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新型コロナウイルス検査 次の課題は「検査要員の育成」

柳田絵美衣臨床検査技師(ゲノム・病理細胞)、国際細胞検査士
(写真:アフロ)

新型コロナウイルスの検査

■検査、保険適用へ

厚生労働省は、新型コロナウイルスに感染したかどうかを調べるPCR検査を、健康保険適用する、と発表した。

厚生労働省 令和2年3月3日付大臣会見概要(令和2年3月4日)

その「PCR検査」の方法が記された、新型コロナウイルス感染症の病原体検出マニュアル(2019-nCoV Ver.2.8 令和2年3月4日)が、NIID国立感染症研究所から発表された。

NIID国立感染症研究所 病原体検出マニュアル 指定感染症 新型コロナウイルス感染症 2020年3月版

■新型コロナウイルスはRNAウイルス

ウイルスはDNA(デオキシリボ核酸)ウイルスとRNA(リボ核酸)ウイルスに分類され、自己複製(増殖)するのに必要な遺伝情報をDNAに含むウイルスなのか、RNAに含むウイルスなのかの違いだ。

■どんな検査をするのか?

新型コロナウイルスはRNAウイルスに分類され、ウイルスの遺伝情報を含んだRNAを持っている。そのため、患者の体内に新型コロナウイルスのRNAが存在しているのか?を検出するのである。

RNAはDNAと比べ、分解しやすい性質を持っている。ヒトの唾液や汗、空気中にもRNAを分解する物質が存在しているため、RNAを取扱う際は専用の設備や器具が必要となることや、迅速に操作する必要がある。

検査の対象は喀痰(かくたん)などであり、喀痰などからRNAを抽出する。

抽出したRNAの中に新型コロナウイルスの遺伝情報(暗号)が存在するのか?、を調べる。その遺伝情報(暗号)を検出する工程の中に、「PCR法」(目的の遺伝子を増やす技術)と「RT-PCR法」(目的の遺伝子の有無を調べる)が用いられるため、「PCR検査」という用語で呼ばれているのだろう。

■検査要員の育成を!

この検査では、

  • 未知に近いウイルスの取扱い
  • 検体の処理
  • 遺伝子検査技術
  • RNAの取扱い

の4点が肝となる。

しかし、このマニュアルに従い検査が出来たとしても、検査手技による偽陽性や偽陰性となると全く意味がない。

正確かつ迅速に、そして検査している者が感染しないように、この検査を実施できるようになるには、数日、数週間では厳しいだろう。

一刻も早く、この検査を「正確かつ迅速」に実施できる検査要員を増員するために、育成に力を注ぐことが求められる。

臨床検査技師(ゲノム・病理細胞)、国際細胞検査士

医学検査の”職人”と呼ばれる病理検査技師となり、細胞の染色技術を極める。優れた病理検査技師に与えられる”サクラ病理技術賞”の最年少、初の女性受賞者となる。バングラデシュやブータンの病院にて日本の病理技術を伝道。2016年春、大腸癌で親友を亡くしたことをきっかけに、がんゲノム医療の道に進み、クリニカルシークエンス技術の先駆者として活躍。臨床検査専門の雑誌にてエッセーを連載中。講演、執筆活動も多数。国内でも有名な臨床検査技師の一人。現在、米国にある世界トップクラスのがん専門医療施設のAI 病理ラボ研究員として奮闘中。

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