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国民生活センターからも注意喚起!マッチングアプリから投資サイト誘導されて被害に遭う男性が続発中。

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:アフロ)

海外の投資サイトに投資した結果、お金をだまし取られる被害は増加の一途をたどっています。マッチングアプリなどを通じて知り合った外国人の異性から紹介されるケースが多く、深刻な状況になってきています。

こうしたなか、国民生活センターからも「出会い系サイトやマッチングアプリ等をきっかけとする投資詐欺にご注意を-恋話がいつの間にかもうけ話に-」との注意喚起が出されました。

「マッチチングアプリでは、気軽にパートナーを探せる一方、本人確認の徹底が難しい」ことから、被害に遭ってしまうとしています。

出会い系サイトやマッチングアプリ等を介した投資に関する相談件数は、2019年度は5件だったものが、20年度は12月31日時点で40件にまで増えています。

被害相談の多くは30歳~40歳代の男性で、既支払金額の平均は192万5776円ということです。

だます側は、貯金もあり、借金もでき、仮想通貨などの投資にも興味を持つような、ネットを使いこなす世代の男性を狙ってきています。

同センターが公表した相談事例からもわかるように、マッチングアプリから投資サイトへ誘導してお金をだまし取る方法は、多種多様であり、複数の海外の詐欺的組織の存在が伺われます。

被害が増えている、30歳~40歳代男性にスポットをあてます。

すでに「仮想通貨で「170万円騙し取られた」男性の告白~マッチングアプリの女性に乗せられて挑戦」(東洋経済オンライン)を記事にしましたが、この被害者も30歳代で、マッチングアプリで出会った女性はシンガポール人でした。

アジア人になりすました異性が、投資サイトに誘導するケースが続発してます。

今、マッチングアプリでアジア系の女性と出会って恋をしている、あなたも気をつけた方が良いかもしれません。

私のもとに寄せられた被害報告をみると、だましの手口にも共通性がありますので、複数の組織ではありますが、根っこは同じ指南グループにつながっているかもしれません。

160万円がワンコインになった、被害男性のケース

40歳代男性は、昨年9月に出会い系アプリで、20歳代の台湾人女性と知り合いました。

彼女は中国で幼稚園の経営をしており、親も実業家とのことでした。

ラインでのやりとりをするなかで、彼女は「日本が好きで、結婚して日本に住むのが夢です」と言ってきます。

彼女はとても美人で、彼のタイプでした。互いに「愛している」の言葉をかわすなかで、結婚も意識するようになります。

1か月ほどが過ぎると、女性から「将来に備えてお金を貯めましょう」と言われて、紹介されたのが「I」という投資サイトでした。ここでは、ビットコインなどの仮想通貨を使って投資するようになっていました。

10月中旬に2回に分けて60万円を送金します。

するとサイトには、約5700ドルが表示されます。

しかし彼女からは「まだ資金が足りないから、もっと出してほしい」と言われます。

彼が躊躇していると、愛をちらつかせながら、ダメを押します。

「もし100万投資したら、私からも300万円を貸してあげね」

彼は借金をして、100万円を送金しました。彼女から300万円の送金もあったようで、一気にサイト上のお金は約47000ドル(約500万円)まで増えました。

その後も、彼女の指示で投資を続けると、75000ドル以上(約800万円)になります。

彼女からは「資金をもっと多くすれば、さらにお金が増える」と言われますが、「さすがに、これ以上はもうお金は集められない」と、彼は要求を拒みます。

追加の出資を拒んだら・・・

その後に行った投資では、一気に5万ドル以上(500万円以上)の損をしてしまいます。

それでも「大丈夫、取り返せるから、頑張ろう」との彼女の言葉を信じて、再び、指示通りの投資を行うと、またもや2万ドル以上の損をしてしまい、サイトの画面表示は、5ドル(約500円)ほどになってしまいました。

被害者から提供されたサイト画面
被害者から提供されたサイト画面

ここからわかるのは、送金を拒み続けると、投資に失敗しさせて、一気にサイト上の金額を減らしてくる手法です。

シンガポールの女性から誘われて、170万円だまし取られた30歳代の男性も、追加の出資を断ると、やはり15000ドルが「0」になってしまっています。

これが、一つ目の共通するだましの手口です。

彼は「どうするんだよ。お金がなくなったぞ!」と問いつめると、「あなたの操作ミスで負けた」と彼女は言い返してきます。しかし彼は指示通りに投資を行っており、言いがかりです。

