アメリカの国防総省やCIAが戦場以外で、ドローンによるテロリストなどへの標的への攻撃を行う際にはホワイトハウスの承認が必要になったと2021年3月にニューヨーク・タイムズが報じていた。トランプ政権ではアメリカ軍やCIAは大統領の判断なしに、標的への攻撃が容認されていたが、バイデン政権になりドローンによる攻撃のルール変更が行われた。国防総省スポークスマンのジョン・キリバイ氏は「現時点では、大統領によるドローン攻撃の許可は暫定的なものです。そして大統領によるドローンでの攻撃の承認は、ドローンでの攻撃を停止するということではありません。これからも(テロリストなど)暴力的な組織の脅威には国際社会と協力して戦っていくことは確かです」と述べている。つまり大統領が許可すれば、今まで通りに攻撃を行っていくということだ。
ドローンによる偵察・監視や攻撃はブッシュ大統領以降、多く活用されており、特にオバマ政権の時にはイエメン、アフガニスタン、パキスタン、ソマリアでドローンによる攻撃は激化していた。この時も地元の一般市民への誤爆が多かった。トランプ政権時にもソマリアへのドローンによる攻撃が行われていた。
AI技術の発展によって人間の判断を介さないでAIを搭載したドローンが、AIが標的を認識、判断して攻撃を行うキラーロボットとも言われている自律型殺傷兵器の開発が進められようとしている。そのような自律型殺傷兵器は人間の判断を介さないで標的を殺傷することから非倫理的であると国際NGO団体や世界30か国が自律型殺傷兵器の開発と使用に反対している。
ドローンによる誤爆の犠牲者で有名なのはパキスタンの少女ナビラで、宮田律氏の『ナビラとマララ 「対テロ戦争」に巻き込まれた二人の少女』(講談社、2017年)には以下のように攻撃された時の様子とその後のアメリカ政府の態度と対応が記されている(太字は筆者)。
このように人間の判断で攻撃を行っていたとしてもドローンでの攻撃の誤爆による一般市民の犠牲者は多く出ていた。ひょっとするとAIが認識して攻撃の判断を下す方が誤爆による一般市民の犠牲者は低減するかもしれない。
今回、バイデン政権ではドローンによる攻撃には大統領の承認が必要とのこと。人間の軍人による判断で攻撃を行っても誤爆で一般市民が犠牲になることはあった。また人間の判断が常に倫理的で道徳的とは限らない。20世紀に入ってからもナチスドイツによるユダヤ人殺害(ホロコースト)、ポルポトによるカンボジアでの虐殺、ルワンダ虐殺、ボスニアでの民族浄化など人間が人間に対して一番残虐なことをするのは歴史が証明している。