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武道館を実現したのは泥臭い努力――YouTube登録者72万人「いれいす」のないこが語る3年間

宗像明将音楽評論家
ないこ(撮影:堀江正俊)

男性6人による新世代歌い手グループ「いれいす」のライヴを初めて見たときの衝撃は強烈だった。2023年8月25日に東京ガーデンシアターで開催された『いれいす Summer Tour 2023「えびばでぃ – 夏 – Summer !!」』で初めていれいすのライヴを見たが、YouTubeでは2次元の彼らが、ライヴではもちろん3次元の姿で現れ、しかもスクリーンに映されるのは顔のアップが多い。ライヴはまさに素顔のいれいすに出会える場のわけだ。そして、キャパシティ8000人の会場を埋めるのは、10代を中心とする若い女性ファン。その歓声が響き続けて止まらないのだ。

そんないれいすが、結成当初から夢として掲げてきた日本武道館公演を行うことを、2023年10月9日の生配信で発表した。2020年10月9日の活動開始からわずか3年で、日本武道館公演の発表にまでたどりつけたのはなぜか。いれいすのリーダーにして、所属事務所の株式会社VOISINGの代表でもある「ないこ」に話を聞いた。

長く続けるための仕組みは最初から考えた

ないこ(撮影:堀江正俊)
ないこ(撮影:堀江正俊)

――いれいす結成のきっかけは、歌い手グループの流行やコロナ禍のリモートワークがあったことだそうですね?

ないこ:歌い手ブームがあったのでやってみようというのが一番大きい理由だと思いますね。本当に思いつきです。当時は会社にしようとも思ってなかったですし、大きいことができるとも思ってなかったので、趣味の延長みたいな感じでした。いれいすは6人とも全員そうですね。

――結成にあたり、先行していた歌い手グループは参考にしましたか?

ないこ:全部見ましたね。当時は歌い手グループの前に、個人の歌い手活動すら始めたばっかりで、右も左もわからない状態だったので、一回全部の歌い手グループさんの活動を見て、すべての活動をちゃんと分析しようというところから始めました。どれぐらいの動画投稿頻度なのか、どんなコンテンツを作っているのか、生配信はどれぐらいしているのか、ライヴはどれぐらいしているのかも全部調べて、自分たちが何をどこまでできるかを考えました。

――競合グループを研究してから、活動を始めているんですね。

ないこ:そうですね。「やるからには本気で」というのが6人の共通の気持ちだったので。僕も前職がマーケティング職だったこともあり、何かを始める前に分析から入るのは当然かなと思いました。

――メンバーは個性で選んだそうですが、「こういうグループにしたい」というイメージはありましたか?

ないこ:本当にたまたまの出会いばっかりでしたね。一番最初に誘ったのはIf(いふ)というメンバーなんですが、彼を誘った時点では、6人集まったときにどうなるかはまった想像してなくて。気が合う歌い手さんに声かけていく流れで、だんだんメンバーが揃っていきました。Ifだったら英語で歌えるし、初兎(しょう)というメンバーはラップが得意なんですけど、そういうメンバーを探していたわけではまったくなくて、たまたま同じ熱量でやれるメンバーが6人集まったときに、それぞれ個性がバラバラだったという流れでした。

――6人にした決め手はなんだったんでしょうか?

ないこ:グループ活動をしていくことを想像したときに、6人で活動するのがいろいろな場面に対応できそうだと思ったからです。3人・3人にわけられたり、2人組が3ペアできたり、偶数なのでステージングのときもわりとわかりやすかったり。4人という案もあったんですけど、4人で1週間の配信や動画投稿を回していくのはちょっと負担が大きすぎるかなと思い、6人にした背景もあります。みんなで協力しあうなら多いほうがいいけれど、多すぎても仕方がないので、いろいろ話して6人になりました。

――初期段階からマーケティングや運用を考えていて、KPI(重要業績評価指標)も意識してのスタートだったんでしょうか?

ないこ:KPIまでは考えてなかったです。ただ、当時いろんな歌い手グループができては潰れてしまうということが非常に多い状況下でした。なので、「見切り発車してしまうと解散してしまう」と全員が思っていて。どうすればみんなが継続的に頑張れるのかを、ある程度は設計しておかないと、ガス欠になってしまうとは思っていたので、長く続けるための仕組みは、最初から考えていました。

――楽しくやることも意識しましたか?

