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医師や看護師による仮想診療所サービス、アマゾンが開始

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
写真出典:米Amazon.com

 米アマゾン・ドット・コムは先ごろ、米国で社員向けの医療サービスを開始した。同社には、社員向けの医療サービス部門「Amazon Care」があるが、同名の専用アプリを通じて、各種サービスの提供を始めた。

ビデオ通話とチャットによる仮想診療所

 社員とその家族は、ビデオ通話とテキストチャットによる医療相談が可能で、必要に応じて訪問診療・看護も受けられる。訪問場所は自宅のほか、社屋内の診療室も選べる。処方薬の配達サービスも利用できるという。

 ビデオ通話とチャットによる相談の内容は、医師や看護師によるアドバイスや診断、治療に関する説明など。米CNBCは、これを「仮想診療所」と報じている

 受付時間は平日午前8時から午後9時まで、土日は午前8時から午後6時まで。現在は、ワシントン州シアトル本社の社員とその家族を対象にしている。

 アマゾンが社員向け医療サービス部門のAmazon Careを立ち上げたのは昨年9月。同10月には、ヘルスケアサービスを手がける米国の新興企業「ヘルス・ナビゲーター」を買収したと伝えられた。ヘルス・ナビゲーターは診断や重症度判定を遠隔で行うツールなどを開発、提供していた企業。遠隔治療を手がける医療サービス企業などを顧客に持っていた。

 こうした経緯もあり、アマゾンは今回の社員向け医療サービスを、他社や一般消費者にも広げる可能性があるとCNBCは伝えている。

アマゾンのヘルスケア事業戦略

 そして、このAmazon Careは、同社のより大規模なヘルスケア事業戦略の一環にすぎないという。たとえば、同社は2018年、米銀JPモルガン・チェース、米投資・保険会社バークシャー・ハサウェイと、それぞれの従業員向けヘルスケアサービスを手がける会社「ヘイブン」を設立。

 外科医で著作家、公衆衛生研究者のアトゥール・ガワンデ氏を最高経営責任者(CEO)に任命し、低料金で質の高いサービスの提供を目指している。

 アマゾンは、患者の電子カルテなどの情報を分析し、治療の向上に役立つデータを抽出するソフトウエアを開発しているとも伝えられている。同社には「1492」と呼ぶ医療関連の技術開発チームがあり、ここで電子カルテや遠隔治療などを研究。AI(人工知能)アシスタント用医療アプリの開発も行っているという。

 昨年7月は、英国の国営医療制度「国民保健サービス(NHS)」がアマゾンと連携し、AIアシスタントを介した医療情報サービスを始めた

世界各国で医薬品事業の商標登録を申請

 アマゾンは2018年に処方薬のネット販売企業、米ピルパックを約8億ドルで買収したが、昨年はピルパックのサービスに「Amazon Pharmacy」のブランドを導入し、併せて、ピルパックの共同創業者CEOのTJパーカー氏をアマゾンのバイスプレジデントに昇格させた。

 この処方薬ネット販売事業は、大規模な展開が期待されているという。CNBCによると、アマゾンは今年1月、カナダや英国、オーストラリアの知的財産庁に医薬品事業の商標登録を申請している。

  • (このコラムは「JBpress」2020年2月20日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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