N.Y.の空を”地獄絵図”に変えた、カナダの森林火災の実態
ある人は、今のニューヨークをこう表現しました。
カナダからやってきた森林火災の煙が、巨大都市を”火星”へと変貌させています。
屋外授業は中止、N.Y.ヤンキースの試合もブロードウェイの公演も取りやめ、航空便も大幅に乱れています。大気汚染レベルは世界最悪で、「多分、タバコを吸うより、かなり体に悪い」と医師が忠告しているほどです。
ニューヨークの空がとりわけ赤いワケ
カナダの煙が、とりわけニューヨークの空気を汚しているのはなぜなのでしょうか。
その原因は、低気圧です。
ニューヨークの北東には低気圧が渦を巻いています。この低気圧の周りを流れる北西の風が、カナダから山火事の煙を流し続けているのです。
史上最悪の大気汚染レベル
7日(水)午後のニューヨークの大気汚染指数は、“危機的状況”の領域である「405」を記録し、1976年に始まった観測開始以降でもっとも高くなりました。
しかも、これまでの最高値である、42年前の「279」をはるかに上回っています。
それもそのはず、煙の源のカナダでは、前代未聞の森林火災が起きています。
では、一体どれほどひどいのでしょうか。
ケベック州史上、過去最悪の山火事
今春、カナダは記録的な高温と乾燥に見舞われました。
5月にはあちこちで真夏の陽気となり、統計史上もっとも気温の高い5月を記録したほどでした。そのうえ雨も非常に少なく、今年はこれまでに2,400件の森林火災が発生しています。
そのうち現在進行形の火災は430件で、うち半数は手の付けられない状況といわれています。オランダ一国の面積をはるかに上回る50,000平方キロが焼け、この時期の平均の20倍近くに上っています。
そのような中で、今月1日(火)にはカナダ東部を低気圧が通過し、多数の落雷が起きました。
この季節外れの雷の嵐をきっかけに、ケベック州では3日間で150件の山火事が発生したといわれています。まだ1年の半分も経っていないのに、ケベック州はすでに過去最悪の山火事の年を迎えているのです。
煙と火災の予測
いつになったらニューヨークの空は“火星”から“地球”に戻るのでしょうか。
幸いにして、9日(金)には雨が予想されており、10日(土)には状況が回復する見込みです。
とはいえ、大気汚染の根本原因は、なかなか解消されません。
カナダ気象庁の発表したこの夏の山火事の危険度によれば、カナダ全体で平年よりもリスクが高く、広い範囲で非常に高くなっています。つまり今度も風下の地域では、煙に包まれる可能性があるというわけです。
森林火災による煙は、肺に炎症を起こし、免疫を下げて、ややもすると新型コロナウイルスなどの感染症もかかりやすくするといわれています。