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すでに飛距離と打球速度は大谷翔平クラス!阪神・佐藤輝明に託したくなるMLB本塁打王という夢

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今や誰もが認めるMLB屈指の強打者となった大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLB屈指の長距離砲と認知され始めた大谷選手】

 シーズン開幕以来3年ぶりに見せる投打にわたる活躍で、再び二刀流として脚光を浴びている大谷翔平選手だが、特にバッティングに関しては、破竹の快進撃を続けているといっていいだろう。

 4月15日時点で、打率.340(MLB19位タイ)、本塁打4本(同9位タイ)、12打点(同7位タイ)と、主要部門すべてでランク入り。また強打者の指標とされるOPS(長打率+出塁率)も1.125で同11位にランクするなど、間違いなくMLBでトップクラスの打者であることを実証してみせてくれている。

 特に大谷選手のパワーはMLB屈指で、4月12日のブルージェイズ戦で放った二塁打の打球速度が119.0マイル(約191.5キロ)を計測し、現時点で今シーズン最速になっているのは、日本でも報じられている通りだ。

 また長打という点に焦点を当てても、ここまで長打率.745は、同7位にランクイン。これまでMLBに挑戦してきた日本人打者の中で、MLBの舞台でこれほどまでのパワーを披露できた選手は1人も存在しない。まさに日本人史上最強のスラッガーといっていいだろう。

【日本で大谷選手並みのパワーを見せつける佐藤選手】

 パワー、スピードでMLBに劣るといわれ続けてきたNPBだが、今シーズンは大谷選手並みの圧倒的なパワーを見せつけている打者がいる。阪神の期待のルーキー、佐藤輝明選手だ。

 キャンプ開始当初からそのパワーと飛距離が注目されてきたが、シーズンが開幕してからも、パワーあふれるバッティングは今も人々を驚かせ続けている。

 特に圧巻だったのが、4月9日のDeNA戦で放った今シーズン第3号本塁打だろう。右中間方向に飛んでいった打球は横浜スタジアムの観客席を越え、場外に消えていった。その推定飛距離は140メートルだと報じられている。

 また佐藤選手の打球速度も、NPBでは間違いなく規格外のようだ。同15日の広島戦で放ったバックスクリーンに飛び込む第5号本塁打は、甲子園球場に表示された打球速度は173キロだった。

 折角こうしたデータが公になっているのだから、様々なデータが公開されているMLBの打者たちと比較してみたくなるのは、野球ファンなら当然のことだろう。

【データ上は飛距離&打球速度とも大谷選手の域に】

 残念ながら日本には、MLB公式サイトのように各選手の細かいデータを公開しているサイトがないので、単純比較することはできない。だが佐藤選手が放った本塁打の中に、140メートル飛んだものもあれば、173キロの打球速度を計測したものが含まれているということだ。

 そこで今回は、今シーズン大谷選手が放った4本塁打の平均飛距離と平均打球速度を調べてみることにした。まず平均飛距離は431.2フィート(約131.4メートル)で、これはMLB7位にランクするものだ。

 次に平均打球速度だが、こちらは109.7マイル(約176.5キロ)となっている。本塁打のみの平均打球球速はランキング化されていないのだが、大谷選手のフライもしくはライナー(つまり空中に飛んだ打球)の平均球速100.7マイル(約162.1キロ)は、同5位にランクしている。

 もちろん佐藤投手のデータは平均ではなく、5本塁打からその一部を切り取ったものでしかない。だが飛距離と打球速度に関しては、すでに大谷選手の域に到達しているといえるのではないだろうか。それは言い方を変えれば、現在の佐藤選手はMLBトップクラスのパワーを備えているということにもなるのだ。

【MLBで日本人初の本塁打王を狙える逸材?】

 だからといって佐藤選手が、即座にMLBの舞台で大谷選手のような活躍ができるというわけではない。スピード、パワーで上回るMLBの投手たちに対応するのは簡単ではないし、公式球の違いも加味しなければならないだろう。

 ただ佐藤選手が大谷選手に続き、MLBで通用する本格的な長距離砲になれそうな資質を有していることは、疑いようのない事実だ。今後はMLBスカウト達から注目を集める存在になっていくことだろう。

 長年MLBの取材をしている中で、MLBで本塁打王のタイトルを獲得できる打者は、一生現れないだろうと考えていた。だが松山英樹選手がアジア人初のマスターズ制覇した姿を見て、改めて「never say never(絶対ないとは絶対にいえない)」いう思いを強くしている。

 その一方で、大谷選手がどんな打者として活躍したとしても、彼が二刀流を続けていく限り、本塁打王を争うのは至難の業であることも承知している。

 阪神ファンには恐縮だが、これまで実現しなかった壮大な夢を、佐藤選手に託そうとしている自分がいる。今は佐藤選手の規格外のバッティングを楽しみに見守っていくだけだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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