台風10号は”ループ台風”ではなかった?台風の確定値とは?
台風には速報値と確定値があり
台風が発生した場合、気象庁からは3時間ごとに最新の台風の位置や強さ、大きさなどが発表されます。(日本に接近した場合などは1時間ごと)
しかし、その時に発表されている台風情報は速報値であって、のちに事後解析を終え、確定値として最終解析結果が発表されているのです。
一般にこれをベストトラックと呼び、おおむねその台風が消滅したのち、1か月~1か月半程度で気象庁から発表されています。
このベストトラックでは台風の進路や強さ、大きさなどの他、台風の発生時期や消滅時期が変わることもあり、過去には2度、台風の発生自体が取り消されたこともありました(1954年、台風2号、台風10号)。
台風10号は8月19日21時の発生でしたが?
この夏、異例の進路をたどった台風は数多くありましたが、その中でも極めつけは、関東の南で発生し、その後南西に進んで、日本の南海上でループを描いたあと、再び北上し、東北の太平洋側を直撃した台風10号だと思います。
この台風10号が発生したのは、上図の通り、8月19日21時、関東の南海上(八丈島の東)という発表でした。
ベストトラックでは2日遅い発生に
しかし、発表されたベストトラックでは以下の通りとなっています。
台風として日本の南を西進している間はずっと熱帯低気圧のままとなっており、台風が発生したのは丸2日後の21日21時、四国の南と事後解析されました。
発生当時の解説では、関東の南から沖縄の南東まで南下し、そこから再び発生地点付近(関東の南)まで北上するような台風は過去に例がないとしてきましたが、このうちの関東沖~四国沖までの進路が取り消されたことになります。
かと言って、台風10号の異質ぶりがなくなるわけではありませんが、日本の南でループを描いて再び戻ってきたという表現では厳しくなるでしょう。
さらに台風10号は、発生したのち、日本の南から関東の南東へ進んだ29日にかけて、その多くの時間帯で勢力や強風域の大きさなどが修正されています。
例えば、26日21時の強風域は、速報値では半径220キロ(直径440キロ)でしたが、事後解析では南東側500キロ、北西側280キロ(直径780キロ)と約2倍の大きさとなっています。
ちなみに台風が東北太平洋側に上陸した30日のデータにはほとんど修正がありませんでした。
このように台風が発生している時点での情報はあくまでも速報値であり、のちに修正されることがあるということも念頭に置いて頂けたらと思います。