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大谷翔平はファン投票DH部門でノミネート。MLB球宴の選出方法とは?

菊田康彦フリーランスライター
打者としては6本のアーチを放っている大谷(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月17日(日本時間7月18日)にワシントン・ナショナルズの本拠地、ナショナルズ・パークで開催されるメジャーリーグ(MLB)オールスターゲーム。その出場選手を選ぶファン投票が、今月1日からスタートした。注目の大谷翔平(エンゼルス)も、ア・リーグの指名打者(DH)部門にノミネートされている。

MLB球宴の選出プロセスは主に3つ

 MLBオールスター出場選手の選出には、日本プロ野球(NPB)と同様に大きく分けて3つのプロセスがある。まずは前述のファン投票。これはNPBでも行われているように、ファンが自分の好きな選手、すなわち出場してほしい選手に投票するというものだ。日本では各球場などに投票用紙が置かれ、ハガキおよびウェブサイトでの投票も可能だが、現在のMLBではインターネットによるオンライン投票のみとなっている。

 ファン投票で選ばれるのは、NPBの場合は投手3名(先発、中継ぎ、抑え各1名)を含め、セ・リーグ11名、パ・リーグはDHを加えた12名だが、MLBではどうか? こちらは投手はファン投票対象外のため、ア・リーグは指名打者を含む9人、DH制度のないナ・リーグでは8人が選出される。MLBのオールスターは年に1試合のみで、ファン投票で選ばれた選手は先発メンバーで出場するのが原則だ(故障等により出場辞退の選手を除く。ナ・リーグの先発DHは、ファン投票選出外の選手から監督が選ぶ)。

 過去にファン投票で選ばれ、先発メンバーに名を連ねた日本人選手はイチロー(2001~04、06~10年=マリナーズ、01~03年は両リーグ最多得票)、松井秀喜(2003年=ヤンキース)、福留孝介(2008年=カブス、現阪神)の3人。ほかに1995年にはドジャースの野茂英雄がナ・リーグの先発投手に指名され、マウンドに上がっている。

球宴メンバーの最大勢力は「選手間投票」組

 このファン投票とは別に、2003年からは「選手間投票」も行われている。実は現在のMLBオールスター出場選手の選出で、最も大きな割合を占めているのがこの枠だ。これは選手、監督、コーチの投票によって出場選手を決めるというもので、得票の多い順に先発投手5名、救援投手3名、捕手と内野手はポジションごとに1名(ア・リーグはDHも)、外野手は3名が選ばれる。

 NPBでも2008年から同様の制度を取り入れているが、1位の選手がファン投票と重複した場合、繰り上げ当選はない。だが、MLBではその場合には2位の選手(外野手はファン投票選出を除く上位3名)が繰り上げとなるため、この投票で選ばれる選手の数は実にア・リーグ17名、ナ・リーグ16名にも上る。

 ちなみに、この選手間投票ではイチローが2003、04、06、07、09、10年に外野手部門の上位3名に名を連ね、2005年は繰り上げ当選でオールスターに出場している。2014年にはヤンキースの田中将大が投手部門の1位となったが、右肘じん帯の部分断裂のため出場を辞退。また、ダルビッシュ有(現カブス)はレンジャーズ時代の2013、14年、マリナーズの岩隈久志は2013年に、この枠でオールスターに選ばれている。

松井秀喜、ダルビッシュも…最後の1人を選ぶ「ファイナル・ボート」

 NPBではファン投票、選手間投票に続く3つ目のプロセスは「監督選抜」になる。両リーグの指揮を執る前年度の優勝監督(今年はパ・リーグ=福岡ソフトバンク・工藤公康監督、セ・リーグ=広島・緒方孝市監督)による選出枠だ。

 これはMLBでもかつては同様だったが、今のようにファン投票および選手間投票で大半の選手が選ばれる時代になると、残るメンバーの選出に当たっては監督の裁量の余地は少なくなる。各球団から最低1人は出場選手を選ばなければいけないルールなどもあって、むしろMLB機構の意向が優先されるため、最近はこの枠は公にも「コミッショナー事務局選抜」と言われるようになっている。

 この事務局枠で選ばれるのは、ア・リーグ5名、ナ・リーグは7名。監督選抜の時代も含めると、過去には佐々木主浩(2001~02年=マリナーズ)、長谷川滋利(2003年=マリナーズ)、斎藤隆(2007年=ドジャース)などの日本人投手が、この枠でオールスターに選出されている。

 ここまでの3つのプロセスとは別に、日米ともに「最後の1人」を選ぶ制度がある。それが2002年に始まったMLBの「ファイナル・ボート」であり、NPBでは5年ぶりに復活する「プラスワン」である。つまり、ファン投票、選手間投票、そして監督(事務局)選抜で選出から漏れた選手にも、オールスター出場の望みがあるというわけだ。

 ただし、一定の基準を満たしていればどの選手にも投票できる「プラスワン」と違い、MLBの「ファイナル・ボート」の対象になるのは、両リーグでノミネートされた5名ずつだけ。したがって、候補に挙がらなければチャンスはない。過去にはこの制度で松井秀喜(2004年=ヤンキース)、岡島秀樹(2007年=レッドソックス)、ダルビッシュ有(2012年=レンジャーズ、現カブス)が、オールスターへの出場切符を手にしている。

 もっとも選ばれた選手が故障などで出場を辞退することも珍しくはなく、その代替選手として選出される可能性もある。2014年にはレッドソックスの上原浩治(現巨人)が、故障で出場を辞退した田中将大の代わりに選ばれ、球宴初出場を果たしている。

 MLBでも投打の二刀流を続け、6月3日現在で投手としては4勝1敗、防御率3.18、打者としては打率.283、6本塁打の成績を残している大谷は、移籍1年目でオールスターに選ばれるのか。DH部門でノミネートされているファン投票は、7月5日午後11時59分(米国東部時間、日本時間では7月6日午後0時59分)に締め切られる。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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