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北朝鮮 「コロナ非常事態」でもICBMの発射と核実験を準備!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
北朝鮮の核実験場(北朝鮮専門サイト「38ノース」から筆者キャプチャー)

 バイデン大統領の訪韓が明後日(20日)に迫っている。

 CNNは昨晩、米当局者の話として「北朝鮮がバイデン大統領の日韓歴訪中に大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられるミサイルの試験発射を準備している」と伝えていた。

 CNNによると、米情報に精通したこの当局者はその根拠として「過去ICBM発射時に見られた兆候が捕捉された」ことを挙げ、「48時間から96時間以内に試射の可能性がある」と語っていた。

 また、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)も昨日、報告書で咸鏡北道・吉州郡の豊渓里にある核実験場を撮影した衛星写真を分析した結果、「実験場の3番坑道(南側)周辺で活動が継続している」として、北朝鮮が「コロナ拡散」とは関係なく「核実験の準備を着々と進めている」として、「7回目の核実験の準備完了間近である」と、指摘していた。

 北朝鮮が急拡大したコロナ感染拡大阻止に総力を挙げていることから一部には核実験の中止、もしくは延期の可能性が指摘されているが、韓国の李鐘燮(イ・ジョンソプ)国防長官(国防相)は昨日、国会国防委員会全体会議の場で北朝鮮が「建国以来の大動乱」に直面したことで核実験を見送る可能性について「何とも予測できない」と述べていた。

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権内には北朝鮮が早ければ、バイデン大統領の訪韓に合わせて強行するとの見方もあるが、李国防相は時期については明言を避けた。金正恩(キム・ジョンウン)総書記の決断にかかっているとみているようだ。 

 全体会議では核実験をやった場合、ワクチン提供など政府が北朝鮮に人道支援を行うことに関する李国防相の見解を与党「国民の力」からは河泰慶(ハ・テギョン)議員と申源湜(シン・ウォンシク)議員が、野党「共に民主党」からは洪永杓(ホン・ヨンピョ)と奇東旻(キ・ドンミン)の両議員が質していた。全体会議を取材したMBC記者のレポートによると、国防相と各議員との間で以下のようなやりとりがあった。

河議員:北朝鮮への「コロナ人道支援」を北朝鮮が受け入れた場合、国防部は反対するのか?

李国防相:反対する理由はない。政府が決定すれば、支援手段とか方法など国防部がやれる領域がある。

河議員:北朝鮮が核実験をやれば、北朝鮮に対する世論も国民の認識も悪化するだろう。それでも尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は昨日、「人道的次元については南北の政治、軍事を考慮せずいつでも開かれている」と言っていたが、国防相は北朝鮮が核実験をしても人道支援には反対しないのか?

李国防相:ジュネーブ協定では「敵軍」であっても治療はできることになっているので可能と考えている。そうした次元でこの問題を捉えるべきだ。

河議員:「敵軍」も人道主義の面から治療しなければならないから核実験をしても人道主義的支援大原則に変化はないとの考えなのか?

李国防相:そのように受け止めてもらいたい。

 このやりとりを聞いていた野党議員らは国防相が12日に北朝鮮の弾道ミサイル発射を「国際社会の平和と安全を害する深刻な挑発」と発言したこととの関連性から李国防相を以下のように追及していた。

洪議員:北朝鮮が7回目の核実験をやっても人道支援するというのは政府の政策か?

李国防相:正確な政策決定は国防・外交・統一・安保分野、政府次元で決定すべき事柄だが、国防次元では人道支援しても良いと思っている。

洪議員:発言を変えないようにしてもらいたい。これは大変な政策転換だ。新政権の安保観、対北政策を象徴する発言だ。

奇議員:北朝鮮が核実験をしても人道支援方針に変化はないというのは李国防相個人の意見なのか、政府の意見なのか?

李国防相:政府はこうした立場をまだ決定したわけではない。

奇議員:李長官は基本常識の領域という考えから発言をされたと思うが、その常識はすべての国民の常識、執権者らの常識であって欲しい。

 文在寅(ムン・ジェイン)前政権の対北融和政策を「北に引きずられている」「北を甘やかしている」「ばらまきだ」と批判されていたことを逆手にとった野党議員らの質問に与党の申源湜議員は李国防相に以下のような質問をして、前政権との差別化を図っていた。

申議員:人道支援についてはこれまで分配の透明性を巡って北朝鮮と我々国際社会との間に異見があった。従って、実際に情勢と関係なく人道支援するにしても、それは金正恩のための支援なのか、それとも北朝鮮住民のための支援なのか?

李国防相:北朝鮮の住民のための支援だ。

申議員:北朝鮮体制の特性上、必ず北朝鮮住民の手元に届くとの確信がなければならない。金正恩を腹一杯にさせる人道支援は人道支援ではない。

 北朝鮮への医療支援を巡る国防委員会での白熱した議論も北朝鮮が韓国ではなく、中国に支援を要請したことから空論となってしまったようだ。

(参考資料:刻々と迫る北朝鮮の7回目の核実験  過去6回(2006年~2017年)の核実験を検証する!)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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