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こちらでも判定に不服? トヨタ自動車のジェイク・ホワイト監督が苦言。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
練習場でも「サンバイザーの下から鋭い目つき」と某選手。抜かりなく準備する。(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

 国内最高峰のラグビートップリーグは9月22日からの3日間で第5節がおこなわれた。公式会見では、レフリングへの異議申し立てが相次いだ。

 22日は東京・秩父宮ラグビー場で、東芝の瀬川智広監督が同点に追いつかれたシーンのパスについて再審議を直訴。さらに翌23日には、トヨタ自動車のジェイク・ホワイト新監督がレフリーとの関係性構築を求めた。トヨタ自動車はこの日、埼玉・熊谷陸上競技場で一昨季まで3連覇中のパナソニックに16―43で敗れていた。

 ホワイト新監督は、かつて南アフリカ代表を率いて2007年のワールドカップフランス大会で優勝。2004年と2007年にIRB(現ワールドラグビー)の年間最優秀コーチ賞を受賞するなど国際舞台での影響力を誇示する。トヨタ自動車では着任早々に新人の姫野和樹をキャプテンに据えるなど、ビビッドなチーム改革に着手している。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「残念です。どれだけ簡単にトライをさせてしまったか。悔しいです。クイックラインアウトから、キックチップから…。ビッグチームは、こういうところで自信を積み重ねてゆきます。パナソニックは何年も同じメンバーでやって来て、たくさんのインターナショナルプレーヤーがいる。ハイレベルでずっとやっているがゆえに、彼らはチャンスを恐れない。スコアするチャンスを築き上げられます。ただ、トヨタ自動車は本来、30点差で負けるようなチームではない。

 ジュリア(通訳の中澤ジュリアさん)にはここの言い方は気を付けるようにと伝えましたし、批判をするわけではないのですが、ビッグチームとそうでないチームとで、レフリーとの関係性が違うように思います。この話は記事にしていただいて構いません。

 トップリーグでは毎週、接戦が続いています。(レギュレーション上)いくつかのチームとは対戦しませんが、トヨタ自動車にとっては勝てるであろうとされるチームとのカードが少なく、ヤマハ、パナソニック、サントリーのようなビッグチームとやる場合が多い。そんな時にも、是非、フェアにやっていただきたいと思います。

 今晩は、それが解決されても勝てなかったと思います。そんな弱いチームがレフリーとの関係性が築き上げられないとなると、よりタフになります。日本はワールドカップをホストするラグビーネーションです。そういうところを正さなきゃならないです」

――チームのパフォーマンスについては。

「嬉しかったのは、トヨタ自動車が外国人プロップなしでもスクラムを組めるとお見せできたことです。試合前にレフリーにお願いしたのは、相手がスクラムをつぶさないようにとお願いしました。ただ実際は、トヨタ自動車がつぶれるとコラプシング。ビッグチームがつぶれると『滑った』と。自分たちが思うプレーはできなかった。

 個人的に思うターニングポイントは、ライオネル・クロニエが本来ロングキックをするところでハイキックをし、そのボールを相手がキャッチし、抜かれ、相手のトライが生まれたところです(後半11分のワンシーンか)。ベリック・バーンズ(相手の司令塔)たちを彼らの陣地の22メートルエリアに留めておくことが我々の戦術でしたが、トヨタ自動車にいいところがなかった。バーンズがキック、こちらがキック…それを繰り返すなか、我々が(相手の術中に)はまってしまった。公平に申し上げて、バーンズはパナソニックの戦いをよくわかっていると思いました。

 サントリー、パナソニック、ヤマハはユニークなスタイルを持っている。私が仕事のひとつとしてやらなくてはならないのは、トヨタ自動車のユニークなスタイルを作ること。いまはまだ、そこに磨きをかけているところです」

 ホワイト監督はこの会見中、頭のなかでいくつかの場面を例に挙げて「オフサイドが…」「ノックオンが…」と具体的な状況についても言及していた。一方でパナソニック陣営からも、肉弾戦などにまつわる判定で首を傾げる声があった。

 もっとも責任の矛先は、各ゲームの担当者よりもレフリーを取り巻く環境などに向けられるか。待遇は他国に劣るとされ、判定に対する外部からのチェックはかねてから乏しいと指摘されてきた。

 今後は、国内のトップレフリーが判定の基準などについて公の場で明言する機会を設けるなど、トップレフリーを統括するレフリー部門の風通しを良くする作業が求められそうだ。来日して間もないホワイト監督の発言は、勝利を希求する外国出身指導者の職務の一環と取れなくもない。とはいえ「日本はワールドカップをホストするラグビーネーション。正さなきゃならないです」というメッセージは、貴重な提言である。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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