根尾昴・上原健太が挑戦…話題の二刀流出場について上原浩治が言いたいこと
本人ができるなら、やればいいと思う。だけど、決して甘くはない。プロ野球界で話題を集める投打の「二刀流」挑戦についてである。
一人は中日の根尾昂選手。5月21日の広島戦で1|10の8回にプロ初登板。1回を1安打無失点に抑えた。5月29日のオリックス戦でも大差をつけられた8回のマウンドに上がって、1安打無失点。最速150キロという球速表示と、甲子園優勝投手の看板から話題をさらった。
TBS系「サンデーモーニング」にリモート出演した際、「ピッチャーとしての根尾君というよりも、野手の中での根尾選手。他の投手陣を休ませるためにというところ」と自分の考えを口にした。
根尾選手の能力は疑うまでもない。ただ、「投手・根尾」をプロの評価軸でいえば、「査定」でどうかということになる。根尾投手が登板した場面はいわゆる「敗戦処理」である。イニング消化のためなら、他の投手を休ませて、根尾選手に〝穴埋め〟をしてもらいたい。ベンチの思惑はおそらくこういうことだっただろう。契約は個々に結ぶものであるが、一般的には「敗戦処理」の場面での登板が年俸査定にプラスに働くことはほぼない。つまり、「プロの投手」としての評価を得られない場面でのマウンドだったということになる。メジャーでも大差がついた場面では、野手が投げる場面がある。
もちろん、チームへの貢献度はある。投手陣を休ませてくれたこと、また「根尾投手の登板」という話題が球団の注目度アップにつながったかもしれない。評価されるなら、根尾選手のこうしたチームへの貢献度であって、「二刀流」ではないと思う。ボールの切れはどうか。空振りを奪える150キロか。まっすぐ以外の変化球や組み立ては。本気で取り組むなら、2、3年は必要ではないだろうか。
ただ、登板の次イニングに打席に立つ機会を得ることができるなら、「野手・根尾」としてはチャンスだ。マウンドよりも、次の打席の結果こそが問われるのではないだろうか。
日本ハムの上原健太選手も今季は「二刀流」を目指し、2軍では指名打者や外野手として出場していたそうだ。5月25日のヤクルト戦では「8番・投手」で初の投打同時出場。左中間二塁打を放ち、高い身体能力をみせた。
ただ、セ・リーグの本拠地での交流戦だから、投手は誰もが打席に立つ。相手投手はあくまで「投手・上原」との対戦という心証をぬぐえていなかったはずだ。投手が打席に入ると、対戦する投手は配球に注意する。けがをさせない配慮から、ピンチでもなければ、きわどいコースでの勝負は避ける傾向にある。
上原投手は6月1日の広島戦で先発。本職で615日ぶりの白星をマークした。打者目線での練習が、投手としての新たな気づきを得られることにつながるなら、それこそが最大の成果だと思う。
大事なのは〝本職〟での活躍のはず。メジャーリーグ、エンゼルスの大谷翔平選手が挑戦したことで注目が集まる「二刀流」だが、彼のプレーは異次元のレベルにある。メディアで頻繁に使われるようになった「二刀流」は少し言葉が独り歩きしているようにみえる。