駅前の放置自転車の実情を確認する
放置自転車は漸減中
鉄道駅周辺に住む人が通勤や通学で鉄道を利用する時に、駅周辺に自転車を放置してしまう「放置自転車問題」。現状ではどれほどの台数があるのか、過去と比べてどうなのか。その実情を内閣府の「交通安全対策に関する調査研究」内で定点観測調査が行われている「駅周辺における放置自転車等の実態調査の集計」の最新結果などを元に確認していく。
次に示すのは駅周辺における自転車の放置台数の推移。東京都では1975年から、全国区では1977年からデータが確認できる(2年おきに調査が行われている)。なお言葉の定義などに関しては次の通り。
・駅周辺…具体的な判断は調査対象の各市区町村によるが、おおむね(駅から)500メートル内の区域
・放置自転車…自転車駐車場以外の場所に置かれている自転車で、当該自転車の利用者が当該自転車を離れており、直ちに該当自転車を移動させられない状態にあるもの
・台数カウント…1駅における放置台数が100台以上を対象。複数路線、事業者駅が非常に近い場所にある場合、同一自転車が重複カウントをされている可能性がある。
・カウントタイミング…各年、10月から11月の青天の平日、おおよそ午前11時ごろを基準。
放置自転車数は確実に減少を続けている。直近値となる2015年分では全国で8.1万台、東京都のみでは1.9万台。ピーク時の1981年の値と比較すると、約1/12にまで減っている。特に1990年代中頃からの減り方が著しい。駐輪場の整備、監視体制の強化などが要因だろう。
次に示すのは、その放置自転車の数と、放置自転車増減を左右する、自転車等駐車場(二輪車対象のため原付の駐輪も兼ねる場所も含む)における自転車駐車可能台数の推移。駐車場の増加と共に、放置台数が減っているのが分かる(あくまでも相関関係でしかなく因果関係を立証するものでは無いが、その連動性は容易に想像できよう)。
なお2011年に駐車可能台数が大きく減退しているが、これに関する説明は資料には無い。タイミングから推測するに、震災で一時的・物理的に数が減少したことに加え、回答が不可能だった地域の分が差し引かれたものと考えられる。またその直前、2007年前後から上昇機運にブレーキがかかっているのも興味深い。需給関係に変化が生じてきたのだろう。事実上2007年をピークとして、後はほぼ横ばいに推移していると見ても良い。
放置自転車が減った要因には他にも、自転車そのものの利用台数の減少、多分に高齢者の雇用対策ともいえる「地方自治体による駅周辺の放置自転車への監視体制の強化」などが挙げられる。
とはいえ現在でも、少なくとも8万台以上、東京都内だけでも2万台近くの放置自転車が存在しているのもまた事実。中には短期間置かれているだけのものもあれば、実質的に放置では無く「廃棄」状態の自転車もあるのだろう。
放置された自転車の行く末は
やや蛇足だが、今件「駅周辺における放置自転車等の実態調査の集計結果」には放置自転車がいかなる命運をたどるのかについても知るデータが盛り込まれている。
取得データの都合上らしく直近は2014年分だが、放置された自転車がどのような対応を取られたか別の値。上記グラフと大きく数字が異なるのは、このグラフが1年間継続して処理された累計台数なのに対し、上記グラフの値は特定日時におけるカウントだからに他ならない。見方を変えると、多数の放置自転車が作業スタッフの手によって日々必要な場所に移動され、さまざまな手立てを講じられていることになる。
大よそ4割近くは持ち主に返還されているが、3割強はそのまま一時預かり所に保管、そして同程度の3割強が何らかの処分を受けている。
処分される撤去自転車だが、元々廃棄前提で放置されていた事例をはじめ、使い物にならないものも多分にあるため、スクラップ処理されてリサイクル材として売却されたり、そのまま廃棄処分されるものも少なくない。他方、そのまま、あるいは整備された上でリサイクルの自転車として国内外に譲渡再利用されるケースも多い。
毎年10万台以上ものリサイクルされた自転車が海外に譲渡されている実態に、驚きを覚える人も少なくあるまい。
■関連記事: