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これだから続けて欲しい! センバツ21世紀枠がもたらす存在意義の数々とは?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
春を呼ぶセンバツ選考会はもうすぐ。名物の21世紀枠もすっかり定着した(筆者撮影)

 今春センバツの選考会は、今月26日に開かれる。名物枠である「21世紀枠」は導入から20年以上が経過し、「出尽くした」「戦力が全国大会にそぐわない」など、存在そのものを否定する意見も少なくない。その影響からか今春は、昨年までの3校から2校に減枠された。一方で、地元の盛り上がりやチーム強化に寄与し、それが地域や学校の活性化につながるなど、一定の成果をもたらしていることは間違いない。

慣例を破る動きにつながった女子マネの活躍

 昨春出場の3校は、いずれも力を出し切っての惜敗だった。その中で、部員12人で奮闘した城東(徳島)は大きなインパクトを与えた。選考会では、朝練習でノックを打つ永野悠菜マネージャーの頑張りが取り上げられ、大きな話題となった。そしてこれが、慣例を破る動きにつながる。試合前のノックに、女子が参加できるようになったのだ。永野マネの試合前ノックは観衆の目を釘付けにし、相手の東海大菅生(東京)の監督に「感動した」と言わしめるほどだった。

夏の甲子園でも女子マネが試合前ノック補助に

 彼女がノックを始めたきっかけが、「部員不足で練習にも支障がある。少しでも助けになれば」というもので、全国には同じような環境の学校がいくらでもある。今後、こうした動きが本格化すれば、都道府県単位で、第二、第三の永野マネが出現することになるだろう。センバツ後、城東には11人の新入部員があった。女子マネも2人加わったようで、春の四国大会ではセンバツ出場の高松商(香川)にも勝った。甲子園が城東に与えたものは限りなく大きい。ちなみに夏の甲子園では宇部鴻城(山口)の女子マネが、試合前ノックの補助を担当した。

先輩たちの努力の積み重ねが実を結ぶ

 城東は2度目の地区推薦での選出だった。石橋(栃木)は3度目の推薦で、甲子園出場をかち取った。抽選会前日の「主将研修会」で横松誠也主将は、「(候補に挙がりながら)甲子園に行けなかった先輩方が一番、喜んでくれた。先輩方のおかげ」と感謝の言葉を並べた。氷見(富山)は前年の夏、9回2死2ストライクまでリードしていたが、最後のアウトが取れず、甲子園出場を逃した。この試合に左翼手で出場していた大沢祥吾主将は、泣き崩れる先輩たちの姿を目の当たりにした。3校とも初戦突破はならなかったが、こうした先輩たちの努力の積み重ねが、夢の舞台へと彼らを導いたことは確かだ。

甲子園での活躍がプロ入りへつながる

 野球はチームスポーツだから個人をクローズアップすることにやや抵抗はあるが、甲子園出場が選手の将来を大きく変えることにもつながる。氷見ではエースの青野拓海が昨秋、楽天からドラフト指名を受けた。優勝した山梨学院相手に6安打4失点(自責2)の好投を見せたが、プロのスカウトが注目したのは、最速145キロの右腕ではなく、バットの方だった。「パンチ力があり、長距離砲として期待」と担当スカウトが話したように、甲子園で2安打を放った打棒がスカウトの目を引いたのだった。プロでは野手で勝負するとのことで、出場がなければ指名されたかどうか。ちなみに3年前のセンバツに21世紀枠で出場した三島南(静岡)の主砲・前田銀治(20)も楽天から指名されたが、ドラフト3位という高い評価は、甲子園出場の賜物ではないだろうか。

魅力的な候補多く、1校減は皮肉な印象

 今春の候補9校には、地域を代表するような仙台一(東北=宮城)、水戸一(関東・東京=茨城)、鶴丸(九州=鹿児島)など、伝統進学校が多く含まれている。ほかにも別海(北海道)や田辺(近畿=和歌山)は、部員不足などの困難にもめげず、地区大会で強豪相手に健闘した。例年以上に、多彩かつ魅力的な候補が揃った印象で、1校減は皮肉に映る。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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