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14戦全勝11KOでWBAウエルター級レギュラータイトルを獲得した新チャンプ

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Photo:Esther Lin/SHOWTIME

 2021年10月30日、無敗のロシア人挑戦者、ラジャブ・ブタエフ(27)が王者、ジャマル・ジェームス(33)を9ラウンドでストップして、WBAウエルター級レギュラータイトルを獲得した。

 ブタエフの戦績は、これで14戦全勝11KO。

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 実はブタエフは、2019年11月30日にアレクサンダー・ベスプーチンと、空位だったWBAウエルター級タイトルを争い、0-3の判定負けを食らっている。

 が、試合後にベスプーチンが禁止薬物を使用していたことが明らかになり、試合はノーコンテストとなった。

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 30日のファイトは、188センチの長身から放たれるジェームスのストレート、ボディブローをブタエフが被弾しながら、下がらずに自分の距離を保つ展開。序盤を凌ぐと、挑戦者は接近戦を挑み、チャンピオンの長いリーチよりコンパクトなフック、左右のボディアッパーをヒットしていく。

 ブタエフは4回以降、明確にペースを握った。

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 ラウンドが進むに連れ、ジェームスはダメージを蓄積させていく。ブタエフのスイッチにも手を焼いた。長いリーチを生かせず、簡単に懐に潜られては、無数のコンビネーションを浴びる。

 第9ラウンド2分9秒、防戦一方のチャンピオンをレフェリーが抱え、TKOを宣言。公式タイム、同ラウンド2分12秒にて新王者が誕生した。

Photo:Esther Lin/SHOWTIME
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 14戦全勝11KOでWBAウエルター級レギュラー王座を手にしたブタエフは、言った。

 「自分にとって、非常に重要な勝利です。ずっと世界チャンプになることを夢見てきました。今日、大きな一歩を踏み出せましたよ。本当に幸せを感じます」

Photo:Esther Lin/SHOWTIME
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 「我々のチームは今回のキャンプで、スイッチを課題としてハードなトレーニングを積みました。ジェームスはハートを見せはしましたが、レフェリーストップは的確な判断です。彼には辛い終わり方だったと思いますが…」

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 戦績を27勝(12KO)2敗とした前チャンピオンも、話した。

 「俺は良く戦ったさ。でも、今夜はブタエフの方がベターだった。互いにハードに打ち合ったよな。言い訳はしたくない。彼が勝利の雄叫びをあげるべき夜だった。

 レフェリーの仕事ぶり(ストップ)には納得がいかないが、ブタエフに流れを作られてしまった。これもボクシングだよ」

 試合後、ブタエフは、いつものようにアフロヘアーのカツラを被って、勝利者コールを受けた。彼独自の愛嬌が、米国でも認知され始めている。

 初防衛戦の相手は、この日前座に出場したジャロン・エニスか? あるいは次戦で同タイトルのスーパー王者、ヨルデニス・ウガスとの試合が決まるか。ロシア人新チャンピオンは、長期政権を築けるだろうか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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