【千葉ジェッツ】川崎相手に外国籍選手2人が欠場しながらの連勝は正に言い訳なしのチームであることの証
3月30日と31日に行われた川崎ブレイブサンダース戦、千葉ジェッツは23日のアルバルク東京戦でクリストファー・スミスが右のハムストリング、ジョン・ムーニーが27日の宇都宮ブレックス戦で左肩を痛めて欠場。アイラ・ブラウンが帰化選手としてプレーしているとはいえ、外国籍選手はゼイビア・クックスのみで試合に挑んだ。身長200cm以上の選手がゼロというメンバー構成ながら、千葉は川崎相手に見事な2連勝。選手、コーチ、スタッフ、そして千葉を応援する以外の人たちからすれば、この結果は驚きでしかなかっただろう。
「確かにBリーグが始まってからのシーズンを考えると、多分僕の記憶では1回もケガ人、特に外国籍の選手が長期離脱するということはなかったような気がする」
富樫勇樹がこう語ったように、今季の千葉はメンバーを揃えた状態で臨んだ試合がほとんどないに等しい。シーズン序盤に原修太とムーニーが欠場し、その後二上耀が今季絶望となるケガに見舞われ、ディージェイ・ステフェンズも2月26日に故障者リスト入り。チャンピオンシップ(CS)出場争いで大事な終盤にスミスとムーニーが立て続けに離脱したことは、千葉にとって大きなダメージになってしまうと思われても仕方ない。
天皇杯決勝で琉球ゴールデンキングスに大勝して2連覇を達成するなど、メンバーを揃えた時の千葉が本当に強いのは多くのファンが知るところ。その一方で、8戦全勝で頂点に立ったイーストアジア・スーパーリーグは、富樫が素晴らしいプレーをしたことに加え、ジョン・パトリックコーチが限られたメンバーをうまくやり繰りしながら手にした勝利。これは正に欠場者が出ても次に出場機会を得た選手が仕事をする“NEXT MAN UP”を象徴するものであり、先週末の川崎戦もそれを体現していた。
第1戦は先発で起用された特別指定選手の内尾聡理が、川崎の司令塔かつ得点源でもある藤井祐眞を3点に限定させるのに貢献。オフェンスでは原と富樫勇樹が7本ずつ3Pショットを決めて牽引し、クックスも豊富な運動量を武器に17点、18リバウンドを記録して勝利を手にした。
第2戦での川崎は、ニック・ファジーカスとジョーダン・ヒースの高さを最大限に活かして優位に立ち、1Qで最大16点のリードを奪った。千葉に難しいショットを打たせ、リバウンドを奪ってからの速攻で得点できていたのもその理由。しかし、千葉のパトリックコーチは試合開始から4分半ちょっとで2回タイムアウトをコールすることを強いられたが、ここから選手たちにディフェンスでよりタフに、そしてフィジカルに戦う姿勢が表に出始める。
特にベンチから出てきた西村文男と小川麻斗のガード陣が、オフェンスの遂行力を上げることとディフェンスの強度を高めるきっかけを作った。また、クックスはボールハンドリングとスピードのミスマッチを最大限に活かし、川崎のビッグマンたちをアタックすることで得点機会を創出する。小川が2本の3Pショットを決めるなど、ボールと選手の連動性も向上した千葉は、1Qから2Qにかけて22連続得点により、36対28と逆転に成功した。パトリックコーチは試合をこう振り返る。
「理想的なスタートじゃなかったけど、タイムアウトを取ってから結構みんな真剣にディフェンスをやるようになった。特にファストブレイクポイントで第1クォーターは結構やられたけど、第2クォーターから試合の終わりまでほとんどなかった。ベンチからの貢献が非常に大切で、文男が12分でプラス20。最初はあまりストラクチャーというか、抵抗しなくてビハインドになったが、文男が入ってきたらチームバスケットが展開できた。また、特に麻斗は+33の活躍。3Pも入ったけど、結構ディフェンスで頑張っていたし、ターンオーバーもなかったからすごく良かった」
川崎を2Qで11点、3Qで7点に抑え込んだディフェンスは圧巻だった。千葉は個々の選手たちが持つ機動力を最大限に活かし、ピック&ロールに対して2人でプレッシャーをかけながら、素晴らしいローテーションによって川崎に数的優位を作らせず、簡単にオープンショットを打たせなかった。16点ビハインドの状況から最大で27点のリードを奪っての勝利は、千葉が逆境に直面しても簡単に崩れないチームであることを示している。
「“For the team(チームのために)”で、だれかがケガしたらみんなでステップアップしてくれるのは、コーチとしてありがたい」
パトリックコーチの言葉が示すとおり、千葉はムーニーとスミスが不在でも出場機会を得た選手全員が全力でプレーするだけでなく、勝利に貢献できるチームだ。天皇杯で活躍して優勝した経験によって、小川が大きな自信を手にしたことも大きい。メンバーが揃わない戦いはレギュラーシーズンの最後まで続くかもしれないが、富樫はチームの現状についてとても前向きだ。
「かなり大きなケガを抱えながらチームはプレーしていますが、いい成長ができる試合が続いています。5月に(選手全員が)出揃った時にどういうチームなれるかというのが、今はすごく楽しみです」
川崎との2試合で25点、16点を記録した原は、逆境に直面しても跳ね返すことができる今のチームについてこう説明した。
「去年から“(大倉)颯太や耀がケガをしていたから慣れている”というのは語弊があるかもしれませんが、それにプラスしてチャンピオンシップに出られるか出られないかの際にいるという自覚をみんなが持っているというところじゃないかなと…。(外国籍選手が)いないから負けていいなんてあり得ないし、パトリックコーチが練習中から引っ張ってくれるというのもあると思います」
川崎戦での千葉は、正に“NO EXCUSE”、言い訳をしないメンタリティがしっかりとチームに浸透していると感じた。4Qにショットクロックの問題で試合は一時中断したが、疲労が限界レベルに近づいていた千葉の選手たちからすれば、体力回復の時間に当てられるという幸運にも恵まれた。これは、外国籍選手2人を欠く状況でも言い訳をせず、全力で戦い続けたことが報われた瞬間だったのかもしれない。
ワイルドカードを争う真っ最中にある千葉だが、CSに進出すれば他の7チームと同じスタートラインに立てる。アウェイでの戦いが続くことになったとしても、今季の戦いで浸透した“NEXT MAN UP”と“NO EXCUSE”のメンタリティを失わない限り、彼らが切望する結果に向かって前進することは十分に可能だ。彼らが目指すゴールは、昨季逃したB1のタイトル獲得である。