ないこ:そうですね、グループ結成当初は「みんなが楽しく仲良くやりながら、趣味の延長で、今よりみんなのファンが増えるといいね」ぐらいの話でした。最初の生配信で、リスナーさんに「ライヴで武道館まで行きます」と言ったんですけど、それも計画した話というよりは、意気込み的な意味で言った部分がすごく大きくて。正直、全然ロードマップを敷いていたわけでもないですし、「いつか行けたらいいよね」ぐらいの感覚でした。ただ、武道館ライヴを目標に掲げてからは、自分たちでも無謀と思いながらも、どこか武道館を常に意識するようにはなりました。だからこうして武道館ライヴ開催という目標を有言実行できて本当に嬉しいです。

――結成後、毎日YouTubeに動画投稿をしてきたのも、相当大変だったのではないでしょうか?

ないこ:結成当初は正直、なんとなく「やれるとこまでやってみよっか」というノリから始まったところはあります。ただ、結成してデビューする前に、実験的に動画を作ってみて、「これだったらこれぐらいのペースでできそうだね」というのは、ある程度考えたうえで投稿をはじめました。

――オリジナル曲を毎月リリースしてきましたが、オリジナル曲にこだわったのはなぜでしょうか?

ないこ:いれいすがデビューしたとき、歌い手グループ界隈自体が、出てきては潰れていく市場ではあったんです。なので、歌い手が好きなリスナーさんも、歌い手グループに飽きてきている時期だったんですよ。「どうせ解散するよね」「同じようなグループができて終わるよね」という雰囲気が界隈に漂っていました。だからどうしても僕たちいれいすは、今まで誰も見たことがないような衝撃的なデビューをする必要があると思っていました。いろいろと歌い手グループのことを調べていくなか、デビュー一発目からオリジナル曲を投稿するグループは今までになかったので、「じゃあまずオリジナル曲からデビューしてインパクトつけてみようか」という話からデビュー曲『恋の約束』が生まれました。それ以降も、定期的にオリジナル曲を出すグループがなかったので連続してオリジナル曲を投稿してみたいという思いがあり、「せっかくなら自分たちの自己紹介ソングを作って僕たちのことを知ってもらおう」という発想から2曲目のオリジナル曲『推しが見つかる3分ちょい!』が生まれた、という流れでした。

ファンの親御さんに理解してもらうのも我々の役目

ないこ(撮影:堀江正俊)
ないこ(撮影:堀江正俊)

――すでにYouTubeでチャンネル登録者数が72万人以上ですが、ここまで人気が出ることは当初から予想していましたか?

ないこ:結成当初から考えると、そこまでは予想してなかったのが正直なところです。

――何がここまでファンの方々に受けたと思いますか?

ないこ:伸びたきっかけは、ひとつは「歌企画」と言われるシリーズで、それがバズったのが大きかったです。あとは、僕たちが実直に努力している姿がリスナーさんに伝わっているから、リスナーさんも熱量高く応援してくれているのかな、とも思います。本当に無名の6人が集まって、6人とリスナーさんだけの力で一歩ずつ、0から積み上げてきて今があるので。その姿や背景、ストーリーは、自分で言うのもなんですが、かなり推せるポイントかなと思っています。

――ないこさんから見て、ファン層はどの年代がコアでしょうか?

ないこ:小中学生、10代女性が一番多いですけど、その親御さんの40代、50代の方もけっこういらっしゃいまして、そのあたりが今一番多いかなと思います。

――親子で楽しめるコンテンツになることは意識しましたか?

ないこ:親子にかかわらず、男性でも女性でも、何歳でも楽しめるようなコンテンツを作ろうというのは、メンバー6人でよく言っていたんです。たとえば10代の娘さんがYouTubeを見ていたときに、親御さんがチラッと見てハマってくださるとか、ライヴに来ていただいた際に付き添いで来てハマってくださるケースがけっこう多いので、ありがたいことだなと思っています。

――2020年10月9日に活動を開始して、2021年4月10日に1stフルアルバム『Irregular record』リリースと、半年ほどでアルバムをリリースしていますね。さらに、これまでの6枚のアルバムをリリースしていますが、その勢いはどこから出てくるものなのでしょうか?

ないこ:ちょっと多いですよね。「出したいときに出してみたら6枚になっちゃった」みたいなところがあります。

――2022年10月9日に、すたぽら、シクフォニとともに株式会社VOISINGを設立しましたが、ご自身が会社を設立することになったのは、どういう経緯だったのでしょうか?

