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イエレン財務長官、為替介入はまれであれと

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米国のイエレン財務長官はアリゾナ州メサで行われた講演の後、記者団に「介入の有無についてコメントするつもりはない」と述べ、「それはうわさだと思う」と話した。その上で長官は、円相場は「比較的短期間にかなり動いた」と述べ、「こうした介入はまれであるべきで、協議が行われることが期待される」と付け加えた(5日付ブルームバーグ)。

 イエレン長官は4月25日のロイター通信とのインタビューでも、「介入がまれであることを願う。そのような介入がめったに起きず、過度な変動がある場合に限定され、事前に協議があることが期待される」と述べていた。

 4月29日の外国為替市場で日本の通貨当局が円買い介入を実施したとされる。この日は昭和の日の休日で東京市場が休場だった。ドル円は一時160円24銭と1990年以来の高値を付けた(当時の高値は160円35銭か)。長期チャートをみるとここを抜けると260円あたりまで節目らしい節目がなくなる。ユーロ円は171円60銭と2008年につけた最高値の169円77銭を抜いて、過去最高値を更新した。こちらは上値の節目がなくなった。

 市場ではドル円の160円、ユーロ円の170円を試しにきた格好となっていた。そして、29日の13時あたりでドル円・ユーロ円ともに急落となった。動きからみて介入の可能性が高い。神田財務官は介入の有無については「ノーコメント」としており、覆面介入といった格好になった。規模は5兆円を超え、2022年10月21日に実施した5.6兆円の円買い介入と同規模に匹敵する規模の介入であったとみられる。

 そして、日本時間2日早朝(5時過ぎ)の外国為替市場では、ドル円が157円台半ばから153円近くまで急落となった。こちらも介入とみられ、規模は3.5兆円程度とされている。今回の2度の介入はすでに9兆円規模もの大きさとなっているようだ。

 前回の2022年の介入時は、米長期金利がピークアウトしたようなタイミングであり、結果として順張り型の介入となったことで、それなりの効果があったようにもみられた。

 今回もそれを予期していたのかはまでわからないが、2日から6日にかけて米長期金利は低下しており、1日の4.68%から6日は4.48%に低下していた。このため、介入のタイミングとしては、特に2日は結果として効果的であった可能性がある。

 ただし、今回のイエレン財務長官のコメントからも、介入を何度も繰り返すことは難しくなることも予想される。

 日銀が動かない以上は、FRBとその動きを予測しての米長期金利の動向次第であるため、他力本願的な介入とならざるを得ない側面もある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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