現役最後の打席をサヨナラ本塁打で締めくくったマイナーリーグ本塁打王
【引退試合の最終打席でサヨナラ本塁打】
現地時間の7月6日に、1人のマイナーリーグ選手がシーズン途中でありながら、現役生活に幕を閉じた。
選手の名はコディ・デッカー選手。今シーズンはダイヤモンドバックス傘下の3Aリノに在籍していた32歳のユーティリティ野手だ。
現役最後の試合となったサクラメント(ジャイアンツ傘下)戦では「6番・左翼」で出場し、8-9で迎えた9回の最終打席でサヨナラ2点本塁打を放ち、自らの引退に華を添えている。
このサヨナラ本塁打の場面を、動画付きでツイッターに投稿しているファンを発見したので、この記事にも添付しておく。デッカー選手のみならず、他の選手たちも普通のサヨナラ勝ち以上に盛り上がっているのが理解できるはずだ。
【マイナー通算204本塁打は現役選手最多】
現役最後の打席で本塁打を放ったということ自体、実はデッカー選手に相応しい締めくくり方だった。
というのも、彼は今シーズンを含めマイナーリーグ在籍11年を数え、この間記録した本塁打は204本で、現役選手の中で最多数を保持していた長距離打者だった。
もちろんMLBの通算本塁打数と比較すれば大した数ではないが、少しでも成績を残さなければ出場機会を奪われる厳しいマイナーリーグの世界で11年間も在籍し、204本塁打を積み重ねてきたことは、ある意味賞賛に値するといっていい。
【MLB出場はわずか8試合、12打席】
UCLA出身のデッカー選手は、2009年のドラフトでパドレスから指名を受けた。だが指名順位は22巡目と、決して高い評価を受けていたわけではなかった。
チームに合流してからはルーキーリーグからスタートし、順調にレベルを上げていき、プロ4年目の2012年には3Aまで昇格している。
そこからしばらくは2Aと3Aを往復する生活が続いたが、遂にプロ7年目の2015年にMLB初昇格を果たし、MLBデビューを飾っている。
だが昇格したのはロースター枠が拡大する9月以降で、出場もわずか8試合で打席に立ったのも12打席。結局打率.000のままシーズンを終え、そのオフにマイナーリーグのFA選手となり、パドレスを離れている。
【その後は計6チームのマイナー組織を渡り歩く】
パドレスを離れて以降のデッカー選手は、ずっと日陰人生を歩き続けることになる。
その後チーム解雇やトレードを繰り返し、計6チーム(ロイヤルズ→ロッキーズ→レッドソックス→ブルワーズ→メッツ→ダイヤモンドバックス)を渡り歩くことになったが、その間一度たりともMLB昇格するチャンスは訪れなかった。
デッカー選手の野球人生で最も輝いた瞬間は、WBCでイスラエル代表に選出されたことくらいだろう。2017年の第4回WBCではイスラエル代表として来日し、東京ドームでプレーしている。
【改めて痛感したMLBの厳しい現実】
MLBレベルで考えれば、デッカー選手の野球人生は成功したものとは言い難い。
だが最後の打席をサヨナラ本塁打で締めくくり、チームメイトに出迎えられた彼の姿を見ていると、野球選手としてこれほど素晴らしい幕引きをできた選手は決して多くはない。むしろマイナーリーグに11年間在籍し、自らの意思で引退を決められたことは幸せなことなのかもしれない。
本来ならデッカー選手のようなマイナーリーグ選手は、誰にも注目されることなくグラウンドを離れることになる。今回デッカー選手の引退記事を発見し、改めてMLBの厳しい現実を痛感させられた思いだ。