ないこ:株式会社VOISINGは、いれいす、すたぽら、シクフォニの3グループ、合計17人の歌い手で設立しました。それぞれのグループで活動していくのもいいんですけど、せっかくなら仲もいいし、それぞれのグループ、ひいてはこの歌い手界隈全体を一緒に盛りあげるために、ノウハウを共有できたらいいねと思って共同で会社を設立しました。会社にすることで社会的信用も得られますので、法人化したほうがいいねという側面もありました。

――ないこさんが、法人化してみて一番感じるメリットはなんでしょうか?

ないこ:会社として動くことによる社会的信用ですね。実現できる企業様コラボや展開の幅がかなり広がったし、その3つのグループで一緒にやっていくことでノウハウが共有されて、かなりVOISINGのコンテンツを世間に展開しやすくなりましたね。

――2022年10月11日にはファミリーマートとのコラボが始まりましたが、やってみていかがでしたか?

ないこ:ファミリーマートさんのような、日本全国に店舗があるような企業様とのコラボは特にありがたいと思っています。僕たちは普段インターネット上で活動しているので、リスナーさんは当然日本全国に住んでいます。ですが、僕たちが実際に47都道府県ですぐにライヴができるわけでもないし、グッズ販売もオンラインショップがメインだったりで、リスナーさんにとって身近なところにいれいすを感じてもらえる瞬間がなかなかないんですよね。そんななか、ファミリーマートさんとコラボさせていただけると、日本中のリスナーさんに、より身近に僕たちの姿を見てもらえるんです。こういった、リスナーの皆さんの生活の近くに僕たちがい続けられるようなコラボ展開は今後も続けていきたいと思っています。

――コラボをたくさんすることによって、親御さんから信頼を得るメリットも感じますか?

ないこ:親御さんからの信頼は数字で見えるものではないので、実際どうかは正直わからないところもありますが、「いろんなところで見るから安心して応援させてあげられるよね」というようなグループ、会社にしたいなと思ってるので、今後も展開を広げていきたいなと思っております。

――娘さんがいれいすのみなさんを応援しているときに、親御さんが心配している……というようなことが、ないこさんの視界に入ることはあるでしょうか?

ないこ:今でもまだまだありますね。「そんなグループを推さないで」とか「そこのグッズは買えない」とか、「親に認めてもらえない」というリスナーさんからの声は今でもすごく見るんです。それを払拭できるようにするのが、我々の役目だと思っていますね。「ちゃんと大きいところでライヴしているんだよ」とか、「有名な企業さんとコラボしているんだよ」とか、「ちゃんと誠実に活動しているんだよ」ということが伝わって、少しずつ理解してもらえたらいいなと思っています。

疑似恋愛をさせるより、面白いものを作りたい

ないこ(撮影:堀江正俊)
ないこ(撮影:堀江正俊)

――2023年8月25日の東京ガーデンシアター公演では、みなさんがスクリーンに顔をアップで映していて、非常にアイドル要素も強いと感じました。二次元から三次元へと次元を超えるときに、どういうライヴにしたいとイメージしましたか?

ないこ:今でこそ東京ガーデンシアターという大きな会場でライヴをさせてもらっていますけど、ファーストワンマンライヴは吉祥寺CLUB SEATAというライヴハウスで、今と比べたらだいぶ規模が小さいところだったんです。そのときは、僕らいれいすとしてはもちろん初ライヴだったんですが、メンバーの半数はそもそもライヴ会場に演者として立ったことがなく、これが人生で初めてのライヴ出演だったりしたこともあり、まずは無事やりきることしか頭になかったですね。というか、僕もそのときが人生初ライヴでした。

――歌い手グループはいろんな受け止め方をされるかと思うんですが、アイドル的な受け止め方をされることは想定内でしたか?

ないこ:他の歌い手グループさんの活動を分析していたときから、ある程度そうなってくるとは思っていました。でも、いれいすの場合はどちらかというと、「面白いことをしたい」とか「ライヴパフォーマンスで見せたい」とか、「ただネットのインフルエンサーが舞台に立っているだけのライヴにはしたくない」と思っているメンバーがすごく多いです。ライヴを見に来てくださった方が、「歌い手ってここまでやるの!?」と感動して帰ってくださるような、完成度の高いライヴを創っていくために、日々努力しています。

――歌詞がスクリーンにずっと出ているのもこだわりでしょうか?

