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学生起業からの『b-monster』という働き方【塚田眞琴×倉重公太朗】第2回

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

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今回のゲストは、大学生で起業した塚田眞琴さん。彼女は21歳という若さで2億円を投資し、銀座の一等地に『b-monster』のスタジオを構えました。未経験から大きなリスクを背負って起業した、その勇気の源はどこにあるのでしょうか。また、彼女が圧倒的なスピードで成長できた理由とは?

<ポイント>

・大学を中退して起業することに不安はなかったのか?

・2億円の借入金を弱冠25歳で完済

・目指しているのは「心まで変えていけるフィットネス」

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■経営は決断とスピードが命

倉重:ニューヨークで初めて暗闇ボクシングを知り、塚田さん流にアレンジして起業されました。

起業するときは、何のノウハウもないですよね。

塚田:基本的にはないですね。

両親からずっと話は聞いていたので、経営のノウハウのようなものはあったのですが、起業する考えはありませんでした。

倉重:ちなみに、ご両親からはどのような経営ノウハウを教わっていたのですか。

塚田:いまだに覚えているのは、小学2年生ぐらいのときに父が会社にコールセンターを導入したときのことです。3週間後くらいに劇的に基本料金が安くなり、数百万ぐらいの損をしました。

そのとき父は私を呼んで、「自分はこのような決断をして、こういう結果になったけど、その3週間に数百万の意味があった」と言っていたのです。

「経営は決断とスピードが大事だから、値下げのことを知っていたとしても、3週間前に導入しただろう。とにかく先にやることが大事だ」と話していました。

倉重:それを小学2年生で学んだのですね。

塚田:はい。そのときは全部を理解しておらず、「へえ。この人熱いな」くらいに思っていたのですけれども。

今は私もトライアンドエラーの精神で、とりあえず導入することを実践しています。

「面白いな」と思ったら、ボックスマスターやウオーターバックを入れてみて、あまり人気がなかったら下げるという感じです。

とにかくスピード感を持って対応しています。

倉重:PDCAを回すのではなくて、まずDOから入って、走りながら考えるということですね。

倉重:「起業のときに不安はなかった」と、よくインタビューでもお話しになっていますね。

塚田:不安はなかったです。

きっと無知過ぎたのだと思います。

ニューヨークで暗闇ボクシングをやってみて「すごく面白い!」と思ったし、はやらないという発想はほとんどありませんでした。

それにとても忙しかったので、立ち止まって考える隙も、不安だと感じる間もなかったのです。

ニューヨークで暗闇ボクシングと出会ったのが1月で、3月に会社を設立、6月に1号店をオープンしているので、もうめちゃくちゃなスピード感です。

倉重:大学も3月、4月ぐらいにやめたのですか。

塚田:2年から3年に上がる3月でやめました。

忙し過ぎたので大学に行けないだろうなと思ったのです。

倉重:そこは迷いもしなかったのですね?

塚田:全然ありませんでした。

倉重:その思いきりがすごいですね。

それはお姉さんも全く同意見ですか。

塚田:はい。姉は3月で卒業していたのですが、私に対しても「別に大学はやめてもいいんじゃない」という感じでした。

倉重:なるほど。最初は従業員募集から始めるわけですね?

塚田:そうですね。「何から始めたのですか」とよく聞かれるのですが、全部同時進行でした。

会社登記しながらスタッフ募集の広告を打って、そのまま物件を見に行くという感じです。

物件が決まる前に求人募集を出していたので、「銀座あたりに出したいと思っています。もし良い物件がなかったら恵比寿などになるかもしれません」という書き方でした。

倉重:ざっくりとした募集だったのですね。

塚田:「ホームページもないけれど、こんな感じのことをしたい」と文章で説明しました。

倉重:正直、あやしい会社だと思われませんでしたか?

塚田:そう思われないよう、親の会社の名前を出して、「この会社がグループなので、倒産の心配はありません」という見せ方にしました。

それで集まって来てくれたのが最初の10人です。

すごくアグレッシブで、創作意欲があって、ゼロから一緒にb-monsterを作ってくれました。

倉重:今のb-monsterのプログラムの原型はその10人で作ったものなんですね。

これをベースに、どんどん改良されたり、バージョンが増えたりしています。

そこは志のあるメンバーが集まったからだと思います。

メディアに募集を出して集めたのでしょうか?

塚田:はい。フィットネス誌に募集記事を掲載しました。

倉重:当然いろいろな方を面接して決めますよね。

「こんな人を採用しよう」という方針はあったのですか。

塚田:当時は何も決まっていない状態だったので、それを楽しんでくれる人を求めていました。

「1から作っていく生みの苦しみは絶対にあると思います。あるものを与えられて、それをこなすのが好きというマインドだと難しいかもしれません。」ということは伝えていました。将来いろいろなことを変えるつもりだったので、柔軟性を重視したのです。

倉重:なるほど。それが21歳のことですよね。

考えられないほどの圧倒的な成長スピードです。

■2億円の借入金を弱冠25歳で完済

塚田:私もこんなに大きくなるという想定はしていませんでした。

倉重:今、会員数1万人以上でしたか?

