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FB五郎丸&PR山下は海外で、サンウルブズでは13人の日本人がスーパーラグビーデビューを果たした!

斉藤健仁スポーツライター
前半27分から出場し、SRデビューを果たした五郎丸(写真:ロイター/アフロ)

2月27日、東京・秩父宮ラグビー場が約2万人のラグビーファンで沸いた。今年から日本を本拠地とするサンウルブズが、南半球4カ国と日本の18チームで争われる「スーパーラグビー」に参戦し、その開幕節が行われた。

また同じくニュージーランドやオーストラリアでも開幕節が行われ、チーフス(NZ)に期限付き移籍した日本代表PR山下裕史がPRとして初先発&初出場し、レッズ(オーストラリア)に移籍した日本代表FB五郎丸歩も前半27分から途中出場を果たし1PG・1Gで5得点を挙げる活躍を見せた。

過去3年で日本人のスーパーラグビー選手はたった5人しかいなかったものの、2月27日の開幕節でサンウルブズが参戦したこともあり、一気に15人増えて、計20人となった。

◇SH田中、HO堀江が2013年に開けたSRへの扉

ほんの数年前まで日本人選手がスーパーラグビー(SR)で活躍するなんて「夢物語」と思っていたラグビーファンも多かったことだろう。2011年のワールドカップで日本代表が1分3敗に終わり、翌2012年、SH田中史朗(現ハイランダーズ)が「日本のために何とかしたい」と海外挑戦を決めて、同時に海外志向が強かったHO堀江翔太(現サンウルブズ)もNZへと渡った。

クラブラグビーから挑戦し、ITMカップで実績を積んで、SH田中はハイランダーズと、HO堀江はレベルズとの契約を勝ち取った。そして2013年2月22日、時差の関係でややハイランダーズのSH田中の方が早かったが日本人として初めてスーパーラグビーデビューを果たし、同日、当時はレベルズのHO堀江も日本人FWとして初めてスーパーラグビーデビューを果たした。2人に続くかのように2015年にはNO8リーチ マイケル(チーフス)、FLツイ ヘンドリック(レッズ)、PR稲垣啓太(レベルズ)も公式戦に出場を果たした。

彼らの経験が、2015年のラグビーワールドカップでの日本代表の躍進の一つの要因となった。※2014年にはSO/CTB立川理道(ブランビーズ)、2015年にはWTB山田章仁(フォース)、WTB/FB松島幸太朗(ワラターズ)も挑戦したが公式戦出場はなかった。2014年、日本代表のCTBマレ・サウはレベルズで活躍した。

◇サンウルブズがデビュー、日本人選手13人が新たにSRのピッチに立った

迎えた2015年2月27日、日本を本拠地とするサンウルブズがついにスーパーラグビーのデビュー戦を迎えた。そして約2万人の大観衆の中、一気に13人の日本人スーパーラグビー選手も誕生した。

※サンウルブズでSRデビューを果たした13人の日本人選手

先発メンバーはこちら

★2015年ラグビーワールドカップ日本代表メンバー

先発… PR垣永真之介  LO大野均★ SH日和佐篤★ 

CTB 田村優★ CTB 立川理道★  WTB 笹倉康誉 WTB 山田章仁★

控え…PR三上正貴★ PR 山本幸輝 HO 木津武士★ 

LO 真壁伸弥★ FL細田佳也 SH茂野海人

試合は相手のフィジカルに受けていた部分もあり、試合は残念ながら13-26で敗戦。それでも初代キャプテンのHO堀江翔太がトライをした後、後半20分からの数分間はサンウルブズに「勝つ雰囲気」があったのも事実だ。

サンウルブズ初のトライは堀江だった(撮影:斉藤健仁)
サンウルブズ初のトライは堀江だった(撮影:斉藤健仁)

サンウルブズの歴史的な初トライがHO堀江だったことは、殊更に感慨深かった。日本代表HOでもあった堀江は昨年、「日本のスーパーラグビーチーム(※当時はサンウルブズというチーム名はなかった)の参戦がなくなるかもしれない。一回断ったらもうダメだと思う」と、他のチームからの誘いも断り、サンウルブズ入りを決めた(事実フランスの強豪、トゥーロンからも誘われていた)。

そして「堀江が参加するなら……」とPR稲垣、SO立川、LO真壁伸弥ら日本代表メンバーが後に続いた。堀江が他のチームに移籍していたら、どうなっていたのかは想像するのは難しくない。そんな堀江は、初代キャプテンに選出され、サンウルブズとして先頭に立ち、秩父宮ラグビー場に入ってきた。「ここ(秩父宮ラグビー場)でスーパーラグビーができるなんて夢のようでした」(HO堀江)

初トライが堀江だったのは必然だったのかもしれない。

◇五郎丸、山下の2人は海外でSRデビューを果たした

さらに海外で2人の日本人選手がスーパーラグビーデビューを果たした。

まずレッズ(オーストラリア)に移籍した日本代表FB五郎丸歩だ。2月27日、シドニーで行われたアウェーでのワラターズ戦にリザーブとして名を連ねた(FLツイ ヘンドリックはSR初先発だった)。そして前半27分、味方のCTBが負傷したこともあり、FBだったカーマイケル・ハントがCTBに上がり、FBに五郎丸が入った。試合は10-30で負けてしまったが、五郎丸は1PG、1ゴールを決めて5得点。トライではなくキックによる日本人選手の得点は初となった。

ただPGを1本外してしまったが、少し「ルーティーン」が乱れているように映った。今後、緊張もなくなり、キックの成功率も上がっていくだろう。また積極的に、タックルや「ロール」と呼ばれるラックで相手をはがすプレーを献身的に見せていた。もう少し周りの選手とのコミュニケーションが取れてくれば攻撃でも機能するはずだ。

「また新たな旅が始まった。今は、とにかくラグビーが楽しい。忘れかけてた感覚がかえってきた。」(五郎丸の公式twitterより、原文のママ)

さらに2月27日、チーフスはNZのクライストチャーチでクルセイダーズ(NZ)と対戦した。日本代表PR山下裕史がチーフスへ期限付き移籍し、開幕戦から先発出場。後半14分までプレーして、アウェーのチーフスが21-27で勝利を収めた(日本代表キャプテンのNO8リーチ マイケルもチーフスに在籍しているがメンバー入りせず)。

スクラムの要である右PRの山下は前半2分、いきなり山下は相手のスクラムにプレッシャーを受けて反則。前半38分にはマイボールのスクラムでターンオーバーされ、トライも失ってしまった。ほろ苦いデビュー戦となったが、まだ合流して間もない。今後、少しずつチームに馴染んでいくことだろう。

「開幕スタメンで出場しました!! 課題は修正するとして、、、最高の雰囲気、環境でプレーできた事に感謝します!! 最高でした!!!! 次も頑張ります!! 応援よろしくお願いします」(PR山下本人のtwitterより)

こうして、2016年のスーパーラグビーの開幕節(2月27日)、一気に15人もの日本人スーパーラグビー選手が誕生した。きっと、ラグビーをしている子どもたちは「サンウルブズやスーパーラグビーでプレーしたい!」と思ったに違いない。そして、4年前では考えられなかったことだが、今後は、スーパーラグビーという世界最高の舞台で活躍した選手たち中心となって、2019年、日本で開催されるワールドカップに出場するラグビー日本代表を支えていくことになるはずだ。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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