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3つの日本の長期金利の上昇要因

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 22日10時現在、日本の長期金利(直近発行された10年国債の利回り)は、1.095%と節目となっている1.100%に接近した。

 ここにきての日本の長期金利の上昇要因は3つある。米長期金利の上昇と日銀の追加利上げ観測、そして国債増発観測である。

 トランプ次期政権の政策により再び物価が上昇し、財政赤字が拡大する懸念から、米長期金利は上昇圧力を強めている。米長期金利は4.5%がチャート上の節目とみられ、ここを突破してくると5%が見えてくる。

 12月のFOMCでの利下げ観測の後退も影響している。21日にシカゴ連銀総裁は利下げペースを遅くするのが理にかなうかもしれないと述べていた。

 22日に発表された10月の全国消費者物価指数(除く生鮮)は前年同月比2.3%となり、日銀の目標の2%を上回るのは31か月連続となった。

 植田和男総裁は18日、経済・物価はオントラック(想定通り)で、政策判断は毎回の金融政策決定会合でデータや情報に基づいて行うと表明。21日には12月会合までに「非常に多くのデータや情報が利用可能となるだろう」と語った(22日付日本経済新聞)。

 市場では12月か来年1月の決定会合で利上げを行うとの予想が大半となっているが、12月と予想する向きが増えている。今回のCPIもそれを後押しする材料となろう。

 そしてもうひとつが、国債増発への懸念である。

 石破茂首相は22日、政府が取りまとめる総合経済対策について、「事業規模39兆円程度、その裏付けとなる補正予算の一般会計追加額は13.9兆円と昨年を上回るものとなっている」と表明した。

 税収の上振れ分や未発行の財投債の付けかえ、前倒し発行分などである程度はカバーできるとしても、さらに来年度当初予算案の編成に絡む国債発行も懸念材料となる。

 103万円の壁問題などでどれだけ国債が増発されるのかははっきりわからない。前倒し発行分の取り崩しでかなりカバーできるとしても、すべてを取り崩すわけにもいかない面もある。

 震災等のもしもに備える面もあるが、日銀の国債買入が今後、段階的に削減されることで、多少のバッファーは残したい面もあるのではなかろうか。

 以上、3つの長期金利の上昇要因がある。それとともに市場があまり日銀の利上げそのものを織り込みにきてこなかった分、上昇余地が生じている側面もあろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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