ないこ:一緒に歌えるし、初めて見た人にも何を言っているかわかるし、どんな意味が込められているのかも伝わりやすいなと思っているので、すごく良い演出だなと思っております。

――生バンドを従えていることにもこだわりを感じました。

ないこ:やっぱり生音と生歌で音楽を伝えるライヴにしたい、という思いが強くあります。いれいすメンバーのうち、6人中3人はバンドをしていた経験があって、悠佑(ゆうすけ)は10年近くバンド活動に人生を捧げてきました。ということもあり、ちゃんとライヴは生音、しかもライヴ専用のサウンドでやっていきたいというのもこだわりのひとつとしてありますね。

――いれいすのみなさんの感覚としては、アイドルとバンドのどちらの感覚でしょうか?

ないこ:どちらかというとアイドルだと思いますね。ただ、先述の通り、「ただインフルエンサーが舞台に立っているだけのライヴ」には絶対したくないので、ライヴパフォーマンス、演出、ダンス、MC、すべて未経験の状態から努力し続け、来てくださる来場者さん全員が感動するようなライヴを創っていきたいと思っています。

――転換時に、バーベキューの食材をめぐってだとはいえ、メンバー同士で恋愛リアリティーショーのような映像『肉の約束』が流れたのには衝撃を受けました。女の子の悲鳴がすごかったです。

ないこ:あれは、僕が制作チームと一緒に作ったものですね。ただ、僕たちいれいすは、「お客さまに疑似恋愛体験をさせよう、ドキドキさせよう」みたいな、少女漫画や恋愛ゲームみたいな売り方を押し出しているグループではないんです。『肉の約束』を制作しているときは、「恋愛リアリティーショーみたいなノリで、ただ焼き肉しているだけの男6人って面白くね?」っていう話から生まれたんです。僕らの感覚でいうとお笑いですね、あれは。

――でも、見ているファンの方の悲鳴はすごかったですね。

ないこ:そうですよね。それはうれしい誤算ではありますね。ライヴ会場ではありがたいことに、メンバーの些細な仕草ですら、お客さんから歓声や悲鳴が上がるので、『肉の約束』でもそうなるだろうなと思っていましたけど、楽屋裏で僕らは爆笑していました。笑いが好きなメンバーが多いので、どこかで笑えるような面白いものを作りたい、という思いはずっとありました。

――いれいすのみなさんは、ライヴを通してどんな価値を提供したいと考えていますか?

ないこ:初めてライヴに来るのがいれいすのライヴというお客さんがすごく多いので、二度と忘れられないようなライヴの思い出を作りたいし、そうなれるクオリティーのライヴにしたいと思っています。「歌い手グループでここまでやっているところはないだろう」という圧倒的なクオリティーをお見せしたいです。ダンスパフォーマンスだったり、映像だったり、僕らにできるすべてで圧倒したいなという気持ちはありますね。男でも女でも、若くても老いていても、誰が初めて来ても楽しめるようなライヴにしようと思っています。

お金儲けをしたくて組んだグループではない

ないこ(撮影:堀江正俊)
ないこ(撮影:堀江正俊)

――いれいすのみなさんは、特典会はやっていないんですか?

ないこ:ライヴに紐づいたものは、今のところはないです。CDを出したときに、抽選で100名様にオンライン握手会があるぐらいで、ほとんどしてないですね。

――その100人の当たった方の反応っていかがですか?

ないこ:人それぞれですが、面白いことをしてくるリスナーさんもいますし、めちゃくちゃ準備してかわいい姿でオンライン握手会に参加してくださる方もいます。僕はないこ枠で応募してきてくださる方の反応しかわからないですが、「わーオタクだ! かわいい!」って思うような反応が多くて好きです。

――やっぱり落ち着いている状態じゃない方もいると思うんですよ。

ないこ:半分くらいはそうです。「えっ、まって、無理」状態になっててかわいいです。だから面白いですね。

――ずっと悲鳴を上げて終わってしまう方もいるんですか?

ないこ:たまにそういう方もおられますね。そういう場合はこちらから話題を振ってみたりしてますが、絶叫してるところも含めて「うちのリスナーだ!」って感じがするので僕は好きです。

――ファンの方たちに個別に接してみて、どんな感覚でしょうか?