塚田:はい。

倉重:すごいですよね。

創業のときに、ご両親から2億円借りたそうですが、どのような経緯なのですか?

塚田:最初に両親に事業計画やなぜこれが流行ると思うかなどをプレゼンしました。

予算は、正直施工業者などに見積もりをもらっている時間はなかったので、「ざっくりこれぐらい」という自分なりの見積もりはありましたが、2億もかかるとは思っていなかったです。

防震や防音の設備が想像以上に、とても高額でした。

物件内にもう1個部屋をつくるレベルの設計だったのです。

倉重:音楽ガンガンかけていますから。

塚田:そこがすごく高かったのですが、妥協したくなかったのでお金をかけました。

両親にも相談したのですが「そこは妥協しないほうがいいと思う」と言ってくれたので。

倉重:音楽がボリュームダウンしては、没入感が足りなくなってしまいますから、そこは徹底的にお金をかけたわけですね。

ちなみに、その費用はもう返済したのですよね?

塚田:完済しました。

倉重:25歳で2億円返せる人が何人いますか? 

半端なことではありません。

経営的には非常に順調ですか?

今コロナで大変かもしれないですけれども。

塚田:大丈夫です。

倉重:きちんと素早く「休会できます」という案内を会員さん向けに出していたので、そのスピード感はすごいなと思いました。

スタッフは最初10人から始めて、今、何人ですか?

塚田:160人ぐらいです。

倉重:160人の社員がいて、半分ぐらいがパフォーマーで、事務系の方もいます。

チームを率いるリーダーとして心掛けていることは何ですか。

塚田:スタートアップなので特に「風通しのいい会社」を目指しています。

現場のスタッフの意見が通りやすい仕組みづくりや雰囲気を大事にしているのです。

倉重:実際にさまざまな提案がありますよね。

塚田:はい。誰でも提案できるようにしていて、必ず返事をしています。

倉重:社長が見て返事をくれるなら、いろいろ思いついたことを提案したくなりますね。

現に実行されるものもあるのでしょうか。

塚田:栄の周年イベントは現場の子たちから出たアイデアです。

倉重:それはやる気も出ると思います。

社員には年上の方もたくさんいますよね?

「年下上司と年上部下はうまくいかない」という会社もあったりします。

そのような問題はありませんか。

塚田:特にありません。

あまり年齢を気にせず接しています。

全員に敬語で話し、名前に「さん」をつけているのです。

年下だからと言って、なれなれしく接することもありません。

態度を変えないほうがいいと思って、全員との距離感を一緒にしています。

倉重:なるほど。

塚田:最初の10人は1人だけ同じ年で、あとは全員年上です。

私のことをわかって入ってくれているので、みんな理解があり、「年下のくせに」という感じもありませんでした。

■心身共に洗練されたチャレンジャーであふれる世界にする

倉重:今後の展開という意味で、お考えになっていることはありますか?

塚田:近い将来の夢として、ニューヨークに逆輸入したいです。

倉重:すごくカッコいいですね。

どのくらい近い将来ですか。

塚田:来年、再来年ぐらいを目標にしています。

倉重:ニューヨークでもはやったら本物ですね。

塚田:それはもう、スタッフみんなの夢です。

みんなすごく海外志向が強いし、「ニューヨークで働きたい」という想いもあります。

パフォーマーも、「自分のパフォーマンスがニューヨーカーにどう受け入れられるのか」ということに興味があるようです。

倉重:「人気のある人はニューヨークで働けます」というのはパフォーマーにとっても夢がある話だし、キャリアとしてもいいですね。

海外にどんどん展開していって、世界中のパフォーマーを集めた大会をするのも面白そうです。

社会的にも健康経営が叫ばれているので、事業形態としてもすごくいいですよね。

塚田:はい。去年ビジョンを「心身共に洗練され、チャレンジし続ける人であふれる世界にする」というものにつくりかえました。

会員さんからも、「体が変わって心が前向きになりました」「新たなチャレンジを楽しめるようになりました」と言っていただくことが多いのです。

それがすごくうれしくて。

体だけではなくて、心まで変えていけるフィットネスとして、世界が広がる感じがしました。

倉重:実際に自信がつきますよね。

うちの弁護士事務所の秘書も通っているのです。

今まで運動したことがないので、最初は「45分やるだけでもつらい」と言っていました。

そこから体が動くようになるプロセスを経ると、やはり積極的になっていきますよね。

b-monsterにはそのような人がたくさんいるのではないかなと思います。

(つづく)

【対談協力】

塚田眞琴(つかだ まこと)

1994年生まれ。2016年大学2年で姉と共に起業、同時に大学を中退。

2016年3月にb-monster株式会社を設立。同年6月に1号店となるGinza studioをオープン。

2020年より代表取締役に就任。

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒 KKM法律事務所代表弁護士 第一東京弁護士会労働法制委員会副委員長、同基礎研究部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 紛争案件対応の他、団体交渉、労災対応、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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