たなばた」と読むのでしょうか。
この記事では、執筆記事1万本以上、取材経験5000回以上の元テレビ局芸能記者で現・フリー記者のコティマムが、『ニュース記事に使われている何気ない言葉』を解説。今回は季節に合わせ、”七夕”の読み方についてご紹介します。(構成・文=コティマム)
実は当て字だった「七夕」の読み方
筆者の小学生の娘でも読むことができる、簡単な漢字「七」と「夕」。全家研の『小学新漢字辞典』でも、「七」は「なな、ななつ、なの、シツ、シチ」、「夕」は「ゆう、セキ」と解説されています。
この二文字を合体させても、「ななゆう」「シチゆう」「ななセキ」「シチセキ」にはならず、「たなばた」という読み方になります。
娘は最初から「七夕=たなばた」と習っているので、この二文字が並んでも「たなばた」と自然に読むことができますが、「なぜ七と夕で『たなばた』なんだろうね」と問いかけると、「ホントだ……。『たな』でも『ばた』でもないのに何でだろう」と疑問に感じていました。
じつはこの「七夕」という読み方。当て字なのです。
日本古来の呼び名『棚機津女(たなばたつめ)』
七夕というと、1年に1度、七夕の夜に織姫と彦星が再会できるという中国の「七夕伝説」が有名です。中国では、織姫と彦星の逢瀬を祝うと同時に、織姫にあやかり”機織り(はたおり)”などの技術の上達を願い、”乞う祭り(奠)”という意味で『乞巧奠(きっこうでん)』と呼ばれる儀式が催されるようになりました。
この『乞巧奠』が日本に伝わったのは、古く奈良時代頃。お盆を迎える行事として7月7日に行われるようになりました。日本ではもともと「七夕」は「しちせき」と、そのままで読んでいました。
そして日本にも、もともと古来の伝説がありました。織物を作る機械「棚機(たなばた)」を扱う女性のことを『棚機津女(たなばたつめ)』と呼んでいたのです。棚機津女は、神様を迎えるために水辺に設けた機屋に入り、機織り機(棚機)で神様に捧げる衣・神御衣(かんみそ)を織りあげるのです。この日本の「棚機津女」と、中国の機織りをする織姫が結びつき、「七夕」に「たなばた」という文字が当てられるようになりました。
ちなみに、記者たちが原稿を書く際に参考にする記者ハンドブックなどでは、難読漢字や常用外漢字は「平仮名にする」などのルールがあります。「七夕」も本来は難読ですが、「慣用表記として使うもの」という意味で「慣」マークがついています。そのため原稿でも、「たなばた」と平仮名に直さず、「七夕」と漢字で書くことができるのです。
まとめ
当たり前のように使っている「七夕」という言葉。簡単な漢字の奥に、実は日本古来の呼び名が隠れていたのですね。
そんな”言葉”の由来もちょっと片隅に置いて、今夜は星空を見上げてみませんか。織姫と彦星、そして天の川が見えるといいですね。ちなみに筆者の娘の今年の願い事は、「ママのねこアレルギーがなおりますように」でした。皆さんの願い事はなんですか?
言葉に関する記事は、「團十郎さんが語った「あの日の空」は唐紅?それとも大禍時?―6月は空が赤い季節」もご覧ください。美しい色の表現について書いています。スマホからご覧の方は、プロフィールからフォローしていただくと最新記事の見逃しがなくおすすめです。リアクションボタンもプッシュしていただけると、励みになります!今後も記者目線で、「ちょ~っとだけタメになる(?)」言葉解説をつづっていきます。
※参照:『広辞苑』(岩波書店)、『日本国語大辞典』(小学館)