うっかり日にち間違えたら損? 住宅ローン控除13年間適用の期限、注意点は
マイホーム検討者が最もよく知っている減税制度といえば、「住宅ローン控除」です。
リクルートが住宅の購入・建築の検討者に調査(2020年「住宅購入・建築検討者」調査)したところ、「住宅ローン控除」について、「言葉も内容も知っている」のは66%、「言葉は聞いたことがあるが内容は知らない」のは22%、合わせて88%が「住宅ローン控除」という言葉を認知していました。
特にいまは、控除額がかなり多くなっています。でも、油断してはいけません。いつでもいまの額まで控除されるわけではないからです。
基本は10年間、消費税増税緩和措置で「+3年」
まず、「住宅ローン控除」の減税制度がどういったものか、説明しましょう。
住宅ローンを利用して住宅を購入した人に対して、年末の住宅ローン残高の1%を10年間にわたって所得税から控除し、控除しきれなかった場合は翌年の住民税からも控除するものです。ただし、住宅ローン残高には上限が設けられています。
これまで多くの人が利用してきた減税制度なので、いつでも使える制度と思いがちですが、実はそうではありません。いつからいつまでに入居した場合にはこうした制度を適用するというように、制度内容は頻繁に変わっています。現行の制度は2021年12月までの入居が対象の制度です。
ただし、消費税増税の緩和策として控除額を増額した経緯があり、消費税の税率などで控除額が異なる仕組みになっています。
まず、一般的な中古住宅は、個人が所有するものを不動産会社が仲介して別の個人が買います。こうした個人間売買では消費税は課税されません。そのため、控除額は少なくなっています。
●中古住宅(個人間売買)の住宅ローン控除
最大控除額=年末の住宅ローン残高(上限2000万円)×1%×10年間=200万円
※住民税からの上限控除額9万7500円
次に、住宅を新築する場合と、分譲の新築住宅を購入する場合、または買取再販の中古住宅(不動産会社が買い取った中古住宅をリフォームして、売主として再販するもの)を購入する場合には「建物価格」に消費税がかかります。そのため、年末の住宅ローン残高の上限は4000万円になります。加えて、消費税率が8%から10%に上がった際には、「10年間+3年間」という変則的な措置が盛り込まれました。
現行の控除期間が13年の制度は、コロナ禍による経済対策として、2022年12月までの入居に延長されています。
+3年分は、消費税の「建物価格の2%増税分」を還付する目的なので、単純に10年間が13年間になったのではなく、次のような控除額になります。
●新築住宅・買取再販中古住宅(消費税率10%)の住宅ローン控除
最大控除額=A+B
A:年末の住宅ローン残高(上限4000万円)×1%×10年間=400万円
B:Aの3年間延長 または 建物価格(上限4000万円)×2% のいずれか少ない額
※住民税からの上限控除額13万6500円
なお、長期優良住宅や低炭素住宅の場合は、上限額に1000万円が上乗せされるので、新築住宅の場合は年末の住宅ローン残高の上限が5000万円になります。
「いつまでもあると思うな」3年延長?
この3年延長ですが、実は契約時期に制限があります。
●3年延長のための契約時期
〇注文住宅の新築(建築請負契約):2020年10月1日から2021年9月30日まで
〇新築分譲住宅の購入・買取再販中古住宅の購入(売買契約):2020年12月1日から2021年11月30日まで
日常の買い物と違って、住宅の場合は今日買うと決めて、その場で契約できるというものではありません。全額キャッシュで買えば可能性はあるかもしれませんが、そもそも住宅ローンを利用していないので、キャッシュ買いなら住宅ローン控除の対象外です。
少なくとも、購入すると決めてから、購入できる額の住宅ローンを借りられるかの審査があります。住宅価格の1割程度の手付金を用意する必要もあります。物件を探して、購入する物件を絞り込んで、金融機関の仮審査などを経て、購入を決定し、売買契約にのぞむという段取りを踏むためには、どうしても1~2か月はかかります。物件選びを慎重にするためにも、余裕を持ったほうがよいでしょう。
ましてや注文住宅を新築する場合は、施工会社を決めるだけでなく、間取りや住宅設備、使用する建材や内装材などを決めたうえで見積もりを取り、金額や納期などに合意してから契約することになりますので、適用される期限までに契約するには、時間があまりないことになります。
3年延長の効果は80万円?
だからといって、あわてて納得のいかないまま契約してしまうのは避けたいものです。
では、3年間延長が使えなかった場合は、使える場合と減税額でどのくらいの違いがあるのでしょうか?
国土交通省の試算では、3年間延長分で80万円としています。この額は、次のような前提で試算したものです。
この場合の1年当たりの最大控除額は40万円ですが、住宅ローンの残高は返済することで減少していきますし、実際に減税されるのは納税した所得税額や住民税額までとなります。国土交通省では年収の増加やローン残高の減少なども考慮して試算していますが、3年延長については、「建物価格×2%」のほうが少なくなり、その額が80万円になるとしています。
筆者も年収や住宅価格、住宅ローン利用額などを変えて試算したことがありますが、一般的な事例では、Aの3年延長より建物価格の2%のほうが少なくなりました。つまり、8%から10%に増税されて負担が増えた分が戻ってくると考えるのがよいでしょう。
具体的には、注文住宅の新築の場合は、建築費用(税抜き)の2%、分譲住宅の購入の場合は、住宅価格に土地価格が含まれるので、売主に建物価格を聞いてその額の2%が、3年延長分の減税額の目安になります。4000万円のマンションで建物価格が2000万円だったとしたら、その2%は40万円になります。建物価格が4000万円の場合であれば2%が80万円になって国土交通省の試算と同額になりますが、一般的にはそこまで減税される建物価格の事例は少ないと思います。
3年延長分の減税額は少なくはありませんが、あわてて契約して後悔するようでは元も子もありません。3年延長分のためだけに、今から動くというよりは、すでにマイホームを検討中で、物件探しや情報収集などを始めている人が、「使えると思っていたのに使えなかった」ということのないように、契約期限を意識して住まい探しをするというのがよいでしょう。
控除率引き下げも視野に住まい探しを
気になるのは3年延長の期限だけではありません。住宅ローン控除の1%という控除率の見直しも検討されているからです。
住宅ローンを今借りようとすると、1%を切る金利のローンも多くなっています。となると、住宅ローン残高の1%を控除した場合に実際に支払っている利子分より多く減税されることになります。会計検査院のこうした指摘を受けて、2021年度の政府の税制改正大綱には、「住宅ローン年末残高の1%を控除する仕組みについて、1%を上限に支払利息額を考慮して控除額を設定するなど、控除額や控除率のあり方を令和4年度税制改正において見直すものとする。」と明記されています。
住宅ローン控除はその内容が頻繁に変わってきたとすでに説明しましたが、2022年度の税制改正で控除率などが見直される可能性が高いわけです。マイホームを検討している人は、制度の見直しも視野に入れて、住まい探しのタイミングを考えてください。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】