サムスン、Androidスマホの利益ほぼ独り占め 市場全体の利益53億ドル、うちサムスンが50億ドル
米国の市場調査会社、ストラテジー・アナリティックスの推計によると、米グーグルのモバイル基本ソフト(OS)「アンドロイド(Android)」を搭載するスマートフォンを手がけるメーカーの中で、韓国サムスン電子の利益が突出しており、同社が利益をほぼ独占している状態だという。
これは、スマートフォンのハードウエア販売によって得た利益で、関連サービスやコンテンツ販売による利益は含まない。
王者サムスン、2位のLGにも圧倒的な大差
それによると、世界のスマートフォンメーカーが今年1〜3月に端末を販売したことで得た営業利益の合計は125億ドル。その約43%に当たる53億ドルがアンドロイド搭載スマートフォンよってもたらされた。
そしてサムスンが1〜3月にアンドロイド搭載スマートフォンを販売したことで得た営業利益は約50億ドル。つまりアンドロイドスマートフォン市場全体に占める同社の利益の割合はほぼ95%となった。
サムスンに次いで利益が多かったメーカーは韓国LGエレクトロニクス。だが同社のアンドロイドスマートフォン事業の営業利益は1億ドル程度にすぎず、市場全体に占める割合はわずか数パーセント。サムスンとLG以外のメーカーの合計も1億ドル程度にとどまっている。
「サムスンはアンドロイド搭載のスマートフォン市場で紛れもない王者。製品そのものの魅力に加え、マーケティング力、効率の良いサプライチェーン(部品の調達・供給網)といった要素が利益拡大につながっている」とストラテジー・アナリティックスは指摘している。
サムスン製スマホ、1〜3月期も6000万台突破
別の調査会社である米ガートナーがまとめたスマートフォンの販売統計によると、今年1〜3月期に世界で販売されたスマートフォンの台数は2億1004万台。このうち74.4%に当たる1億5618万台がアンドロイド端末だった。
一方1〜3月期のスマートフォンメーカー別販売台数を見ると、サムスンが6474万台でトップ。10〜12月期に続き6000万台を超えた。この後、米アップルの3833万台、LGの1008万台、中国ファーウェイ(華為技術)の933万台、中国ZTE(中興通訊)の788万台と続いている。
この中でアップル以外はすべてアンドロイドのスマートフォンメーカー。これを見ても、サムスンとアンドロイド勢の2位以降との差は明白。同社がこの市場で圧倒的な強みを持っていることが分かる。
米IDCによると、昨年1年間にサムスンが出荷したスマートフォンの台数は2億1580万台で、このうちアンドロイド端末は2億900万台。サムスン製スマートフォンはほぼすべてがアンドロイドというわけだ。
増大するサムスンの影響力、グーグルへの脅威に
こうした状況では、同社のアンドロイドへの影響力がおのずと強くなり、グーグルや他社メーカーにとっての脅威になりつつあると指摘されている。
前述のストラテジー・アナリティックスの幹部は、「サムスンはその大きな市場支配力を利用してアンドロイドのエコシステム(生態系)の今後の方向性に影響を与えるかもしれない」と述べている。
例えば、グーグルに対してアンドロイドの最新版を独占的に提供するよう要求したり、ほかの端末メーカーに先駆けて提供するよう要求したりすることができる可能性があるという。
こうしたサムスンの脅威については、今年2月に米ウォールストリート・ジャーナルが伝えていた。とりわけグーグルにとっては自社が主導するアンドロイドの開発がサムスンに左右されることになりかねず、リスクが高まっているという。
グーグルのエリック・シュミット会長は、同社とサムスンの緊張関係を報じたこれらの記事について「完全な誤りだ」と否定した。だが、サムスンのスマートフォン販売台数は1年前から59%増加、市場シェアも27.6%から30.8%に上昇しており、その勢力は拡大の一途をたどっている。
(JBpress:2013年5月17日号に掲載)