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明るい中で眠ると糖尿病になりやすい?暗いところに比べ67%もリスク増【最新情報】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

日本人の5~10人に1人が糖尿病の疑い

健康診断を受けると「糖尿病」が気になりませんか?

無理もありません。日本では2019年の時点で、男性の5人に1人、女性でも10人に1人に「糖尿病」の疑いがあることが分かっています。

そして医療従事者たちはこの数字に大きな警戒感を抱いています。

なぜでしょう。

糖尿病が怖いのは脳卒中や心筋梗塞を引き起こすから

その理由は、糖尿病を放置すると脳や心臓に血液を供給している血管がダメになるからです。その結果、「脳卒中」、あるいは「心筋梗塞」といった、一つ間違えば命を落としてしまうような疾患のリスクが上昇します。

下の図は九州の久山町という場所の住民およそ2500人を8年間観察した結果です。

糖尿病のある人はない人に比べ、脳卒中のリスクが2〜4倍、冠動脈疾患*リスクも同程度、上昇していました。

万国著作権条約にのっとり引用。
万国著作権条約にのっとり引用。

冠動脈疾患:心臓の壁に血液を供給している血管(冠動脈)に異常が生じ、十分な血液が流れない病気。血液が途絶すると酸素や栄養を受け取れない心臓の壁(心筋細胞)は死んでしまい(心筋梗塞)、血液が流れていても十分な量がないと、栄養・酸素が不足し心筋細胞は傷害される(狭心症)。

糖尿病は予防したい、だけど・・・

ですから糖尿病はできるなら、予防するのが一番です。

とは言え「糖尿病の予防」というと「食べ過ぎるな」とか「運動しろ」などの苦しい制限を思い浮かべ、「それはちょっと」と腰が引けてしまうのではないでしょうか。

そこで今回の本題です。

眠るときに明かりをしっかり消すだけで、糖尿病になるリスクを下げられるかもしれません

豪州豪州・モナシュ大学のダニエル・P・ウィンドレッド氏たちが医学学術誌「ランセット地域医療・欧州」で報告した論文をご紹介します [文末文献1] 。

8万5千人を8年観察

ウィンレッド氏たちが今回調べたのは、40歳以上で糖尿病のない英国住民、およそ8万5千人です。

まず手首装着型の装置を使って、24時間を通した光への曝露状況の記録を1週間続けました。

そしてその後およそ8年間、これらの人たちの2型糖尿病発症状況を調べ、「光にさらされる時間」と「糖尿病になる危険性」の関係を探ったのです。

明るいところで眠る人は糖尿病になりやすかった

その結果、意外な事実が明らかになりました。

眠っている時間(0時半〜朝6時)の環境光が明るいほど、2型糖尿病になる危険性が高くなっていたのです。

グラフをご覧ください。

万国著作権条約にのっとり引用
万国著作権条約にのっとり引用

一番暗かった部屋に比べ、最も明るかった部屋では2型糖尿病になるリスクが相対的に67%増えていました(1.67倍)。

逆に考えれば、眠るときに周りを暗くしておけば、2型糖尿病になる可能性を下げることができるかもしれません。

体内リズムと

もちろんこの研究からは、「眠るときの明るさ」と「糖尿病のなりやすさ」の間に因果関係があるかどうか、断言はできません。明るい部屋で寝る人たちに共通する何らかの要因が、糖尿病のリスクを上げている可能性も否定できないからです。

しかしウィンドレッド氏たちは「因果関係がある」と考えています。

すなわち、「夜間明るいと体内リズム(時計)が狂い、その結果、血糖値が上がって糖尿病になりやすくなる」というものです。

そしてこのような考えは、多くの研究に裏付けられています [文末文献2] 。

また「眠りが中断されると血糖値が上がりやすい」こともすでに分かっています [文末文献3] 。

夜間照明が明るすぎると夜中に途中で目が覚めてしまうので、それが糖尿病の糖尿病のリスクを上げている可能性があるという訳です。

いずれにせよ、糖尿病になりたくなければ、眠る時の照明を十分に暗くして、損はないはずです(電気代も節約できますし)。

「血糖高め」の方は試されてはいかがでしょう?

まとめ

いかがでしたか?

「夜間の照明が明るいと2型糖尿病になりやすい」という論文のご紹介でした。

日々、医学論文を読んでいて思うのですが。まあよくもこんな関係を調べてみようと思いつくものです。研究者の頭の中って面白いですね。

睡眠関連では次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。

今回も最後までお付き合いありがとうございました。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. 夜間照明が明るい人は2型糖尿病になりやすい
  2. 体内リズムの乱れで血糖値は上がる
  3. 眠りが中断されると血糖値が上がる

本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性も皆無ではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁。日本医学ジャーナリスト協会会員(含筆名)。

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