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ウクライナ軍、ロシア軍の約9億円分のドローンを破壊

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして両軍によって上空のドローンは迎撃されて破壊されたり機能停止されたりしている。

ウクライナ軍はロシア軍が侵攻してから4か月の間で、すでにロシア軍の700万ドル分(約9億円)のドローンを攻撃して破壊したことを明らかにした。

ロシア軍は主にロシア製の偵察ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。またロシア製の攻撃ドローン「KUB-BLA」や「ZALA KYB」で攻撃を行っている。

ドローンは攻撃用も監視用も探知したらすぐに迎撃されて破壊されてしまうか、機能停止する必要がある。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。

特に偵察ドローンは探知されやすく、すぐに迎撃されてしまう。偵察ドローンだから攻撃をしてこないから迎撃しなくても良いということは絶対にない。偵察ドローンに自軍の居場所を察知されてしまったら、その場所にめがけて大量のミサイルを撃ち込まれてしまい大きな被害を招きかねないので、偵察ドローンを検知したら、すぐに迎撃して爆破したり機能停止したりする必要がある。対空ミサイルなどで偵察ドローンを壊滅させるのはコストがかなりかかるのでコストパフォーマンスが悪く見えるかもしれないが。だが中途半端な破壊でドローンに搭載されている部品を回収されて再利用されてしまうよりも効果的である。両軍にとって命にかかわるので偵察ドローンこそ、すぐに爆破するのが必須である。

ドローンを製造する軍需産業や部品を提供する周辺産業にとっては特需であり、このような「戦争経済」に対する批判の声もある。だが上空で破壊されてもドローンは戦場において「上空の目」であり、敵軍の様子を偵察するためにも、上空から攻撃を行うためにも非常に重要な兵器である。そのためドローンが破壊されても次から次へと生産して戦場に送る必要がある。ドローンは両軍にとって命綱ともいえるので、検知されたら徹底的に破壊されてしまう。そのため回収して部品を再利用することは難しくなっている。ウクライナ政府も世界中にドローンや兵器の提供を呼び掛けている。

▼ロシアの攻撃ドローン「ZALA KYB」

▼ロシアの偵察ドローン「Orlan-10」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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