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マラドーナ追悼のナポリに4失点大敗、ローマの崩落は「言い訳もやむなし」?

中村大晃カルチョ・ライター
11月29日、セリエAナポリ戦でのジェコ(写真:ロイター/アフロ)

ナポリには、どうしても勝ちたい理由があった。もちろん、ディエゴ・マラドーナを追悼するためだ。

11月29日のセリエA第9節で、ナポリはローマに4-0と快勝した。地元出身の主将ロレンツォ・インシーニェが、鮮やかなFKで先制。マラドーナのユニフォームを世界に示し、街の英雄にゴールをささげたのは感動的だった。

これ以上ないオマージュとなったナポリの快勝は、裏返せばローマにとって手痛い黒星だ。16試合連続無敗だったチームが、セリエAのピッチで最後に負けたのも、やはりサン・パオロだった(エラス・ヴェローナとの今季開幕戦は、選手登録のミスで不戦敗となったが、ピッチではドロー)。

◆5つの完敗要因

試合後、パウロ・フォンセカ監督は「言い訳はしたくない」と責めを負った。0-4というスコアを考えれば、やむを得ない。

ただ、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙は翌日の電子版で、「言い訳とは言いたくなくても、シーズンワーストゲームになった理由の分析が可能なのは否めない」と報じた。

同紙は「フォンセカには5つの言い訳がある」と指摘している。以下の5点だ。

  1. 疲労
  2. 離脱者
  3. エース不調
  4. 他選手の出来
  5. 完璧だったナポリ

ローマは11月26日にヨーロッパリーグ(EL)でCFRクルージュと対戦した。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙は、ルーマニア遠征をはさみ、火曜からローマに練習できる日がなかったと指摘。クルージュ戦でターンオーバーしてはいるが、遠征からの戻りが金曜早朝だったとも伝えている。

ナポリもELに出場しているが、同じ26日のリエカ戦はホームゲームだった。移動がなかったナポリに対し、ローマは遠征続きと、条件が同等ではなかったのは事実だ。

その影響かは不明だが、ナポリ戦でローマはジャンルカ・マンチーニとジョルダン・ヴェレトゥという主力2選手が負傷交代した。ほかにもコンディションが万全でない選手たちがいる。すでに負傷や新型コロナウイルス感染で離脱者がいた中での痛手だった。

コロナ禍の影響は、主将エディン・ジェコにも当てはまる。復帰を果たしたエースだが、状態不良は明白。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、ボールタッチ16回がスタメン最少と強調している。

エースが不在だった公式戦3試合も、ローマはすべて勝っている。特に活躍したのが、ヘンリク・ムヒタリアンだ。だが、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、そのムヒタリアンやペドロ、アントニオ・ミランテらも、ナポリ戦では精彩を欠いたと伝えている。

そして最後が、ナポリの出来だ。リーグ前節でミランに敗れ、ジェンナーロ・ガットゥーゾ監督が叱責していたナポリは、マラドーナにささげる「完璧な夜」を演出した。

◆問題は隠れていただけ?

ローマを拠点とする『コッリエレ・デッロ・スポルト』紙も、12月1日付紙面でのナポリ戦について分析した。フィジカルコンディション不足や離脱者がいる点、ルーマニア遠征やコロナ禍の影響などは、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』の分析と同様だ。

異なるのは、『コッリエレ・デッロ・スポルト』がそれ以外の点も指摘していることだ。同紙は「この2カ月の好結果が隠してきたチームの限界を再発見」と、課題が浮き彫りにされたと主張した。

『コッリエレ・デッロ・スポルト』は、夏の補強や、一部選手に迷いが見られる戦術などが問題と強調。ムヒタリアンやペドロも、評論家の評価が「少し楽観的過ぎだった」と指摘している。

◆勝利を知る男の信頼

いずれにしても、ローマがセリエAで2位に勝ち点1差であることは事実だ。ELグループステージでは、4節を終えて首位に立ち、すでに決勝トーナメント進出を決めている。

当初から優勝も可能と主張してきたペドロは、ナポリ戦を終え、SNSで「良い試合じゃなかったけど、僕はこのチームをすごく信頼している」と強調した。

「ページをめくって、次の試合のことを考えよう。全員一緒に!」

いわゆる勝者のメンタリティーを知る男の言葉は、チームを勇気づけるに違いない。ローマは、仕切り直して前を向くことができるか。リーグ屈指の攻撃力を誇り、2位タイと好調のサッスオーロとの次節は、ひとつの試金石となるかもしれない。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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