流行語大賞「ふてほど」はなぜ視聴者をSNS投稿へ向かわせ、毎回トレンド入りしたのか #専門家のまとめ
その年もっとも流行ったとされる言葉などを選出する『2024ユーキャン新語・流行語大賞』の年間大賞が発表され、「ふてほど」が選ばれた。
「ふてほど」とは、2024年1月期のテレビドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)の略称。そんな同作は、教育現場などでの体罰、職場などでのパワハラやセクハラが日常的だった昭和61年から、コンプライアンスで縛られた令和6年にタイムスリップした“昭和男”の小川市郎(阿部サダヲ)らの気持ちの変化を描いた内容だった。
それにしてもなぜ「ふてほど」は、『流行語大賞』に選ばれるほど話題となったのか。当記事であらためて、「ふてほど」はどんな作品だったのか、そして放送のたびにXでトレンド入りするなど大きな反響を呼んだ背景をまとめたい。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
「ふてほど」が高く評価されたのは、当然ながら、作品そのものに力があったからにほかならない。宮藤官九郎による脚本、阿部サダヲら出演者たちの演技などに見ごたえがあったからこそ、多くの視聴者を引きつけた。
一方、毎回、視聴者に「考えるきっかけ」を与えたことが“勝因”にもなった。既読スルー、ルッキズム、不祥事を起こした著名人への対応など、「自分も身に覚えがある」「以前からそのことに疑問や違和感を持っていた」と思わせるテーマを描くことで、視聴者を「なにか言わずにはいられない」という気にさせ、SNS投稿へと向かわせた。そうやって反響を広げていったと考えられる。
また、昭和世代、平成世代、令和世代、Z世代といった世代ごとのカルチャーや出来事をピックアップしたり、ジェネレーションギャップを議題とするバラエティ番組が近年、数多く放送されていることも無関係ではない。そういった番組の背景の一つにあるのが、テレビ離れ。“ジェネレーションギャップ番組”は、「そうそう、こんなことがあった」という共感や、「今ではありえない」という驚きや反感を、幅広い層から得ることができる。つまり多くの視聴者を取り込む可能性を持った内容と言えるかもしれない。
それでも実際のところ、ジェネレーションギャップ番組は当たり外れが大きいようだ。その点「ふてほど」は、ジェネレーションギャップを興味深く描き、それが『流行語大賞』年間大賞を受賞するなどのヒットにつながったのではないか。