久保建英ら「東京五輪世代」がA代表で序列を上げるために必要なことは?
パナマ戦を糧に重要なメキシコ戦へ
新型コロナウイルスの影響で紆余曲折を強いられた2020年の日本代表活動。11月のパナマ・メキシコ戦がラストとなるだけに重要度が高い。13日のパナマ戦は3バックで戦い、南野拓実(リバプール)のPK1本で辛くも1-0で勝利したが、前半は相手に押し込まれ、5バック気味になる時間帯が長く、停滞した状況を強いられた。
「やっぱり問題は前半ですよね。相手がいい状態の時にどのようなサッカー、どのような連動ができるのか…というのは、自分たちの課題だと思います。プレッシャーがない時はみんな絶対にいいプレーができるけど、プレッシャーがある時にどういう崩しができて、どういう連動性が作れるのか。ここは課題だと思います」とA代表歴代単独2位となる123試合出場を記録した長友佑都(マルセイユ)も厳しい表情で語っていた。その足踏み状態から抜け出し、自分たちの形をしっかりと作っていくことが17日の次戦・メキシコ戦、そして2021年3月に再開される予定の2022年カタールワールドカップアジア予選での重要テーマになるだろう。
成長の跡を示した久保、三好、板倉
こうした中、パナマ戦では久保建英(ビジャレアル)、三好康児(アントワープ)、板倉滉(フローニンゲン)の東京五輪世代3人が先発。後半途中から柴崎岳(レガネス)に代わって中山雄太(ズウォレ)もプレーした。久保は先制弾につながる南野へのスルーパスを供給。彼自身が目標に掲げていた「ゴールに直結する仕事」を果たし、A代表10試合目にして最も自分らしい感覚でプレーしたように映った。三好も「タケと拓実君とは感覚的に似ている部分は感じている」と話したが、3人が近い距離で絡んでいる時はいい形ができていた。
最終ラインの板倉にしても、持ち前の視野の広さを生かしたロングフィードを何本か前線に入れたし、対人の部分でも成長の跡を示した。中山に関しては出場時間が短く評価しづらい状況だったが、10月のカメルーン・コートジボワール2連戦でボランチと左サイドバックとして十分やれることを証明している。すでにA代表で主力の地位を勝ち得ている冨安健洋(ボローニャ)を含め、徐々に東京世代の勢力が拡大しつつあるのは確か。これは「世代交代」「若返り」を掲げる森保一監督にとっては前向きな要素と言っていい。
A代表の主軸への階段を駆け上がった過去の五輪世代に
しかしながら、東京五輪が1年延期になり、本来であれば今の時期は最終予選の真っ只中。彼らはA代表の主軸になっていなければならないタイミングだ。過去の代表を振り返っても、直近の2018年ロシアワールドカップアジア最終予選では、2016年リオデジャネイロ五輪世代の久保裕也(シンシナティ)が台頭。短期間ではあったが、本田圭佑(ボタフォゴ)から定位置を奪う勢いを見せていた。最終予選終盤になると井手口陽介(G大阪)や浅野拓磨(パルチザン)もレギュラーを奪取。ロシア切符を手にした2017年8月のオーストラリア戦(埼玉)では彼らが揃ってゴールを挙げている。
さらに遡れば、2002年日韓ワールドカップのトルシエジャパンは23人中13人が2000年シドニー五輪世代だった。同大会の主力だった宮本恒靖(G大阪監督)、松田直樹、中田浩二(鹿島CRO)、稲本潤一(相模原)、中田英寿、柳沢敦(鹿島ユースコーチ)らは五輪本大会経験者。落選した中村俊輔(横浜FC)や高原直泰(沖縄SV)らを含めて、2000年頃から継続的に試合に出ていた。若いタレントの宝庫だったのは間違いない。
いち早くチームを勝たせる存在になるべき
長友ら2008年北京五輪世代にしても、2010年南アフリカワールドカップアジア最終予選を戦っていた頃には、長友、内田篤人(JFAロールモデルコーチ)、岡崎慎司(ウエスカ)がレギュラーを奪取。本田圭佑や香川真司も要所要所で試合に出て、活躍していた。そしてご存じの通り、本大会では長友と本田が圧倒的な存在感を示した。香川はメンバー落選、岡崎と内田はレギュラー落ちと悔しい思いをしたが、岡田武史監督(FC今治代表)は彼らに信頼を寄せていた。
こうした時代に比べると、東京世代の勢いはまだまだ足りないように感じられる。特に攻撃陣は「チームを勝たせる存在」になり切れていない。2018年9月に森保ジャパンが発足した際には堂安律(ビーレフェルト)が突き抜けそうな勢いを見せたが、その後はクラブの移籍が続いてやや成長速度が緩くなっている印象だ。ゴールも2019年アジアカップ準々決勝・ベトナム戦(ドバイ)のPK弾から遠ざかっていて、本人も焦りがあるだろう。
代表初ゴールが求められる久保
久保も18歳になったばかりの2019年6月のエルサルバドル戦(宮城)で初キャップを飾った頃は、金田喜稔(解説者)が持つ19歳119日の日本代表最年少得点記録を軽々と抜くのではないかと見られたが、コロナ禍で代表戦が約1年間なくなったことも響いて、今なお達成できていない。
「やり続けることが大事かなと。今日(パナマ戦)も何回か惜しいところはありました。最後のパスをもらえたらとか、最後通ったらというところはあったので、今回は起点でしたけど、もうどんどん自分も飛び込んでいって、いいところでボールをもらってという今日みたいなプレーを続けていければ、本当に近いのかなと思いますね」と本人も初ゴールへの強い渇望を口にしていたが、第一歩を踏み出さない限り、日本代表エースの座を射止めることはできないだろう。
決め切る力を身に着けたい三好
そして三好も2019年6月のコパアメリカ・ウルグアイ戦(ポルトアレグレ)での2発で世界に名を売ったが、フルメンバーが揃った代表はパナマ戦が初めて。ようやく本当の勝負の土俵に上がったところだ。
「一番の課題はやっぱり決定機を作り出すところの最後の精度の部分とシュート。最後にビッグチャンスがありましたし、決め切る力が足りていない。自分が決めていたらもっと試合を早く終わらせることができたし、そこが一番の課題かなと改めて感じました」
彼自身も14日のメディア対応で反省しきりだったが、確かにゴールを奪える形は何度もあった。代表通算50ゴールの岡崎、37ゴールの本田、31ゴールの香川はそういう状況を確実にモノにしてきたからこそ、「日本代表の看板アタッカー」に上り詰められたのだ。東京世代から早くそういう突き抜けたアタッカーが出てくることを強く願いたい。
メキシコ戦で決定力を発揮できるか?
さしあたって、次のメキシコ戦だ。ワールドカップ決勝トーナメント常連との対戦とあって、森保監督も4バックに戻し、ガチメンバーで挑むはず。前線はパナマ戦で出番のなかった鈴木武蔵(ベールスホット)が最前線に陣取り、2列目は伊東純也(ゲンク)、鎌田大地(フランクフルト)、原口元気(ハノーファー)という顔ぶれが予想される。となれば、久保も三好もジョーカーとして結果を出さなければならない。この強豪相手に結果を出せれば、日本代表での序列は確実に上がるし、アジア予選での出場機会を増やす布石も打てる。そういう流れを作れるように、彼らには「ここ一番で決め切る力」に磨きをかけてほしいものだ。