竜王戦をAIで分析――羽生竜王タイトル100期の偉業なるか
10月10、11日に開幕した第31期竜王戦(読売新聞社主催)七番勝負は第6局までを終え、羽生善治竜王(48)と挑戦者の広瀬章人八段(31)ともに譲らず3勝3敗で進行中だ。決着がつく最終第7局は12月20、21日に山口県下関市「春帆楼」で行われる。
第7局に羽生竜王が勝てば前人未到のタイトル獲得通算100期の偉業を達成するが、敗れれば27年ぶりに無冠となる。
シリーズ半ば、羽生竜王の終盤に乱れ
本シリーズは第1局、第2局を羽生竜王が連勝し防衛に向け「視界良好」と思われたが、続く第3局、第4局は終盤に入ってから羽生竜王にミスが目立ち連続の逆転負け。タイスコアに追いつかれた。
あらためて直近第5局と第6局の棋譜を将棋AI(人工知能)で分析し、両者の調子を探ってみた。
第5局、第6局は先手番の優位をキープする流れ
分析に使ったソフトはApery(平岡拓也氏ら開発)。棒グラフの上が先手有利(評価値プラス)の数値、下が後手有利(評価値マイナス)を示す。
戦型は第4局までの角換わりから一転し、第5局は矢倉、第6局は横歩取りと両対局者が変化を見せた。だが、形勢グラフが示す通り、どちらも先手番が初期値で52%~53%(公式戦の平均データ)とされるわずかな期待勝率の高さをキープする流れで勝ち切った。
竜王戦のように2日制8時間と持ち時間が十分にある番勝負では、先手番の期待勝率はさらに高くなる。カードは違うけれど今年行われた王位戦七番勝負、菅井竜也王位(当時)-豊島将之棋聖のシリーズでは7局とも先手が勝っている。
羽生竜王も広瀬八段もここまで戦ってきたことで、相手の読み筋も理解し調子が安定してきたための結果ともいえるだろう。
最終局は先手番が有利
互いのコンディションが五分と五分になると勝敗を分けるのは何だろうか。筆者は最終局でどちらが先手番を握るかが大きいと見ている。
奇数局で争われる番勝負の最終局ではあらためて振り駒が行われ先後を決める。羽生竜王が先手番になれば第5局で見せたような矢倉か、シリーズ序盤で見せたような角換わり。広瀬八段が先手番になれば角換わりが本命になりそうだが、後手の羽生竜王が意表を突く大胆な作戦に出る可能性もあると予想しておく。