なぜ大雪が降ると電車が動けなくなるのか。新潟からの報告です。
先週末から降り続いた大雪で新潟県内の交通は大きく乱れています。
高速道路が通行止めになり、一般道では多くの車が立ち往生というニュースが全国的に流れていますが、鉄道も各所で寸断されています。
新潟県は東西に長い県で、端から端までの距離は東京から愛知県へ行くぐらいありますので、筆者が住む上越地方(西側富山県寄り)は20センチ程度の積雪量で交通機関も社会生活もほとんど影響を受けることなく、幸いにしてえちごトキめき鉄道も新潟、長岡方面からの乗り入れ列車を除いて平常運転を行っていますが、東へ行くにしたがって急激に積雪量が増えていて、わずか10km程度の距離で状況が全く異なります。
写真は2021年1月の豪雪時の直江津駅ですが、いろいろな情報を見ると、長岡方面の一部地域ではこの時のような里雪タイプで、平野部でも多くの積雪に見舞われているようです。
大雪が降ると鉄道はどうなるか
さて、大雪が降った場合、鉄道はどのような処置をするのでしょうか。
まずは除雪です。
線路の雪を取り除くために大型の除雪用車両を走行させます。
この除雪用車両は線路の上を走りますが、鉄道車両として登録されているものではなく、機械としての車両です。
この車両が走るときには同じ線路に電車を走らせることができません。
このため、通常の営業列車はストップします。
これは「線路閉鎖」と言って、機械車両が走る場合には、一般列車が走れない処置をすることになります。これがまず第一に列車が止まる理由です。
ところが、実際の大雪となると様々な状況が発生します。
今回の大雪では倒木が各所で発生し線路を寸断しています。
これは雪が湿って重いため、積もった雪の重みに樹木が耐えられなくなって倒れてくる現象です。
このような状況が発生すると、いきなり除雪用車両を走らせることができません。
除雪用車両を走らせる前に倒木を除去する必要が出てきますが、問題なのはその倒木が架線を支障していることです。
倒木で架線が切断されたり、あるいは電化柱が傾いているなどがあると、倒木を除去する前に電気設備の作業チームが必要になります。
ところが、今回の大雪では報道されている通り、道路が全く動けない状況ですから、鉄道会社の基地から現場まで作業員が確認に行くこともできません。
以前は各駅に職員がいて容易に現場を確認に行くことができましたが、最近では多くの駅が無人駅であり、線路設備の職員の詰め所も集約されているため、現地へアクセスして状況を確認することも難しいのです。
直江津-長岡間の列車の運休は19日からですでに3日目ですが、本日21日になって道路が動き始めましたので、鉄道会社の作業チームもやっと状況把握ができるようになりました。
そして、電気設備チーム、土木チームが段取りを決めて復旧に当たり、それが終了して初めて除雪用車両が走ることになりますが、このような支障箇所が1~2か所ではありませんので、運転再開までにはどうしてもあと2日は要するのではないかと筆者は考えます。
途中駅で雪に埋まってしまった電車を掘り起こすにも、道路が動いていないのでなかなか社員を派遣することができません。
道路が開通した今日からやっと本格的な除雪計画が立てられ、作業がスタートするというのが、鉄道会社の除雪です。
今回の大雪は今シーズン始まっていきなり来た大雪で、雪そのものにも水分が多く、厄介なしろものです。
この数十年、温暖化の影響で昭和の時代に比べると雪が降る量は減ってきています。鉄道会社は除雪用車両の更新の時期を迎えていますが、以前のような大型ラッセル車から、小型軽量の除雪用車両に置き換えているという現状も、かつてのように雪と闘うことができなくなっている理由の一つと考えられます。
今週末にはまた大雪の予報が出ています。
鉄道も道路も寸断された今回の寒波よりも大きな寒波が来ると言われています。
クリスマスの休暇の時期になりますが、気象情報、交通情報にご注意くださいますようお願い申し上げます。
運行情報につきましては各社のホームページをご確認ください。
▼信越エリアの運行情報・運休情報(JR東日本)
https://traininfo.jreast.co.jp/train_info/shinetsu.aspx
※使用写真は特にお断りがあるものを除き筆者撮影のものです。