警視庁が「まんだらけ」をまさかの摘発、その訳は? 風俗営業法の規制を解説
東京・中野ブロードウェイで中古の映像ソフトや漫画などを取り扱う「まんだらけ」が警視庁に摘発され、運営法人と法務担当役員が書類送検された。風俗営業法違反の容疑だ。なぜか――。
どのような事案?
問題の店舗は、8月に中野ブロードウェイの4階にオープンした「まんだらけ禁書房」だ。約12平米で、成人向けのDVDやビデオなどを数多く販売していた。しかし、風営法は、次のような営業を行う場合、「店舗型性風俗特殊営業」として公安委員会への届出を義務付けている。
「店舗を設けて、専ら、性的好奇心をそそる写真、ビデオテープその他の物品で政令で定めるものを販売し、又は貸し付ける営業」
「政令で定めるもの」とは、アダルトDVDやヌード写真集、アダルトグッズなどを意味する。要するに「アダルトショップ」だ。もし営業開始の届出を行わなかった場合、最高で懲役6ヶ月、罰金だと100万円以下に処され、両者が併科されることもある。法人も最高で100万円の罰金が科される。
もっとも、届出さえすれば営業できるというわけではない。風営法や自治体の条例が営業禁止区域を定めているし、学校や図書館、児童福祉施設、病院や診療所といった保護対象施設からの距離規制もあるからだ。
中野ブロードウェイがあるエリアの場合、病院の周囲200m以内ではアダルトショップの営業ができない決まりだ。しかし、その範囲内に病院が存在しているので、営業そのものが違法ということになる。
この場合、先ほどの届出違反よりも罪が重く、最高で懲役2年、罰金だと200万円以下に処される。両者が併科されることや、法人も最高で200万円の罰金が科される点は同様だ。「まんだらけ」はこの罪に問われているというわけだ。
「専ら」か否かが重要
もっとも、ディスカウントストアや古書店などでアダルトDVDやアダルトグッズが販売されていることもある。これらも届出違反や禁止区域営業にあたるかというと、必ずしもそうではない。
というのも、風営法が規制するアダルトショップと言えるためには、アダルトDVDなどを「専ら」販売したり、貸し付ける場合でなければならないからだ。風営法に関する警察庁の解釈運用基準や裁判例を踏まえると、「専ら」とはおおむね7~8割程度以上を意味する。
これは、売り場の床面積の割合だけでなく、アダルトDVDなどの本数や総売上に占める割合、看板など店外の状況、店内に貼付されたポスターなどの内容によって総合的に判断される。
ディスカウントストアなどの場合、アダルトコーナーは全体のごく一部に過ぎず、たとえアダルトDVDなどを販売していても、風営法が規制するアダルトショップにはあたらないというわけだ。
「まんだらけ」も同様の理屈で営業ができると判断していた。すなわち、「禁書房」は約30のテナントから成る中野店のアダルトコーナーにすぎず、アダルトDVDなどの取り扱いは中野店全体の7割を超えていないから、アダルトショップとしての届出は不要だというものだ。
しかし、情報提供を受け、捜査を始めた警視庁は、「禁書房」が他のテナントと接しておらず、完全に独立した店舗だと判断した。
その上で、9月に入って合計4回、改善指導をしたのに従わなかったことから、警察による立ち入り後の営業を摘発の対象とし、本社や店舗の捜索に踏み切り、10月21日に書類送検に至った。
押収された2534点のうち、9割超の2284点がアダルトDVDや写真集だった。「まんだらけ」側は「認識が甘かった」などと述べ、容疑を認めているという。(了)