名古屋でしかあり得ない(!?) 有無をいわせぬ“あんこ推し”喫茶店が登場
あんこを選べる小倉トースト、コーヒーのおつまみもあんこ
あんこ王国・名古屋。喫茶店ではパンにあんこを乗せた小倉トーストが定番で、名古屋発祥チェーン・コメダ珈琲店ではあんこ入りドリンクが人気。和菓子店も多く、まんじゅうの消費量は全国トップクラスといわれます。
そんな名古屋ならではの…というより名古屋でしかあり得ない、あんこだらけの喫茶店が登場しました。2023年8月31日にオープンした「喫茶はじまり」(名古屋市北区)です。
イチ推しはもちろん小倉トースト。これが何と4種類もバリエーションが! あんこの種類を「粒あん」「こしあん」「あいがけ(粒あん+こしあん)」と選べる上に、週替わり小倉トーストも用意されているのです。その他、あんモンブラントースト、小倉トーストパフェ、ぜんざいと、定番のあんこ系メニューも充実しています。
あんこ推しを何より決定づけているのがドリンクのおつまみ。名古屋の喫茶店では、コーヒーなどのドリンクにピーナッツやあられといったお茶うけが無料でついてくるのがデフォルトですが、ここでは何と小皿に乗ったあんこが添えられるのです。すなわちお客のほとんどは、ここに来たらもれなくあんこを味わうことになるわけです。
喫茶店開業のきっかけもあんこ(!)
こんなあんこの魅力たっぷりの喫茶店を開いたのが店主の高野仁美さん。当サイトでも何度か取り上げた「小倉トースト普及委員会」委員長にして、日本あんこ協会認定・あんこ女子あんバサダーと、その肩書もまたあんこまみれです。
(関連記事:「『小倉トーストの日』制定へ普及委員会が発足。野望は名古屋めし界の下克上!」 2023年2月28日)
「常にあんこを切らさない家で育ちました。朝は小倉トースト、お彼岸にはおはぎを一升分つくってお弁当にも持って行っていました」とあんこ好きは筋金入り。大曽根商店街に店を開くことになったのも、あんこが決め手になったといいます。
「大曽根商店街の町づくりにかかわっていて、学生時代からの夢だった喫茶店をここで開きたいと思っていました。でも、物件がなくてあきらめかけていたんです。そんな時、リノベーションした複合施設のオーナーが『ここで大判焼きを出したいんだけど、誰かあんこに詳しい人いない?』と商店街の人に相談したところ、『ぴったりの人がいるよ!』と私に白羽の矢が立ったんです」(高野さん)
こうして大判焼きの商品開発をきっかけに、施設内にテナント入居できることに(調理は「喫茶はじまり」で行い、販売は現在準備中)。あんこがつなぐ縁によって、念願の喫茶店開業にもこぎつけたのです。
毎週変わるあんこ。店内では販売も
あんこがウリの店なのですから、当然あんこは自家製…と思いきや、実はそうではないとか。「舘林製餡(たてばやしせいあん)という市内の専門の業者さんから仕入れています。おいしいあんこを食べてもらいたいので、そこはプロにお任せした方がいいんです。いろんな種類のあんこがあるので、メニューのバリエーションを増やせるのもメリットです」と高野さん。
ちなみにパンも業務用のもの。高野さんの元勤務先である名古屋の業務用パンメーカー、永楽堂のものを使用し、定番の小倉トーストにはもち米を使った「くちどけもちこ」。まさしくおもちのようなもちもち感であんことの相性も抜群です。プロがつくる本当においしい素材を組み合わせることで、最高においしい小倉トーストを提供しているのです。
小倉トーストのレパートリーは100種! 新メニューも続々
見るだけでお腹いっぱいになりそうなあんこメニューの数々。が、あんこづくしの計画はまだまだこんな甘いものじゃないとか(?)。
「あんこメニューは今後さらに充実させたい。甘くない塩あんを使った食事メニュー、おはぎのライスコロッケ…。週替わりの小倉トーストは年間50数種類つくる必要がありますが、これはパンメーカー勤務時代に『小倉トースト100変化』というメニュー開発プロジェクトをやったので2年間はレパートリーのストックがあります!」(高野さん)
さらには、「コーヒーのおつまみにはさっぱりみずみずしい蜜づけあんが合うし、透明感のある味わいのこしあんも思いの外小倉トーストに合う。名古屋は粒あん派が多いといわれますが、うちで食べたのをきっかけにこしあん派に鞍替えする方もいらっしゃいます(笑)」と高野さん。
これまでにない創作メニューはもとより、既存のメニューからもあんこの新しい魅力に出会えそう。名古屋ならではのあんこ推し喫茶店は、あんこの可能性を一層広げてくれそうです。
(写真撮影/すべて筆者)