お金がなくなった現実を前に、ネット調べると「I」というサイトが、中国系の詐欺サイトであることを知ります。

彼女に、このことを突きつけると、急に彼女は「貸した300万円を返してくれ」と借金の返済を迫ります。

「そんなお金はない」と答えると「あなたが持っている車を売ってでも、返せ!」と言います。

さらに「お金を返してくれないなら、警察に通報する」と言うと、彼も「それはこっちのセリフだ!」と、ライン上で大喧嘩になりました。

それから間もなくして、彼女からの連絡は途絶えます。

男性は160万円をだまし取られました。

現在、サイトはアクセスできず、残っていた約5ドルのお金さえも消えてしまいました。

ちなみに、彼女が返せといった300万円は「見せ金」ですから、返済する必要はありません。ですが、彼は弁護士さんに相談するまでは、返さなくてはならないと思っていたそうです。そうした律儀な性格に、だます輩はつけこんできたのです。

ホワイトペーパーまで、見せてくる用意周到さで、だまされた!

30歳代男性は、10月にマッチングアプリで上海に住む、20歳代の女性と知り合いました。1か月ほど、英語でのたわいもない話をするなかで、叔父が仮想通貨のマーケットに詳しく、彼女自身も投資の知識を持っていることを知ります。

実際に、彼女の言った通りに仮想通貨も値上がりする様子も見せられました。

そうするなかで、「P」と呼ばれる、シンガポールで運営されている、プラットフォーム(仮想通貨で取引するサイト)を紹介されました。

被害者提供のプラットフォーム
被害者提供のプラットフォーム

ここでは、「X」という独自のトークンに投資して、それが上場(仮想通貨で売買できる状況)となれば価値が生まれて、儲けられる仕組みになってます。

サイトからは、上場に向けた具体的な内容をまとめたホワイトペーパーまで、見せられました。

彼女の勧められるがままに、3回に分けて国内の仮想通貨交換所でビットコインを購入し、「P」への送金を約100万円しました。サイトでは、ビットコインを「X」にトレードする手順を行います。

彼女はさらなる追加の出資を求めてきます。

彼が断り続けていると、12月になってラインから、突然彼女はいなくなります。

サイトのヘルプセンターともラインでつながっていたので、そちらに連絡を取りましたが、既読にすらならなくなります。

今年2月、ついにサイトへアクセスできなくなりました。

もうひとつの共通項は、自分の意志で投資を行うのではなく、相手から指示を受けて送金させる点です。

それを可能にするために、出会ってすぐに投資の話を持ちかけず、1~2か月間、メールなどでのやり取りをしながら、タイムラグをおきます。

そして男性が警戒心を解いて、心を許したと見るや、一気に金をむしり取ります。

国民生活センターは「海外の詐欺的な事業者に関して、その所在がわからず、連絡もつかなくなった場合、事業から返金を受けることは大変困難です。」と、注意しているように、身元のはっきりしない海外の投資サイトの場合、お金は戻ってこない可能性も考慮する必要があります。

知っておきたいのは「相手が海外に所在する業者であったとしても、日本に住む人に対して、投資勧誘をするには、金融商品取引業の登録が必要になる」(同センター)ことです。

お金を投資する前に、相手の事業者が金融庁への登録を行っているかどうかを、金融庁HP(「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」)で確認してください。

今回のようなケースでは、「プロ向けファンド届出者(適格機関投資家等特例業務届出者)等の状況」(金融庁HP)や、無登録で金融商品取引業を行っている海外所在業者を公表する「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」(同HP)も参考になります。

金融庁へ届けを出していない業者の投資サイトへの送金は、絶対にしないでください。

もしトラブルに遭った時には「188」(消費者ホットライン)に電話をかけて相談するか、海外事業者とのトラブルを扱う、国民生活センター越境消費者センター(CCJ)でも相談を受け付けています。

メッセージのやり取りを数多くしていると、相手に好意や信頼を抱いてしまい、一度も会ったことのない相手のはずなのに、運命で引き寄せられた、出会うべくして出会った人と思いこんでしまいがちです。

しかしこの時、お金の話が出てきたら、警戒して、立ち止まってください。

私たちの思い込みを利用して、相手はだまそうとするからです。

被害に遭わないためには、こちらもタイムラグをおいて、投資先を調べ、誰かに相談して助言を仰ぐ。冷静な目で投資サイトの真偽を確かめることを忘れないでください。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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