ないこ:このインタビュー受ける少し前にちょうどオンライン握手会があったんですけど、感謝の気持ちしかないです。1分間という制限があるんですけど、全然足りないですね。ありがとうの気持ちを伝えきれないので、僕らももっと話したいし。この100人だけじゃなくてもっとたくさんの方に、ちゃんと感謝の気持ちを伝えたいっていうのが、すごく大きいです。

――ライヴに紐づいた形の特典会を開催したら、ファンの方も殺到すると思うんですよ。でも、ファンとのコミュニケーションの濃度を上げることによってマネタイズするという選択はしてないんですね。

ないこ:そうですね。お金儲けをしたくて組んだグループではないので、特典会のようなものは最小限に抑えようと思っています。そういう1対1のコミュニケーションをするんだったら、僕らが配信したら2,000~3,000人来てくださるんで、そこでなるべく多くの方にちゃんとコミュニケーションを取っていきたいという気持ちが大きいです。時間が無限にあれば1対1で全員とコミュニケーションをしたいんですけど、時間には限りがあるので。動画だったり配信だったり、より多くの方に楽しんでもらえるようないれいすでありたいと思っています。

――ないこさんが「お金儲けをしたくて組んだグループではない」と話していましたが、そういうスタンスと、会社の代表としてのバランスはどう考えているんですか?

ないこ:やっぱり会社を経営していく以上、キャッシュフローは頭を抱えますよね。お客さんにも言っているんですけど、「お金はもちろんいただきます。そうじゃないと僕らはライヴも開催できない、グッズも作れない、何もできないから。みんなに楽しんでもらえる活動するために、みんなにグッズを買ってもらったり、チケット代を払ってもらったりして、お金はもらいますけど、できる限りみんなに還元する形で僕らは活動していきます」と。なのでリスナーさんからもらったお金は、リスナーさんが楽しんでもらえることのために極限まで投資して、ギリギリ会社が生きてればいいかなと僕は思っています。

――歌い手グループを増やす方向にはいかないわけですか?

ないこ:実は、今VOISINGとして4つ目のグループのオーディションを開催しています。

――会社が大きくなったほうがいいという方向性なのか、コンテンツのバリエーションを増やしてより喜んでもらうための方向性なのか、どちらでしょうか?

ないこ:どちらかというと後者ではありますね。僕らの会社としては、歌い手や2.5次元アイドルの市場をもっと盛りあげていかないといけない、という使命がありますので、3つのグループより4つのグループでやったほうが馬力も出るし、もっといろんな分野にアプローチができると考えているんです。

武道館公演は伝説の一日にしたい

ないこ(撮影:堀江正俊)
ないこ(撮影:堀江正俊)

――2023年10月9日には、日本武道館公演が発表されました。ないこさんは、3年で日本武道館に行くことは、最初に予想できましたか?

ないこ:結成当初はまったく予想していなかったですが、リスナーのみなさんに誓った約束だったので、有言実行することができてとても嬉しいです。

――3周年のタイミングでの発表になりましたね。

ないこ:そうですね。リスナーのみなさんに、公約として「3年以内に発表」と言っていたので、発表のタイミングとしては3周年が一番ふさわしいかなと思っておりました。

――なぜ公約を実現できたとないこさんは分析していますか?

ないこ:メンバー6人の泥臭い努力が実を結んだと思っています。結成当初から文字通り死ぬ気で、生活を削って活動し続けているので。掲げた目標や夢は、僕たち6人とリスナーの全員で、絶対に叶えようと、一丸となって努力し続けているのがいれいすです。

――武道館公演発表までの3年間、一番葛藤したこと、苦労したことはなんでしたか?

ないこ:すごい正直なことを言うと、ずっと葛藤していますし、ずっと苦しいです。ほぼ休まず、ずっと3年間ほぼプライベートの時間もなく活動し続けていて、活動自体は全然嫌ではないですし、すごく楽しくやらせてもらっているんですが、単純に肉体的限界も感じますし、数字が伸び悩んだら僕らもどうしたらいいかを必死に考えます。そういう試行錯誤を常に続ける3年間でした。なので葛藤や苦労は日常茶飯事です。

――ほぼ休まずに活動してきて、遂に実現する日本武道館公演は、どんなものにしたいでしょうか?

ないこ:伝説の一日にしたいですね。具体的にはまだ言えないですが、応援してくださっている方すべてが満足するようなものには絶対したいです。きっといれいすは今後もっと大きなステージまで行くと思うんですけど、「でも武道館は特別だったよね」と言われるような演出や内容にしたいなと思っています。それだけ僕たちいれいすにとって武道館ライヴは特別なものなんです。

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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