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世帯主年齢別のパソコン普及率をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ パソコンは世代を問わず必要なアイテムに違いない、はずだが……(写真:アフロ)

総世帯でのパソコンの普及率推移

かつては仕事用として、あるいは裕福な家庭にのみその姿を見ることができた、個人向けのコンピューターことパーソナルコンピューター、略してパソコン(PC)。今や多くの人が手に取れるようになり、同時にインターネットへの窓口としての使い方が主目的となる機材として認知されている。またその様式もデスクトップ型だけでなくノート型も普及し、昨今ではむしろノート型の方が利用率は高い状態。一方でその「インターネットへの手軽な窓口」との観点では、より機動性の高いスマートフォンやタブレット型端末に主役の座を奪われつつあるのが現状。そのパソコンの普及率について、世帯主の年齢階層別に詳しい動向を、内閣府が定期的に調査・公開している「消費動向調査」を基に確認していく。

今件では2013年までは明確な定義はないが、タブレット型端末は(回答者独自の判断により)いくぶん今件のパソコン扱い(ノートパソコン系)されているものと考えられる。一方2014年以降は回答項目に「タブレット型端末」が新設されており、その誤認はなくなった。

「内閣府の消費動向調査」で年齢階層別の調査が行われているのは2004年4月以降各年3月次。そこでそれらのデータを元に、「総世帯」(要は全部の世帯)における世帯主年齢階層別・パソコン普及率をグラフ化したのが次の図。

↑ 世帯主年齢階層別パソコン普及率(総世帯)(3月末時点)(~2017年)
↑ 世帯主年齢階層別パソコン普及率(総世帯)(3月末時点)(~2017年)

同調査における「二人以上世帯」のパソコン普及率は直近2017年で76.7%だが、それと比べると「総世帯」全体では10%ポイントほど低い値。逆算すれば容易に分かるのだが、これは「単身世帯」においてパソコン普及率が低いことが原因(「総世帯」=「単身世帯」+「二人以上世帯」)。

また経年別で見ると、2009年~2010年にイレギュラー的な動きがあるが、総じてどの年齢階層でも時間の経過と共に、普及率が少しずつ、しかし確実に上昇している。ところが2014年においては30~59歳でやや大きめな減少が発生し、これが原因で総世帯全体でも前年比でマイナスの値を示してしまった。インターネットのアクセスのためのツールとして割り切り、より機動性が高く価格が安いスマートフォンやタブレット型端末にシフトした結果、パソコン利用の必然性が下がった可能性が考えられる。

他方、29歳未満では2015年から2016年にかけて大きく上昇を示したあと、失速。直近年まで合わせ急降下の様相を呈している。単年だけなら2010年の時のような統計的誤差の可能性もあったが、2年連続した下げ方は、単なる誤差では無く実情として普及率が落ちていると見てよいだろう。まさに「若者のパソコン離れ」が体現化された形ではある。

保有数量(該当種類の世帯全体。保有世帯限定ではない)を見ると、数年前に上昇機運は止まり、29歳以下だけでなく30~59歳以下の中堅層でも減少に転じている動きが確認できる。

↑ 世帯主年齢階層別パソコン保有数量(総世帯)(1世帯当たり)(3月末時点)(~2017年)
↑ 世帯主年齢階層別パソコン保有数量(総世帯)(1世帯当たり)(3月末時点)(~2017年)

ややぶれはあるものの上昇を継続しているのは60歳以上のみ。29歳以下、30~59歳以下共に2014年を天井とし、それ以降は減少傾向。中堅層の普及率は下落はしていないことから「とりあえず持っている世帯」は増加しているが、「複数台維持維持している世帯」が減少している状況が考えられる。パソコンは1台あれば十分で、それを補完する形でスマートフォンやタブレット型端末を使いこなすスタイルが浸透しつつあるのだろうか。

また直近年では高齢層以外は押しなべて減少、特に若年層の下げ方が著しい。該当世帯数は101世帯のため、統計上のぶれとも考えにくく、台数の観点でも「若者のパソコン離れ」が進んでいる、加速化した感は否めない。

直近分を世帯種類別に確認

直近2017年において「総世帯」では無く、単身・二人以上世帯それぞれのパソコン普及率・「保有世帯当たりの」(調査対象世帯全体ではない)保有台数を示したのが次のグラフ。要はパソコンを保有している世帯も持っていない世帯もあるが、どれ位の割合の世帯が持っているか、そしてそのうち保有世帯に限定して「それでは何台自宅にあるのか」と聞いた結果の平均値。

↑ 世帯主年齢階層別パソコン普及率(2017年3月末)
↑ 世帯主年齢階層別パソコン普及率(2017年3月末)
↑ 世帯主年齢階層別・パソコン保有世帯当たり保有数(2017年3月末)
↑ 世帯主年齢階層別・パソコン保有世帯当たり保有数(2017年3月末)

「単身世帯」よりも「二人以上世帯」の方が、パソコンの普及率は高い。だが30歳未満に限れば、むしろ単身世帯の方が高い値を示している。いわゆるマニア的な層による値のかさ上げによるものだろう。

また60歳以上の単身世帯では普及率は著しい低さを見せる。「一人暮らしの高齢者が、改めて一から、あるいは初歩から教えてもらう人もおらず、パソコンに興味を持っても保有できない状態」なのが容易に想像できる。無論、経済的な面や身体上の理由も想定できる。

他方、保有世帯別の保有台数を見ると、概して「二人以上世帯」の方が多い。これは回答者だけでなく配偶者、そして子供も保有している事例があるからに他ならない。特に子供が育ちざかりの30~59歳世代では高い値を示している。

昨今では「インターネットにアクセスするのはスマートフォンで十分」とする事例が増えている。俗にいうタッチパネル世代と表現できる層ともいえるのだが、仕事場での利用ならともかく、プライベートではパソコンは不必要で、スマートフォン、せいぜいタブレット型端末があればインターネット利用は事足りると割り切る人達である。利用目的次第ではまさに正論で、今後このスタイルは増加してくるのは間違いない。デジタル写真におけるデジカメからスマートフォン、固定電話から携帯電話へのシフトの流れに似ており、興味深い話には違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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